原題:Yessongs(1973)
■Yes(イエス)
イギリスの孤高のバンドYesの6作目にして初のライブアルバム。1972年から1973年にかけてのツアーから、まさにバンドの絶頂期を記録した作品だ。
ビル・ブラッフォード脱退、そしてアラン・ホワイト加入というバンド的には転機にあったに違いないのだが、そんなことは微塵も感じさせないLPではなんと3枚組という堂々たるボリューム。しかし予約段階で早々とゴールドディスク獲得。
当時の人気の凄さもさることながら、内容も素晴らしい。ライブでは再現不可能と思われていたアンサンブルを、寸分違わず、さらにパワーアップしてこなしていることに、このアルバムを聴いた誰もが驚いた。
Jon Anderson:ボーカル
Chris Squiere:ベース、ボーカル
Steve Howe:ギター、ボーカル
Rick Wakeman:キーボード
Alan White:ドラムス
Bill Bruford:ドラムス(2曲のみ)
ギターのスティーヴ・ハウが加入した3rdの「Yes Album(イエス・アルバム)、キーボードのリック・ウェイクマンが加入した4thの「Fragile(こわれもの)、そしてその“黄金のラインアップ”により前人未到の音世界に到達した「Close to the Edge(危機)」と、テクニック・楽曲のクオリティーとオリジナリティーが急速に登り詰めようとする時期のアルバムから、言わばベストと言って良い選曲。
加えてリック・ウェイクマンのアルバム「ヘンリー八世と六人の妻」からも選曲がされていて、良いアクセントになっている。キーボードに囲まれて銀色のマントを羽織って長髪をなびかせつつ弾く姿が目に浮かぶ。と言うか、彼やスティーブ・ハウのソロパフォーマンスは、すでにYesワールドに欠かせないものになっていたのだ。
こうしたメンバーによるソロパフォーマンス・コーナーは、PFMやKansasのライブアルバムでも聴けるけど、始めたのはYesだろう。ライブ構成上と言うより、自己主張の強さの現れじゃないかという気がするほど、それぞれ気合いの入ったケレン味たっぷりな演奏だ。
ライブアルバムとしてまず驚くべきは、なんと言ってもそのスタジオ作の再現性の高さである。複雑な楽曲を流れるように演奏していくだけではない。アルバムで聴ける繊細さが見事に残されているのだ。その上で、ライヴならではのドライブ感がや緊張感が加わっている。
その後各プレーヤーの演奏は一種のお家芸的な、お決まりなものとなっていくが、このアルバムでは確かなテクニックをギリギリまで駆使して繰り広げられる、必然性のあるプレイとして初々しくも熱いエネルギーを感じることが出来るのだ。
聴き所が多くて困ってしまうくらいだが、特に2つの点を強調したい。一つはスティーヴ・ハウのギター。クラシックやカントリーなど、様々な音楽の影響を受け、多種多様なギター類を弾きこなす一方で、かなりクセのあるギターサウンドとフレージングで、独特の存在感を持つ彼のギター。
しかしここではロックしているのだ。それも全アルバム中最高のプレーじゃないかというほど、弾き倒しているのである。それは次作「海洋地形学の物語」のバイオリン奏法を多様した印象的なプレイや、次次作「リレイヤー」での怒濤のサウンドとも違う。3rdアルバムあたりに濃厚な、Yes流ハードロックとも言うべきプレイなのだ。とにかく凄い。
もう一つこのアルバムで注目したいのが新加入直後のアラン・ホワイトである。彼もまた後のアルバムとは別人のように、“ロック”なドラミングでパワフルに曲を引っ張っているのだ。ビルと交替した後の2回のツアーを経て、ようやくバンドの曲を彼なりに叩けるようになったと言われる(「イエスストーリー 形而上学の物語」、ティム・モーズ著、シンコーミュージック、1998年)。
人気急上昇という時期に後から加入して、それまで同様なアンサンブルを短期間に作らなければ成らない立場にあった彼の、意欲や気合いや、時には焦りや気負いまでもが、エネルギッシュなドラミングとして現れているのだ。その彼の「とにかくやるしかない!」みたいな勢いが、異様な雰囲気と特別な緊張感を、このアルバムにもたらしていると言える。
もちろんロジャー・ディーンによる豪華なジャケットデザインが、Yesの視覚的世界を決定的なものにした点でも、この3枚組LPの存在は大きかった。その絵を見ながらどっぷりと浸る目と耳によるイエス・ワールドであった。
近年のテンポやキーを落とした「再現ライブ」とは全く異なる、奇跡のような演奏が詰まった傑作アルバム。
ちなみにLP3枚組での各盤面の収録曲は以下の通り。LP時の曲の配置に従って全体の流れを意識して聴いてみるのも、当時の制作意図や構成に思いをはせることが出来て面白いのではないだろうか。
・A面(ディスク1表)
オープニング(ストラヴィンスキー作曲:組曲・火の鳥より)
シベリアン・カートゥル
燃える朝焼け
・B面(ディスク1裏)
パーペチュアル・チェンジ
同志
・C面(ディスク2表)
ムード・フォー・ア・デイ
ヘンリー8世の6人の妻より
ラウンド・アバウト
・D面(ディスク2裏)
オール・グッド・ピープル
遥かなる思い出 / ザ・フィッシュ
・E面(ディスク3表)
危機
・F面(ディスク3裏)
ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス
