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2009/07/07

「ライヴ・イン・ロンドン」

「LIVE IN LONDON」 PFM (1976年)
(Premiata Forneria Marconi)


(ピー・エフ・エム:

 プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)


今回紹介するアルバムは思いっきり反則技である。なぜかと言うとイタリアの大物バンドPFM(Premiata Forneria Marconi)のブートレグ、いわゆる海賊版なのだ。

いつどこで購入したかも憶えていないシロモノ。どうもBBCラジオ放送用音源が大本で、それが海賊版LPになり、LPからCDに落としたという経緯のモノらしい。

実は粗雑な作りだったせいか、しばらくしたらCDプレーヤーで再生不能になっていたのだ。久しぶりに取り出してみて、iTunesで読み込めないものかと試したら奇跡的に読み込んでくれた。だから本当に久しぶりに聴けた一枚なのだ。

1976年というと1975年の「Chocolate Kings」から専任ボーカリストBernardo Lanzetti(ベルナロド・ランゼッティ)が加入、この年に日本公演も行われ、予想以上のハードなプレイが話題になった。  

 Flavio Premoli:キーボード  
 Franz Di Cioccio:ドラムス  
 Patrick Djivas:ベース  
 Fanco Mussida:ギター、ボーカル  
 Mauro Pagani:ヴァイオリン、フルート  
 Bernardo Lanzetti:ボーカル

当然ライヴとなるとBernardo加入前のアメリカでの正規ライブ盤「Cook」(1974)との比較がしてみたくなるところ。音質はブートレグとしてはかなり良い方。音の分離もまずまずだけど、全体にモコモコとくぐもった感じが残念。

し かし聴きどころ満載。最初の曲「Four Holes in the Ground」は、アルバム「Cook」でもトップを飾った超絶テクニカルな曲。その時のコンディションに次第で出来が変わると言われるくらいの難曲。し かし「Cook」並のスピードと集中力で曲は始まる。

アンサンブルの勢いが増している。「Chocolate Kings」のスタジオアンサンブルに迫る勢いだ。そしてなんと、中間部の劇的にメロトロンが鳴り響く叙情的パートがない。ボーカルパートもない。

そ の代わりに、エレクトリックピアノによるアドリブプレイから、ギターのアルペジオが入ってきて、さらにベースまでもアルペジオ風に加わる超絶インストパー トが続く。そしてギターの高速プレイから曲に戻り、キーボードとギターの高速ユニゾンで曲が終わる。完全インストゥルメンタル。見事に初期の叙情性が削ぎ 落とされたアレンジ。

2曲目、3曲目は「Chocolate Kings」からのボーカル曲。こちらはアルバム通りの流れ。と言ってもアルバム通りに再現すること自体凄いことなのだけど。ここでもギターとヴァイオリ ンの悶絶ユニゾン、ギターとエレピの高速アンサンブルなど充実したプレイが聴ける。

4曲目の「Dove...Quando...」も「Cook」に入っていたもの。さすがにこの曲はBernardoに代わってボーカルを取るのはドラムのFranz Di Cioccioか。新生テクニカル集団としてのPFMの、唯一の叙情的な曲。

そ して5曲目は「Cook」にも入っていた「Alta Loma Nine Till Five」。「Cook」では15分をギター、ヴァイオリンが大活躍するアドリブインタープレイから「ウィリアムテル序曲」になだれ込む劇的な展開の曲 だった。対してこの「Alta Loma Nine Till Five」では、間に「Chocolate Kings」を含めて23分を越える熱演となっているのだ。

曲は「Mr. Nine till Five」の一部から始まり、ベースの一定のリズムに乗ってギターのアドリブから曲が展開していく。すでにベース自体がリズムキープを越えて縦横無尽に動 き回っている。ギタープレイも最初から飛ばす。ドラムも熱い。メンバーのテンションと自己主張の度合いが増している。逆にMauro Paganiの居場所が無くなってきているのもわかる。

しかし「Chocolate Kings」から再びインタープレイに戻ると、やっとヴァイオリンが弾きまくり始める。そしてギターとのユニゾンも含めながら曲を引っ張っていき、最後は やはり「ウィリアムテル序曲」で幕を閉じる。「Chocolate Kings」がちょっとした休憩の時間帯に思えるほどのテンションが、最初から最後まで続く23分間だ。


