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2009/06/21

「U.K. (憂国の四士)」

U.K. (1977年)

U.K.(ユー・ケー)


1970 年代King Crimsonは、アルバムでは1975年発表の「USA」がラストアルバムとなるが、実質的には1974年発表のスタジオアルバム(一部ライブ音源)「Red」の発表を以て解散している。しかしその解散はリーダーのRobert Frippが一方的に決めたことによる。

これによってジョンとビルのリズム隊は活動する場がなくなり、自ら新たなグループの立ち上げの構想を練る。当初
YesのRick Wakemanを加えたトリオ編成のバンド案が浮上し、実際にリハーサルも行われたようだが、結局実現にはいたらなかった。

1977
年当時、イギリスロンドンを中心にパンク・ロック(punk rock)と呼ばれる、ストレートで過激なロックが爆発的に盛り上がりを見せていた。ロック音楽がどんどん難解になり、そもそも持っていた社会への反抗や怒りの爆発としての単純だが感情を叩き付けるようなロックに魅力が集中した。

そうした大きなムーヴメンとは、その矛先を難解でテクニックを重視するプログレッシヴ・ロックにも向けられた。プログレッシヴ・ロック自体も
1974年 頃にはそれぞれの最高作と言われるアルバムが出そろい、バンドとしての限界が見え始め、その後の方向性の模索の時期に入りつつ合った。パンク・ロックの隆 盛は、そうした動きを加速させることになる。結果的に従来のプログレッシブ・ロックバンドは解散、もしくはポップ化を取り入れた方向修正を余儀なくされて いった。

そんな中で、重鎮
King Crimsonの脅威的リズム隊を核とするバンドがU.K.が登場した。アルバム「U.K.」は、パンク・ロックの中心的なバンド中心的バンドSex Pistolsが「Never Mind the Bollocs」(邦題は「勝手にしやがれ」)を発表した翌年の1977年のことである。イギリスの国名U.K.(United Kingdom of Great Britain and Northern Island)自体をバンド名にするという、まさにパンク・ロックに対応すべく立ち上がったバンドというイメージがあった。

 
Eddie Jobson:エレクトリック・ヴァイオリン、キーボード
 
John Wetton:ボイス、ベース
 
Allan Holdsworth:ギター
 
Bill Bruford:ドラムス、パーカッション

集まったメンバーがまた凄かった。ジャズロック系のバンドでそのレガート奏法によるつややかなはや弾きでカリスマ的存在だった
Allan Holdsworth(アラン・ホールズワース)、Frank ZappaのバンドやRoxy Musicでキーボード&ヴァイオリンを担当し、一流にして華麗なプレイを見せていた貴公子Eddie Jobson(エディ・ジョブソン)。AllanはBillのソロ作への参加、EddieはJohnとRoxy Musicで共にプレイしていたことから抜擢された。

発売されたアルバムは、
King Crimsonの音楽をさらに進化させるものかと思われていたが、実際には、テクニカルで壮絶な内容にもかかわらず、ボーカル主体のポップな面が印象づけられるものとなった。ソロを取れるのがAllanの個性的ギター、Eddieの華麗なキーボード&ヴァイオリンと、フロントに立てるメンバーが多いことがアダとなり、バンドの核が作れていない。ただしそこがこのアルバムの凄いところなのだ。

まず最初に聴いた時には、くぐもった従来のメロトロンに代わる
Eddieの力強くメリハリのあるポリフォニックシンセサイザーの音に衝撃を受けた。カチッとまとまった楽曲、歌をはさんでソロが展開するという、わかりやすい構成。明らかに旧来の、プログレッシヴ・ロックの混沌渦巻く世界とは違う、新しくカッコイイサンウンドだった。特に「In The Dead Of Night」〜「Presto Vivace and Reprise」の組曲、そして旧LPB面最初にあたる「Alaska」のスリリングな演奏に圧倒された。

さらに一聴するとポップな印象の裏に、もっともっと深い世界が広がっていた。まず
Bill Brufordのドラミングが尋常ではない。スネアやバスドラの音がどの拍で打たれるか予測不能。だから曲に緊張感が増す。Allanの個性的なギーターソロもここぞとばかりに切り込んでくるし、「Thirty Years」では珍しくアコースティックギターも聴ける。Eddieのキーボードも、音の明るさ、明快さにもかかわらず、非常に難解なリズムをシーケンサーのように引き倒す。「Time to Kill」で聴けるヴァイオリンソロもテクニカル。

つまり歌が終わると変拍子ジャズロック的な各プレーヤーの個性がむき出しになるのだ。ただしフリーインプロヴィゼーションにならないのが、
Crimson的ではなくジャズロック的と言える所以。

とっつきやすいロック的メロディーと明るめのキーボードサウンド、そのオブラートに包まれた壮絶な変拍子とジャズロック的インタープレイ。ただしそれがメインにならずあくまで間奏的な扱いになっているところが
U.K.らしさだったと思う。この個性的で自己主張の強そうなメンバーが明確なフロントマンを立てず、ギリギリのバランスで作り上げることができた傑作。