スターシップ・トゥルーパー
イギリスの孤高のバンドYesの6作目にして初のライブアルバム。1972年から1973年にかけてのツアーから、まさにバンドの絶頂期を記録した作品だ。
ビル・ブラッフォード脱退、そしてアラン・ホワイト加入というバンド的には転機にあったに違いないのだが、そんなことは微塵も感じさせないLPではなんと3枚組という堂々たるボリューム。しかし予約段階で早々とゴールドディスク獲得。
当時の人気の凄さもさることながら、内容も素晴らしい。ライブでは再現不可能と思われていたアンサンブルを、寸分違わず、さらにパワーアップしてこなしていることに、このアルバムを聴いた誰もが驚いた。
Jon Anderson:ボーカル
Chris Squiere:ベース、ボーカル
Steve Howe:ギター、ボーカル
Rick Wakeman:キーボード
Alan White:ドラムス
Bill Bruford:ドラムス(2曲のみ)
ギターのスティーヴ・ハウが加入した3rdの「Yes Album(イエス・アルバム)、キーボードのリック・ウェイクマンが加入した4thの「Fragile(こわれもの)、そしてその“黄金のラインアップ”により前人未到の音世界に到達した「Close to the Edge(危機)」と、テクニック・楽曲のクオリティーとオリジナリティーが急速に登り詰めようとする時期のアルバムから、言わばベストと言って良い選曲。
加えてリック・ウェイクマンのアルバム「ヘンリー八世と六人の妻」からも選曲がされていて、良いアクセントになっている。キーボードに囲まれて銀色のマントを羽織って長髪をなびかせつつ弾く姿が目に浮かぶ。と言うか、彼やスティーブ・ハウのソロパフォーマンスは、すでにYesワールドに欠かせないものになっていたのだ。
こうしたメンバーによるソロパフォーマンス・コーナーは、PFMやKansasのライブアルバムでも聴けるけど、始めたのはYesだろう。ライブ構成上と言うより、自己主張の強さの現れじゃないかという気がするほど、それぞれ気合いの入ったケレン味たっぷりな演奏だ。
ライブアルバムとしてまず驚くべきは、なんと言ってもそのスタジオ作の再現性の高さである。複雑な楽曲を流れるように演奏していくだけではない。アルバムで聴ける繊細さが見事に残されているのだ。その上で、ライヴならではのドライブ感がや緊張感が加わっている。
その後各プレーヤーの演奏は一種のお家芸的な、お決まりなものとなっていくが、このアルバムでは確かなテクニックをギリギリまで駆使して繰り広げられる、必然性のあるプレイとして初々しくも熱いエネルギーを感じることが出来るのだ。
聴き所が多くて困ってしまうくらいだが、特に2つの点を強調したい。一つはスティーヴ・ハウのギター。クラシックやカントリーなど、様々な音楽の影響を受け、多種多様なギター類を弾きこなす一方で、かなりクセのあるギターサウンドとフレージングで、独特の存在感を持つ彼のギター。
しかしここではロックしているのだ。それも全アルバム中最高のプレーじゃないかというほど、弾き倒しているのである。それは次作「海洋地形学の物語」のバイオリン奏法を多様した印象的なプレイや、次次作「リレイヤー」での怒濤のサウンドとも違う。3rdアルバムあたりに濃厚な、Yes流ハードロックとも言うべきプレイなのだ。とにかく凄い。
もう一つこのアルバムで注目したいのが新加入直後のアラン・ホワイトである。彼もまた後のアルバムとは別人のように、“ロック”なドラミングでパワフルに曲を引っ張っているのだ。ビルと交替した後の2回のツアーを経て、ようやくバンドの曲を彼なりに叩けるようになったと言われる(「イエスストーリー 形而上学の物語」、ティム・モーズ著、シンコーミュージック、1998年)。
人気急上昇という時期に後から加入して、それまで同様なアンサンブルを短期間に作らなければ成らない立場にあった彼の、意欲や気合いや、時には焦りや気負いまでもが、エネルギッシュなドラミングとして現れているのだ。その彼の「とにかくやるしかない!」みたいな勢いが、異様な雰囲気と特別な緊張感を、このアルバムにもたらしていると言える。
もちろんロジャー・ディーンによる豪華なジャケットデザインが、Yesの視覚的世界を決定的なものにした点でも、この3枚組LPの存在は大きかった。その絵を見ながらどっぷりと浸る目と耳によるイエス・ワールドであった。
近年のテンポやキーを落とした「再現ライブ」とは全く異なる、奇跡のような演奏が詰まった傑作アルバム。
ちなみにLP3枚組での各盤面の収録曲は以下の通り。LP時の曲の配置に従って全体の流れを意識して聴いてみるのも、当時の制作意図や構成に思いをはせることが出来て面白いのではないだろうか。
・A面(ディスク1表)
オープニング(ストラヴィンスキー作曲:組曲・火の鳥より)
シベリアン・カートゥル
燃える朝焼け
・B面(ディスク1裏)
パーペチュアル・チェンジ
同志
・C面(ディスク2表)
ムード・フォー・ア・デイ
ヘンリー8世の6人の妻より
ラウンド・アバウト
・D面(ディスク2裏)
オール・グッド・ピープル
遥かなる思い出 / ザ・フィッシュ
・E面(ディスク3表)
危機
・F面(ディスク3裏)
ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス
スターシップ・トゥルーパー