確かに初期の叙情性はなくなっている。メロトロンも使用されなくなった。

しかしどんな激しいアドリブやインタープレイも、美しいメロディーと非常に正確で丁寧な演奏、そして歪ませ過ぎないきれいな音色で奏でているところが、PFMの持っている叙情を感じさせてくれる。

この時期のライブは「10 Anni Live 1971 - 1981」というボックス
セットでないと聴けないが、現在入手困難なのが残念だ。


2009/07/06

「クック」

Cook(1975年)

PFM(Premiata Forneria Marconi)
(ピー・エフ・エム:
 プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)


Cook」(邦題は「クック」)イタリアのPFM(Premiata Forneria Marconi)の1974年のアメリカ公演を収録したライブ・アルバムである。本国での2ndアルバムを元に、1973年に英語版「Photos Of Ghosts(幻の映像)」を発表し、まさに日の出の勢いでアメリカ、カナダツアーが行われた時の熱い記録だ。

本国イタリアでは 「Live In USA」、イギリスとアメリカでは「Cook」のタイトルで、別ジャケットで1975年に発売された。日本で発売されたものは英米版ジャケットに準じてい る。

 Franz Di Cioccio:ドラムス、パーカッション、ボーカル
 Jan Patrick Djivas :ベース
 Franco Mussida:ギター
 Mauro Pagani:ヴァイオリン、フルート
 Flavio Premoli:キーボード、リードボーカル

このPFMの音楽を始めて聴いた時感じたのは、それまでのプログレッシブ・ロックとは違うタイプだということだった。ジャケットのイメージ戦略もあったろう けど、Yesは異次元の別世界に、Pink Floydは狂気をはらんだ幻想的な世界に、King Crimsonは暗黒のエネルギー渦巻く世界に、聴き手を引きずり込んでくれた。時にはバンド自体は背後に隠れ、その作り上げられた別世界に浸ることが喜びであった。

しかしPFMの第一印象は、そうした別世界へのいざないではなく、音楽性の圧倒的な豊かさ、美しさだった。最初の曲『Four Holes in the Ground』の5拍子の躍動感。非常にテクニカルな曲なのにノリのある演奏、明るいメロディー。Premoliの弾くシンセの音はRick Wakemanのようにポルタメントの効いた厚みのあるものとは違って、ハモンドオルガン以上に軽やかでクリアーな音なのも新鮮だった。

そして途中からの静かな パートに劇的に入ってくるメロトロン、そこに重なるPaganiのフルート。西洋音楽の歴史が持つ音楽の豊かさみたいなものを強く強く感じたのだ。

もちろんイタリア語の美しさ、Mussidaの弾く地中海を連想させるようなアコースティックギターソロ、『Celebration』で盛り上げた後、 『The World Became The World』のテーマに突入するカタルシス、最後の『Alta Loma Five Till Nine』におけるジャムセッション的展開から、ラストに『ウイリアムテル序曲』へなだれ込む曲構成の巧みさ、楽しさ。このアルバムの魅力は様々なところ に散りばめられている。

PFMの静的な部分、素朴な美しさに魅力を感じる人には、物足りないかもしれない。あるいは意外に感じるかもしれない。しかしこれは紛れもなくイタリアの明るさ、熱さであり、もちろんPFMの大きな魅力でもある。

「Cook」をPFMを代表するアルバムに挙げる人は多くないかもしれない。でもわたし自身、最初の出会いがFMラジオで流れていた「Cook」を耳にして、仰天して即手に入れたということもあって、PFMと言えばこのアルバムがまず頭に浮かぶ。

間違いなく傑作である。

ちなみにアルバムタイトルに関しては、ドラムスのFranz Di Cioccioが次のように語っている。

「それまでイタリアではライヴ・アルバムを発表したアーティストなんてひとりもいなかったんです。ましてはアメリカのライヴですからね。私達は当時のイタリアのマーケットではかなり目立つだろうと、また私達の国外での成功の紅しとして、アルバムのタイトルをシンプルに『ライヴ・イン・USA』としたんです。『クック』というタイトルを付けたのはマンティコア・U.S.A.の社長であったマリオ・メディ明日の提案でした。『クック』はスラングで『仕事をうまくやってのける』という意味で、彼は、P.F.M.は才能にあふれるミュージシャンで、音楽という料理を『クッキング・アップ(上手に作る)』してくれるだろうと思った、と語っていました。私達はそのアイディアをアルバム・タイトルにしたのです。」
「ArchAngel 5号」(DIW音楽出版、1996年)

