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2009/06/27

「御伽の国へ」

Rockpommel's Land(1977年)

Grobschnitt(グロープシュニット)


Rockpommel's Land」(邦題は「御伽の国へ」)は、ドイツのバンドGrobschnitt(グロープシュニット)の第4作目、1977年の作品である。当時のLP時の邦題は「おとぎの国へ/グロープシュニットの幻想飛行」という長いタイトルであった。

「Rockpommel's Land」はオリジナル・ファンタジーによるトータル・アルバムだ。家出をした少年Eanie(アーニー)が、童話の世界Rockpommel's Landへの旅の途中で、巨大な鳥Maraboo(マラブー)に出会う。そしてSeverity Townで、子供好きが理由で幽閉されているMr. Gleeとその他の全ての魂を解放し、最後にRockpommel's Landにたどり着くという物語。

アルバムのカバーアートは、Yesのアルバムなどで有名なRoger Dean(ロジャー・ディーン)を思わせるもので、ヴィジュアル・アーティストHeinz Dofflein(ヘインツ・ドフレイン)によるもの。

Eroc:ドラムス、パーカッション、歌詞
Lupo:リード・ギター、バックボーカル
Mist:キーボード、カバーアートの基本部分と物語のテーマ&コンセプト
Popo:ベース
Wildshgwein:リード・ボーカル、ギター

このGrobschnittは「Grobschnitt(冥府宮からの脱出)」で1972年にアルバム・デビューしている。このアルバムは、シンフォニックな曲調と独特なパーカッションが印象的な大作だったが、何とも言えない不気味さ、暗さがアルバムカバーや曲自体から漂っていて、それがまた大きな魅力となっていた。

しかしこのアルバムでは、別バンドかと思うほどに音は洗練され、美しくファンタジックな音楽が流れてくる。メンバーはニックネームで表記されているが、ボーカルはファーストアルバムと同じで、その ちょっと演出過剰気味なクセのある歌い方が、この作品をただ美しいだけではない不思議な世界に誘ってくれる。やはりまぎれもなくGrobschnittを感じさせる作品となっている。

サウンド的にはゆったりしたリズムに乗ってボーカルが物語を歌っていくというオーソドックスなものだが、まず音が良いこと、そして音を絞り込んだのだろう、とても整理され計算された心地よいサウンドであることが特徴だ。アコースティックパートが効果的に配されている。

結果的に、変幻自在なボーカルが全体を引っ張り、各プレーヤーは自己主張するというよりは、安定した演奏と堅実なアンサンブルに徹しており、細かなところまで神経が行き届いているアレンジ、そして所々で挿入される語りが、トータルな魅力的世界を作っている。

し かしよく聴くと、ドラムがリズムをキープするだけでなく、とても細かな表情を曲に加えていることがわかる。ギターも印象的なメロディーソロからアコース ティック・ギターによる繊細な伴奏まで、丁寧なプレイを聴かせてくれる。そしてファンタジックなアルバムとなると期待が高まるキーボードは、必要以上に音 を重ねて厚みを作ることもなく、美しいピアノを要所にはさみながら、柔らかく優しく全体のムードをサポートしている。

アルバム最後はギターとピアノを中心としたドラマチッックな盛り上がりを見せる。心にしみるメロディーが、解放された魂やEanieたちの喜びを表現し、ファンタジーの大団円であると同時に、Eanieたちの旅の終わり、そして夢の終わりを感じさせる。

ボーカルのちょっとねちっこい歌い方が、好き嫌いを分けそうなことと、ファーストのGrobschnittの“怪しさ”を愛する人には期待に応えられる部分がなくなっていることから、聴く人によってアルバムの評価は分かれるかもしれない。

しかしわたしはファーストの“怪しさ”がなくなったことはとても残念だけれど、それとは違ったGrobschnittのオリジナリティが開花した作品として、その完成度を評価したい。

全4曲、最後の「Rockpommel's Land」は20分の大作。これだけの音楽を美しいメロディーを重ねながら最後までスムースに聴かせる曲構成、演奏、ボーカルはやはり特筆モノ。十分傑作の名に値する作品である。

ちなみにLP時代のA面最後曲である「Severity Town」の最後で語りが入り、疲れたEanieが休息を取る時「レコードを裏返そうか、それとももう一つホット・ドッグを食べようか考え始めた。」とある。シャレてるなぁ。


ただし、Roger Deanを意識したと思われるカバーアートは、逆にRoger Deanには力量が及ばないことを感じさせてしまって残念な気がする。もっとオリジナルに徹した方がよかった気がする。Marabooの柔らかい線なんてとてもきれいなんだから。


「冥府宮からの脱出」

Grobschnitt(1972年)

Grobschnitt


ドイツのバンドGrobschnitt(グローブシュニット)の1972年のデビューアルバムである。邦題の「冥府宮からの脱出」が音楽世界を的確に表している。ここで展開されるのはじわじわとしみ入る不気味な狂気と暗黒の迷宮。

バンド編成上の特徴は、ツインドラムであること。そして演奏上もこのツインドラムが大きな特徴であり個性となっている。

 Joachim Ehrig (EROC):ドラムス&パーカッション
 Axel Harlos (FELIX):ドラムス&パーカッション
 Stefan Danielak:リズムギター&ボーカル
 Bernhard Uhlemann (BAR):ベース、フルート、パーカッション
 Gerd-Otto Kuhn (LUPO):リードギター
 Hermann Quetting (QUECKSILBER):オルガン、ピアノ、スピネット、パーカッション

最初の「Symphony」の出だしからすでに異様だ。エコーのかかった雑踏の中の会話から一転、合図とともに男声合唱が始まる。しかしすでにハーモニーが 微妙にズレている。聴いていて感覚が狂ってくる。そして左右に振られたツインドラムがユニゾンのようでユニゾンになりきれていないような、また不思議な音 世界を作り出す。いよいよスピード感あふれるパートが始まり、粘っこいボーカルが歌いだしても、やはりドラムが気になってしまう。どことなくアンサンブル の危うさを感じるのだ。

「Travelling」 はスピード感あふれるハードな曲。なのだが、これまたドラムが気になる。基本的にこのバ ンドのドラムは、いわゆるリズムをしっかりキープし、ボトムを安定させる役割を担っていない。ツインドラムであるにもかかわらず、どちらもパーカッション 的な細かな動きをするため、ロック的ダイナミズムとは違った音楽が出来上がる。そしてリズムがズレる。特にこの曲では疾走感を出すためになり続けているハ イハットが遅れるのだ。聴いていてハラハラする。

不思議な雰囲気を持ったボーカル 主体の「Wonderful Music」をはさんで、大曲「Sun Trip」が始まる。ボーカルの個性爆発、粘っこさ満載だが、演奏面でもギターが活躍し、まさに集大成的な曲だ。どっぷりその世界に浸りたい。がしかし、 ブルース風なスローなパートでもツインドラムが両方パタパタ鳴っている。不思議な世界が広がる。

こ のアルバムに込められた暗黒のイメージ には、曲自体の暗さ、まとわりつくようなボーカルやギターの粘っこさに加え、独特のツインドラムがかなり貢献していると思う。リズムの中に焦燥感、追い立 てられるような不安感が全体を覆っているのだ。技術を問うてはいけない。その危うさが作り出す冥府をさまよい歩くアルバムである。

唯一無二の世界。ジャケットもすばらしい。