エマーソン,レイク&パーマーの最高作と言われる「恐怖の頭脳改革」は原題を「Brain Salad Surgery」と言う。そのまま訳する「脳みそサラダ外科治療」。
英語版Wikipediaによると、1996年のアルバム再発の際のリリースノートに、タイトルが決まるいきさつについて書かれているという。それによれば、当時のマンティコア・レーベル社長のマリオ・メディウスが、ドクター・ジョン(Dr. John)の1973年のヒット曲「Right Place Wrong Time」にある、スラングの歌詞から拝借したのだとのこと。
そしてアルバム製作中の仮タイトルは「Whip Some Skull on Ye」だったとか。そして驚いたことに英語版Wikipediaによれば、どちらも「性的なスラングでfellatio」を指すというのだ。
これには少々頭を抱えてしまった。
いや、タイトルが性的な意味を持つこと自体は別にいいのだ。
気になるのは、「Brain Salad Surgery」が、なぜそういう意味になるんだろうっていうことだった。
プログレアルバム紹介で取り上げたこともあって、実はずっと気になっていたのだ。とても有名で完成度の高いアルバムだけに、タイトルもうまく自分の中に落ちてくれないと心地悪いのだ。
例えばピンク・フロイドの「狂気」は原題が「The Dark Side of the Moon(月の裏側、月の暗い部分」であり、アルバム中に「Brain Damage」という曲も含まれていることから、「狂気」という邦題もある意味オリジナルタイトルと重なると言える。
あるいはまたイエスの「危機」も原題は「Close to the Edge(縁 の近く)」だが、「edge」は縁や輪郭の線が鋭い感じのする単語であり、安定した場所から不安定な場所へ移り変わる最後の一線のようなピリピリしたイ メージを持っている。そうした「edge」の近く、あるいは「edge」へ近づくということに対する「危機」という邦題は、まさしくピッタリくる名訳だと 思う。
こうやってストンと自分の中に落ちてくれれば良いのだ。キング・クリムゾンの「In The Wake of Poseidon」 は「ポセイドンの跡を追って」であり、「ポセイドンの目覚め」は誤訳だ。でもきっと「wake=目覚め」と思い込んでしまったんだろうということで理解が できる。セバスチャン・ハーディーの「Four Moments」を「哀愁の南十字星」とするような、イメージだけで邦題を作っちゃうっていうのも、それはそれで楽しい。
そこで「恐怖の頭脳改革」である。スラングにも何かしら、その意味するものを連想させるイメージがあるはずだ。
まず仮のタイトルである「Whip Some Skull on Ye」の方から見ると「whip(鞭打つ、かき混ぜる」、「skull(頭蓋骨=頭)」、「Ye」は「You(あなた)」だから、「あなたの上で頭をかき混ぜる」となる。命令文なら「かき混ぜろ」だな。
「some」は言葉のリズムを整える上で使われた意味のない単語かもしれないし、「get some」で「sex相手としていい子を見つける、ものにする」という意味があることから、「sexの相手」としてもいいかも。
つまり「相手の女の子の頭をお前にくっつけてかき混ぜるように(鞭打つように)動かせ」ってことだ。これならスラングの意味も想像がつく。
さてでは「Brain Salad Surgery」はどうか。
「brain」は「脳みそ」である。「salad」は「サラダ」あるいは「混合物」という意味もある。「surgery」は「手術、外科治療」ということだが、内科的な治療ではなく、直接触って治療するという点に意味があるように思う。
つまり「脳みそがグチャグチャにかき混ざるような、直接的に相手を治療する行為」ということか。こう考えてみると大分スラングの意味に近づいた感じがする。「brain salad」は「whip some skull」と同じように、一心不乱に頭を動かす行為をイメージさせるわけだ。
実際、ギーガーが描くフロントカバーは、最初に描かれたものでは、下部に配置されたEL&Pのロゴから円内の女性のあご下にかけてphallusが描かれているように見えたことから、レコード会社から修正するようクレームがついたという(同Wikipediaより)。そう言われて良く見れば、“なごり”らしきモノが見えないでもない(右上ジャケット)。奇怪なジャケットではあるが、アルバムタイトルのスラング的意味合いを反映させていたと言うことか。