2009/07/05

「幻の映像」

Photos Of Gohsts 1973年)

PFM
(Premiata Forneria Marconi)
(ピー・エフ・エム:
 プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)


Photos Of Gohsts」(邦題は「幻の映像」)は、イタリアン・ロックの開拓者PFM(Premiata Forneria Marconi)が1973年に発表したワールドマーケット・デビューアルバムである。

と言っても英米市場を意識して作ったということではなく、イタリア語での国内版の2ndアルバム「Per Un Amico(友よ)」全曲に、1stアルバムから1曲「Cerebration (E' Festa)」、新曲1曲「Old Rain」という構成。 英詞は初期King Crimsonの歌詞を担当していたPete Shinfield(ピート・シンフィールド)によるもの。

当時はKing Crimsonを脱退し、EL&Pのイタリア公演に随行した際にPFMを“発見”し、EL&Pのマンティコア・レーベルからデビューさせたという。ちなみに5曲目のみイタリア語で歌われている。

 Flavio Premoli:キーボード、ボーカル
 Franz Di Cioccio:ドラムス、ボーカル

 Girorgio Piazza:ベース
 Fanco Mussida:ギター、ボーカル
 Mauro Pagani:ヴァイオリン、ウッドウインド(木管楽器)

英詞の効果もあって、繊細さのあるオリジナル2ndよりダイナミックでドラマティック。世界進出用の企画物ではなく、きちんと作品として完成している。オリジナルと共に、どちらも傑作。 とにかく個人個人の持つ圧倒的な演奏力、5人のアンサンブルの迫力、そしてスリリングなロックの激しさと、つぶやくような静かな曲における静けさ・美しさとの差の激しさ。一部のスキもなし。

アルバム冒頭の「River Of Life(人生は川のようなもの)に凝縮される魅力。静かに始まるギターソロ。そしてフルートとのデュエット。バロック調のクラシカルで端正な美しさに聞き惚れていると、重いリズムが一気に雰囲気を覆す。切り込むヴァイオリン。さらに場面が一転し、フォークソングのような柔らかなボーカル。めまぐるしく展開するが、すべての水準が高く、どんどん魅き込まれる。

そして現れるメロトロン、ムーグ、フルートによる雄大なメロディ。クラシカルな伝統がロックのダイナミズムと見事に融合している。
スペインのグループがフラメンコ的要素を血肉として自然に持ち合わせているのと同様に、イタリア人の彼らも、古典的クラシックの要素を血肉として持ち合わせているといった感じがする。

出てくる音にためらいがないと言うか、ウソがないと言うか。クラシックの素養のあるギター、キーボード、ヴァイオリンに3人の、自然に醸し出されるクラシカルさと、クラシックに囚われないセンスの良さが光る。


日本でのデビューもこの「幻の映像」によるものだった。イギリスから出て来たバンドとは明らかに異なった雰囲気に驚いた記憶がある。ライヴアルバム 「Cook」(イタリア本国では「Live In USA」)で、基本的なテクニックだけでなく、インプロヴィゼーションの凄さも見せてくれた。


後にボーカルを強化しそれぞれが演奏に専念するために専任ボーカリストを入れるが、初期の少し頼りない感じのボーカルの持つデリケートな感覚は失われる。さらにその後専任ボーカリストが抜け、ドラムスのFranz Di Cioccioがボーカルをとるようになる。2002年の来日公演でもドラムを代役に任せて、フロントに出て歌いまくる場面があった。まるで GenesisのPhil Collinsみたいだ。


バンド名は「賞を受けたベーカリー」の意味で、

「フランツ・ディ・チッチョのインタヴューによると、パンをこねる作業と自らの音楽創造の姿を重ねたものだという。」


(「ストレンジ・デイズ No.69」ストレンジ・デイズ、2005年)より)