Änglagård
1990年代初頭に北欧スウェーデンから突如現れ、圧倒的なヘヴィー・シンフォニック・サウンドを誇る3枚のアルバム(内1枚はライヴ)を発表後に解散したAnglagardが、2012年に18年ぶりの新譜を発表した。
通常の曲展開の定石に縛られず、曲をどんどん展開させて行く先の読めない構成や、静寂から轟音までの急激で時に唐突なほどの揺れ、グルーヴしないドラムスのナタで叩き切るような打音、低音でも研ぎすまされた鋭角的な音で迫るリッケンバッカー・ベース、暗く寂しい森の奥へと足を踏み入れていくようなフルートとメロトロン。基本的な特徴は18年前の作品群を継承していると言って良い。しかしサウンドの深みはその比ではない。
Mattias Olsson: drums, percussion and noise
Johan Brand: bass and Taurus
Thomas Johnson: Pianos, Mellotrons and synths
Jonas Engdegård: guitars
Anna Holmgren: flute and saxophone
with:
Tove Törnberg: cello
Daniel Borgegård Älgå: clarinet, bass clarinet, baritone saxophone
Ulf Åkerstedt: bass tuba, bass trumpet, contrabass trumpet
Johan Brand: bass and Taurus
Thomas Johnson: Pianos, Mellotrons and synths
Jonas Engdegård: guitars
Anna Holmgren: flute and saxophone
with:
Tove Törnberg: cello
Daniel Borgegård Älgå: clarinet, bass clarinet, baritone saxophone
Ulf Åkerstedt: bass tuba, bass trumpet, contrabass trumpet
曲展開が読めないため予定調和的な安心感を得られないことから、彼らのサウンドにはどこか聴く人の共感を拒絶するようなところがある。しかし、だからと言ってそこにはアンチ・ポップス的な意図や主義主張的なものは感じられない。分かる人が分かれば良いというような自己満足的な開き直りもない。自分たちのオリジナルな音楽を誠実に突き詰めた結果、そうなってしまったというような壮絶さがあるのだ。
恐らくそうやって音楽を創出していく作業は非常に過酷なことだったと思われる。解散を決意したというProgfest '94のステージを記録した3rdライヴ・アルバムのタイトル「Buried Alive(生き埋め)」が、当時のメンバーのギリギリの精神状態を物語っていると言えよう。
そして18年ぶりに届けられた新譜では、上記のような基本的なAnglagardサウンドを継承しつつも、かつての叙情を断ち切るような急激な変化は影を潜め、次々に展開していく一曲一曲の流れは聴けば聴くほど説得力を増し、何より心に沁み居るような美しい素朴でメロディーが、曲の魂のように用意されているのであった。そこに今までの作品には無い“色気”のようなものが感じられるのだ。
特に1曲目と3曲目(全4曲)のメイン・テーマは、キラー・メロディーと呼びたいほどの素晴らしさである。そこに山場を持っていく曲構成も素晴らしい。
いわゆる“シンフォニック・ロック”な音像ではなく、室内楽のような生々しい楽器の音も特徴で、特に低音域で活躍するフルートが今回は目立っている。フルートとサックスを操るAnnaの存在感がとても増していると言える。
アレンジもさらに複雑さを極め、メロディーの周りで複数の楽器が常に絡み合っている。そして全編通じて薄暗い悲しみと途切れることの無い緊張感が漂っているのだ。
私的にはやっと、やっと70年代に比肩しうる“今の時代”のプログレッシヴ・ロックが生まれたように思う。もちろん好みの問題はあろうけれど、70年代の有名なバンドのサウンド+αではなく、70年代のバンドには到達出来なかった別世界にAnglagardは到達したのだ。そう言う意味も込めて今作は彼らの最高傑作である。
作品の完成を待っていたかのように、あるいは全ての力を注ぎ尽くしたかのように、バンドはアルバム発表後の2012年秋に大幅なメンバーチェンジを行なう。中心人物であったMattiasを筆頭に、ギターのJonasとキーボードのThomasが脱退し、かつてのメンバーTord Lindmanが復帰、さらにドラムスとキーボードに新たなメンバーを加えて、バンドは再始動した。
2013年に奇跡の来日を果たし、その後も精力的にライヴをこなしている彼らが、新しいラインアップでどのような音を造り出してくれるか、興味と興奮はまだまだ尽きない。