2012/02/26

「オープニング・フェアウェル」キャメル

原題:「Opening Farewell」(2010)
■Camel

アンディー・ラティマーの健康状態を理由に2003年に行なわれた「さよならツアー」より、カリフォルニア州サンタクルーズにあるキャタリストというナイトクラブで行なわれたツアー初日(6/26)のライヴ映像がこの「Opening Farewell」である。「Farewell Tour」の初日だから「Opening Farewell」ということか。

キャメル・プロダクションによる作品で、邦題は「ジ・オープニング・フェアウェル~ライヴ・アット・ザ・キャタリスト」。「A Nod and A Wink」(2002)発表後のツアーだが、過去の名曲をずらりと並べたベスト的な選曲になっているところも特徴である。

Andy Latimer:ギター、フルート、リコーダー、ボーカル
Colin Bass:ベース、ボーカル
Tom Brislin:キーボード、ボーカル
Denis Clement:ドラムス、パーカッション、リコーダー

アンコールがあったかどうかはわからないが、恐らくコンサート完全収録の1時間50分のステージ。大掛かりな仕掛けもなく、淡々と名曲を演奏する様子をとらえた映像だが、こじんまりした会場で観客と一体になった素晴らしいステージが味わえる。

“farewell(さようなら)”の理由を皆知っているのだろう、観客は最初から立ち上がっている人が多い。落ち着いた熟年の男女が集まった感じで、年齢層的にも恐らく10代からのCamel ファンという人たちだろう。会場の雰囲気がとても温かい。この雰囲気を味わうだけで涙が出そうである。

アンディのギターはもう文句なし。ミスもない完璧な出来。表現力の素晴らしさも変ることなし。体調が悪いことがウソのよう…。とは言っても演奏の合間にちょっと息が上がっている感じがちょっと痛々しい…。
 

コリン・バースはまさにアンディの右腕として大活躍だ。メインボーカルをとる曲も何曲かある。アンディとのハモりも息が合って美しい。

キーボードのトムはイエスのサポート・メンバーでも知られる人のようだけど、中々いい味を出している。往年の名曲に於けるアンディのギターとの絡みも素晴らしく、特にファズの かかったハモンド・オルガンを多用していたピーター・バーデンスの音を、しっかり踏襲していたのが良かった。デニスのドラムスもきちんとボトムを支える安定したもの。「Spirit of the Water」ではアンディとともにリコーダーも吹く。

当然アンディと彼のギターを中心としたバンドアンサンブルになるわけだけれど、トムやデニスが意外と存在感があって、しっかりバンドとしての音になっていたのがうれしい。さらにトムはボーカルも取れるので、最大3声のハーモニーが聴けるのも魅力。最後にして最高のメンバーになったんじゃないだろうか。

ドラマチックな最終曲「For Today」が終ると、観客の中に涙している人がいて胸を打たれる。曲の素晴らしさに浸り、キャメルやアンディへの思いを胸に、自分の人生をも振り返ってしまう、何とも感動的なコンサートである。

アンディは多血症という病いに冒され、2007年に骨髄移植、その後は骨髄線維症と関節痛(特に手)と戦っているという。

ゆっくりでいいから確実に回復して欲しい。そしてまたステージに立つアンディの姿が見たい。