2010年1月4日月曜日

「Shell」Naikaku(忘却の河/内核の波)

原題:「Shell」(邦題は「忘却の河」)

Naikaku(内核の波)


Shell」(邦題は「忘却の河」)は日本のバンド「内核の波」(ないかくのわ:英語のバンド名は“Naikaku”)が2006年に発表したセカンドアルバムである。

完 全インストゥルメンタル・バンドだが、久しぶりにオリジナリティ豊かな、ヘヴィーサウンドを聴いた気がする。それも日本からこんなバンドが出てこようと は。確かにKBBとか高円寺百景とか、日本のプログレッシヴ・ロックのレベルの高さや勢いは、すでに世界でもトップクラスと言えるとは思っていたけれど。 それでもこれは凄い作品。

    小林 智:図画工作、映像、ベース
    鈴木 和美:フルート

<サポート>
    村岡 満男:ギター、トランペット
    吉田 真悟:ドラムス
<ゲスト>
    伏見螢:ギター
    高木大地:キーボード

編成からもわかるように、フロントに立つのはなんとフルートである。それも女性。ところがリーダーがベースであることもあってか、サウンドはクリムゾン級のヘヴィーロックだ。

フルートはクラシック的な美しく端正な音を奏でるだけではなく、むしろ和楽器に近い自由奔放な演奏で独自のオリジナリティを放つ場面が多 い。アパチュア(唇の隙間)とフルートの歌口のエッジとの間隔を自由に操作して、噪音を多く取り入れたブレス・トーン気味の厚みのある音を使い、非常に和 の世界、幽玄な世界を感じさせるのである。

独特なタンギング奏法や、横笛や尺八を思わせる奏法は、ジェスロ・タルやその影響かにあったあまたのバンドにおけるトーキング・フルート(発声奏法)とは異なる。あくまで楽器としてのフルートの音のヴァリエーションを確かなテクニックで聴かせるのだ。

このフルートがテクニカルなギターと渡り合う。速弾きフレーズがギターとフルートのユニゾンであることも珍しくない。唯一減衰音系ではない楽器ということもあり、キーボード的にバックで鳴ることもあるが、基本的にどんどん前に出てくる。


(写真は「naikaku official myspace」より)

そ してそれだけでもオリジナリティ豊かなのに、さらにギターの切れは素晴らしいし、ボトムのリズム隊も重く表現力豊かだ。フロント楽器がフルートというかな り高音な音のためか、ギターに加えベースも、かなり中間部まで含めた広範囲な動きをする。そのあたりも個性的だ。ドラムスも的確かつ変幻自在なプレーが心 地よい。

全体としての音は“ヘヴィーメタル”ではなく“テクニカル・ハードロック”である。所々に挿入されるエレクトロニクスの効果音もいい。そのあたりが70年代のパワフルで重いハードロック、プログレッシヴ・ロックの息吹きを感じさせてくれるのだ。

ライヴ映像を観る限り、ステージもハチャメチャで凄そうである。現在はギター、ドラムスを正式メンバーに加えた4人編成に、サポート&ゲストを加えてライヴ活動を行っている模様。

基本を“プログレッシヴ・ロック”ではなく“ハードロック”に置いたインスト・バンドであるところに、妖しくテクニカルなフルートが作り出す独自のサウンド。日本が世界に誇れる傑作。ちなみに「内核の波」は三角形の“内角の和”から来ているらしい。

なおアルバムiTunesからダウンロード、またはMusicTermで購入できる。