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2010/08/08

「ウインドウズ」タイ・フォン

原題:Windows

タイ・フォン(Thai Phong)
 
「ウィンドウズ(Windows)」はフランスのタイ・フォン(Tai Phong)が1976年に発表した2ndアルバム。約3週間で作り上げたと言われる傑作1stアルバム「恐るべき静寂(TAI PHONG)」の成功、特に「Sister Jane」のシングルヒットを受け、時間をかけて丁寧に作り込んだ見事な作品である。

   KHANH:ボーカル、ギター
   TAI:ボーカル、ベース、アコースティック・ギター、ムーグ
   J.J.GOLDMAN:ボーカル、ギター
   Jean-Alain GARDET:キーボード
   Stephan CAUSSARIEU:ドラムス、パーカッション

まず気づかされるのがタイトになったリズム。特にドラムスが全体に引き締まった演奏を聴かせる。そして重ねられた音が厚くなったこと。このあたりは1stに比べ、じっくり腰を据えてアルバム制作に取り組んだ成果ではないかと思う。

しかし本質的な魅力は微塵も変わらない。エレクトリック楽器とアコースティック楽器のバランスの良さ、甘く切ないメロディー、ハイトーンなボーカルを軸にした美しいハーモニー、泣きまくるギター。それらが一体となって夢見るような世界を描き出す。


メロディーが魅力的なのだが、安易にシングルヒットを狙ったような軽い曲は一曲も無い。切々と歌うボーカル、ドラマティックに胸に迫る音の波、そしてまたインス トゥルメンタル・パートの表現力の高さと、ボーカルとシームレスに繋がる曲の展開の妙。

ちょっと聴くと素朴な印象すら受けるけれど、聴き込むほどに見事にバラン スが取れた各楽器のコンビネーション。それも無理なく自然な流れ。

リズムがタイトになっても、音の厚みが増しても、決してテクニックに走ることもなく、「Sister Jane」のシングル・ヒットを受けても、決してポップスに日和ることも無い。そこにこのバンドの実力を見る思いがする。世界観とそこに向う思いが強固なのだ。

ドリーミーだがひ弱な音ではない。スタープレーヤーがいるタイプのバンドではない。華麗なソロで聴く者を圧倒させようという作風でもない。丁寧に丁寧に必要な音を重ねて、メンバー全員が作り上げた珠玉の作品。

CamelやPink FloydやGenesisなどが引き合いに出されやすいかもしれないけれど、実はそのどのバンドとも印象は異なる。それはメランコリック度が格段に高いことによるからと言えるかもしれない。

最終曲ではアルペジオをバックにアコースティック・ギターやドラムスがフリーフォームな演奏を繰り広げる。曲が終わると鳥の泣き声が響き渡る。おそらくメン バーが鳥の声を奏でる笛を全員で吹いているのだろう。一人が咳き込んで笑い声が響く。温かく幸せに満ちた雰囲気。まさに桃源郷に達した瞬間である。

1993年のCD付属のライナーノートによれば、Khanhは「Rock & Folk」誌のインタビューで次のように答えたという。

「我々はフランス人のグループではない。フランス出身のグループであり、イギリスのYes、イタリアのP.F.M.、ギリシャにおけるAphrodite's Child等と同じジャンルの音楽を演奏している。」

英語で歌いフランス的サウンドにこだわること無く、インターナショナルでプログレッシヴな音楽を求めていたことがわかるコメントだ。

そして出来上がったのは、一聴してのシンプルな印象とは異なり、他のどのバンドも到達できなかった緻密で甘美な究極の音。1stに劣らぬ傑作である。

タイ・フォンはその後3rdアルバムを出して解散。しかし2000年に突如アルバム「Sun」を発表。そして2010年現在も、ギター&ボーカルのKhanh Maiを中心に活動を行なっている模様である。

 

2009/07/10

「恐るべき静寂」

TAI PHONG(1975年)

TAI PHONG(タイ・フォン)


TAI PHONG(タイ・フォン)はフランスのグループであるが、ベトナム人の血が交ざった兄弟2人が中心となって結成された。
 
一聴するとそれは、ボーカルの声質に顕著に現れているように聴こえる。東洋人的なやや線が細く中性的なハイトーンボーカルなのである。ところが実際にリード・ボーカルを取っているのは、後にソロとして国民的歌手となるJ.J.Goldman。したがって東洋的なイメージは、バンドメンバーというよりはバンド全体のかもし出すカラーなのだ。
 
そして歌詞は英語。フランスのバンドだからと、わかり易いフランスらしさを求めるとTAI PHONGには当てはまらない。むしろ無国籍なメロディック・ロックである。

しかしその夢見るような 甘い音やメロディー、ささやきかけるようなボーカルや狂おしいほどのギターの音などを聞けば、彼らがフランスを代表するバンドの一つであることが、すぐにわかるだろう。「TAI PHONG」(邦題は「恐るべき静寂」)は1975年に発表された、彼らのファースト・アルバム。武士のロボットのようなジャケットが目を引くが、“勘違い日本”的な部分は皆無なのでご安心を。

 KHANH:ボーカル、ギター
 TAI:ボーカル、ベース、アコースティック・ギター、ムーグ
 J.J.GOLDMAN:ボーカル、ギター
 Jean-Alain GARDET:キーボード
 Stephan CAUSSARIEU:ドラムス、パーカッション

メンバーの担当楽器を見てわかるように、TAI PHONGはツイン・ギターである。その魅力がまず最初の曲「GOIN' AWAY」で炸裂する。

声質の好みの問題はあるかもしれないが、歌は上手い。ハーモニーも抜群だ。
そして流れるような展開、美しくからむ楽器たち、演奏にもそつがない。しかしなんと言っても、泣きのギターソロが連続する中間部の素晴らしさ。そのバトンタッチの瞬間の何とも言えない呼吸。

ボー カルの表現力が発揮されるのは、シングルカットされたボーカル曲「SISTER JANE」においてだ。メロディーも極上。次第に盛り上がっていき、最後ハイトーンでシャウトするボーカルが胸を打つ。「Fields Of Gold」の導入部分のささやくようなボーカルも絶品だ。

テクニカルな演奏はほとんどなく、各楽器の音を活かしたアンサンブルが主体。曲の緩急のアレンジが絶妙で、甘いトーンの2本のギターを中心にピアノ、オルガンなどのキーボードがドラマティックに色づけをしていく。そして中性的ハイトーンのボーカルとボーカルハーモニーが、独特の繊細さを曲に与え、それがまた大きな個性となっている。

そのままいつまでも浸っていたい音楽。演奏のタイトさが増したセカンドの「WINDOWS」とともに、叙情的な魅力あふれる傑作。