しかしバンドは当然のようにこの
1枚を残して分裂する。



「デンジャー・マネー」

Danger Money(1979年)

U.K.(ユー・ケー)


「Danger Money」(邦題は「デンジャー・マネー」)は、イギリスの国名をそのままバンド名にしたU.K.(ユー・ケー)の、1979年に発表した2作目の作品である。

とは言っても
1作目とメンバーやバンドコンセプトが異なるので、実質New U.K.のファーストという感じだ。ロック色の強いストレートな力強さを持ちながら、1970年代前半のプログレッシヴ・ロックの持っていた複雑な曲構成や、大作志向も残されていて、絶妙にブレンドされたサウンドが特徴である。

そもそも
King Crimsonの解散後、そのメンバーだったBill Bruford(ビル・ブラッフォード)とJohn Wetton(ジョン・ウェットン)が中心となり、新しいバンドの結成を計画していた。そしてそのバンドは、なんとYesのキーボード奏者Rick Wakemanを入れた、トリオとして動き出したものだった。それは1976年の英メロディー・メーカー誌に載った。

しかしこのプランはレコード会社との契約の関係などで結局実現せず、キーボードとヴァイオリンで活躍中だった
Eddie Jobsonを迎え入れるかたちでトリオ案が実現に向う。そこにBillがソロアルバムで共演したギターのAllan Holdsworth(アラン・ホールズワース)が加入し、ギター、キーボード兼ヴァイオリンという2枚看板をフロントに立てた強力なメンバーによる初代U.K.が誕生する。

しかしアルバム「
U.K.」一枚を残して分裂し、結果的に「U.K.」は初期の構想通りのトリオとして生まれ変わることになる。ただしドラムスはフランク・ザッパのバンドなどで超絶ドラミングを披露していたTerry Bozzioが加入する。

 
Eddie Jobson:キーボード、エレクトリック・ヴァイオリン
 
John Wetton:リード・ボイス、ベース
 
Terry Bozzio:ドラムス、パーカッション

一聴してわかるのは、曲がシンプルかつストレートになったこと。キーボードとボーカルを主体とし、ヴァイオリンが独特の味を出している。ギターがいなくなった分、インストゥルメンタル部分が整理され、自由にプレイしている感じがする。


そしてドラムスの違い。
Terry Bozzioは現在のテクニカル系のメタルやプログレッシヴ・ロックドラマーの祖という感じで、非常にパワフル&テクニカルなプレーをする。特にパワフルである点が、トリオとなった新U.K.の新しい魅力として活きているのだ。

最初の曲「
Danger Money」(「危険手当」のこと)は、重々しいベースとドラムスに、厚みのあるキーボードで始まる。まさにキーボード・トリオ誕生を宣言するようなイントロだ。そしてボーカルが入るとメロディの明快さに気づく。詞の内容も金のために闇の仕事をしている人物を描いたもの(ProgLyricsに訳詞があります)。

重々しい内容を複雑に重厚に描くという手段は止め、よりストレートに、しかし良く聴くとリズムや楽器アンサンブルに工夫やヒネリが加わっているという点は、初代
U.K.の方向性をさらに進めたものだ。

バッキング、メロディー、ソロと
Eddie Jobsonが大活躍。2曲目「Rendezvous 6:02」では華麗なキーボードを聴かせるし、4曲目「Caesar's Palace Blues」では終止クラシカルなヴァイオリンが響く。5曲目はシングルも出した「Nothing To Lose」は、このアルバム中一番ポップな曲。歌詞も前向き。(ProgLyricsに訳詞があります)。でも中間部のヴァイオリン・ソロがカッコイイ。

しかしプログレッシヴ・ロック的な要素もまだまだ残っており、
3曲目(LP時代のA面ラスト)「The Only Thing She Needs」では、複雑なリズム、ダイナミックな展開、キーボードソロなど、ぐいぐいと聴くものを引っ張っていく大曲だし、ヴァイオリン、ドラムスが弾きまくる。

そして最後の「
Carrying To Cross」。12分のドラマティックな曲。静かなボーカルパートから魅き込まれる。John Wettonの声はやっぱりいい。そして中間部のインストパートは手に汗握るテンション。後半は一転して5拍子の変拍子で押しまくる。細かなフィルを入れ、切れとパワーのあるドラムの上で、キーボードソロ、ヴァイオリンソロが歌いまくる。大作だ。

結局新生
U.K.もこのあと来日アルバム「Night After Night」を発表して解散してしまうが、初代U.K.とともに、この絶妙なポップ感とプログレッシヴ・ロック的イデオムの融合が、とてもドラマチックなアルバムとなった。元気が出るアルバムだ。Asiaほどポップにならない理想的なバランスが、まさにこの時期だからこそ作り得た傑作。

ちなみに来日したときは美形の
Eddie Jobson効果もあり、アイドルバンド的人気があったのが印象的だった。John Wettonも痩せてたしね。