原題:鬼子母神(2011)
■陰陽座(おんみょうざ)
妖怪ヘヴィーメタルバンドとして登場した陰陽座も、1999年のデビューアルバム「鬼哭転生」から数えて10作目となり、満を持して制作された初のトータル・コンセプト・アルバム。ベース&ボーカルの瞬火(またたび)が著した脚本「絶界の鬼子母神」
をもとに作り上げた作品だ。
黒猫(くろねこ):ボーカル
瞬火(またたび):ベース・ボーカル
招鬼(まねき):ギター・コーラス
狩姦(かるかん):ギター・コーラス
《ゲスト》
土橋誠:ドラムス
阿部雅宏:ピアノ&キーボード
陰陽座は黒猫がメインボーカル的位置づけであるが、瞬火もかなりボーカルへの貢献度が高く、事実上のツイン・ボーカルだと言える。初期の作品は和旋律なども取り入れたストレートなメタル、と言うよりはプログレ・ハード的なサウンドであった。古語・漢語を多用した日本語にこだわった歌詞は、メタル界のみならずロック界全体を見回しても大きな個性であったし、男女ツインボーカルという特徴も他に類を見ないものであった。
さらに歌謡曲や演歌にも通じるような、ちょっと大げさな歌い回しやビブラートのつけ方も、クセの好き嫌いはあるだろうが彼らの独特な世界には欠かせないものとなった。
オリジナルの物語は結成時にすでに出来上がっていたという。バンドの成長を見極めながら、10作品目という節目に取り上げる題材として温めてきたものだという。確かにバンドとしての安定感や表現力は格段に上がったように思う。そして12パート全1曲という大作「組曲:鬼子母神」が作られたのだ。
ストーリーは土俗的な古き日本のとある村を舞台とする。そこでは村の凶事を避けるために、よそ者を鬼として始末するという因習が残っていた…。という設定の中で、人の業や性を浮き彫りにして行くあたりは、今村昌平的な世界と言ってもいいかもしれない。
でもそうしたストーリーはアルバムのブックレットや歌詞からは掴みにくい。掴みにくいんだけれど、掴み切れない中でイメージを膨らませるのもまた面白いと思う。それだけ各曲は全体の流れからも物語からも独立して、それぞれが魅力的な楽曲なのだ。
黒猫(くろねこ):ボーカル
瞬火(またたび):ベース・ボーカル
招鬼(まねき):ギター・コーラス
狩姦(かるかん):ギター・コーラス
《ゲスト》
土橋誠:ドラムス
阿部雅宏:ピアノ&キーボード
陰陽座は黒猫がメインボーカル的位置づけであるが、瞬火もかなりボーカルへの貢献度が高く、事実上のツイン・ボーカルだと言える。初期の作品は和旋律なども取り入れたストレートなメタル、と言うよりはプログレ・ハード的なサウンドであった。古語・漢語を多用した日本語にこだわった歌詞は、メタル界のみならずロック界全体を見回しても大きな個性であったし、男女ツインボーカルという特徴も他に類を見ないものであった。
さらに歌謡曲や演歌にも通じるような、ちょっと大げさな歌い回しやビブラートのつけ方も、クセの好き嫌いはあるだろうが彼らの独特な世界には欠かせないものとなった。
オリジナルの物語は結成時にすでに出来上がっていたという。バンドの成長を見極めながら、10作品目という節目に取り上げる題材として温めてきたものだという。確かにバンドとしての安定感や表現力は格段に上がったように思う。そして12パート全1曲という大作「組曲:鬼子母神」が作られたのだ。
ストーリーは土俗的な古き日本のとある村を舞台とする。そこでは村の凶事を避けるために、よそ者を鬼として始末するという因習が残っていた…。という設定の中で、人の業や性を浮き彫りにして行くあたりは、今村昌平的な世界と言ってもいいかもしれない。
でもそうしたストーリーはアルバムのブックレットや歌詞からは掴みにくい。掴みにくいんだけれど、掴み切れない中でイメージを膨らませるのもまた面白いと思う。それだけ各曲は全体の流れからも物語からも独立して、それぞれが魅力的な楽曲なのだ。
得意の疾走チューンもあれば、ファンク色の強い曲もある。切々と歌われるバラードも良い。様々な曲調を組み込みながら、全体としておどろおどろしくも悲しい物語が、アルバムから伝わってくるのだ。
そしてラストの曲で“鬼子母神”となった黒猫が一言つぶやく。その一言にアルバムのすべてが収束するかのような感動の瞬間である。この一言のためにバンドは10年以上待ったんじゃないだろうか。そんな思いすら浮かんできた。
プログレッシヴ・ロックであるかと問われれば答えは悩ましい。けれどもこれだけのスケールの音楽を作り上げ、かつ物真似ではない日本的なサウンドを聴かせてくれる冒険的な精神と卓越した技量は、ジャンルに拘ることなく“プログレッシヴ”であろうと思う。
日本を代表するバンドの渾身の1枚。