ということで「恐怖の頭脳改革」という邦題は、残念ながらオリジナルタイトルの意味からはほど遠いことがわかった。しかしだからと言ってオリジナルタイトル の持つスラング的意味合いを出すことは実際にはできないわけで、そうした点から言えばむしろ「brain」と「surgery」だけで見事にインパクトあ る邦題を作り上げたと言えよう。これもまた名訳である。
いやぁ、今回はちょっとHな話題を真剣に考えてしまった。
まぁよろしよろし。
英語版Wikipediaによると、1996年のアルバム再発の際のリリースノートに、タイトルが決まるいきさつについて書かれているという。それによれば、当時のマンティコア・レーベル社長のマリオ・メディウスが、ドクター・ジョン(Dr. John)の1973年のヒット曲「Right Place Wrong Time」にある、スラングの歌詞から拝借したのだとのこと。
そしてアルバム製作中の仮タイトルは「Whip Some Skull on Ye」だったとか。そして驚いたことに英語版Wikipediaによれば、どちらも「性的なスラングでfellatio」を指すというのだ。
これには少々頭を抱えてしまった。
いや、タイトルが性的な意味を持つこと自体は別にいいのだ。
気になるのは、「Brain Salad Surgery」が、なぜそういう意味になるんだろうっていうことだった。
プログレアルバム紹介で取り上げたこともあって、実はずっと気になっていたのだ。とても有名で完成度の高いアルバムだけに、タイトルもうまく自分の中に落ちてくれないと心地悪いのだ。
例えばピンク・フロイドの「狂気」は原題が「The Dark Side of the Moon(月の裏側、月の暗い部分」であり、アルバム中に「Brain Damage」という曲も含まれていることから、「狂気」という邦題もある意味オリジナルタイトルと重なると言える。
あるいはまたイエスの「危機」も原題は「Close to the Edge(縁 の近く)」だが、「edge」は縁や輪郭の線が鋭い感じのする単語であり、安定した場所から不安定な場所へ移り変わる最後の一線のようなピリピリしたイ メージを持っている。そうした「edge」の近く、あるいは「edge」へ近づくということに対する「危機」という邦題は、まさしくピッタリくる名訳だと 思う。
こうやってストンと自分の中に落ちてくれれば良いのだ。キング・クリムゾンの「In The Wake of Poseidon」 は「ポセイドンの跡を追って」であり、「ポセイドンの目覚め」は誤訳だ。でもきっと「wake=目覚め」と思い込んでしまったんだろうということで理解が できる。セバスチャン・ハーディーの「Four Moments」を「哀愁の南十字星」とするような、イメージだけで邦題を作っちゃうっていうのも、それはそれで楽しい。
そこで「恐怖の頭脳改革」である。スラングにも何かしら、その意味するものを連想させるイメージがあるはずだ。
まず仮のタイトルである「Whip Some Skull on Ye」の方から見ると「whip(鞭打つ、かき混ぜる」、「skull(頭蓋骨=頭)」、「Ye」は「You(あなた)」だから、「あなたの上で頭をかき混ぜる」となる。命令文なら「かき混ぜろ」だな。
「some」は言葉のリズムを整える上で使われた意味のない単語かもしれないし、「get some」で「sex相手としていい子を見つける、ものにする」という意味があることから、「sexの相手」としてもいいかも。
つまり「相手の女の子の頭をお前にくっつけてかき混ぜるように(鞭打つように)動かせ」ってことだ。これならスラングの意味も想像がつく。
さてでは「Brain Salad Surgery」はどうか。
「brain」は「脳みそ」である。「salad」は「サラダ」あるいは「混合物」という意味もある。「surgery」は「手術、外科治療」ということだが、内科的な治療ではなく、直接触って治療するという点に意味があるように思う。
つまり「脳みそがグチャグチャにかき混ざるような、直接的に相手を治療する行為」ということか。こう考えてみると大分スラングの意味に近づいた感じがする。「brain salad」は「whip some skull」と同じように、一心不乱に頭を動かす行為をイメージさせるわけだ。
実際、ギーガーが描くフロントカバーは、最初に描かれたものでは、下部に配置されたEL&Pのロゴから円内の女性のあご下にかけてphallusが描かれているように見えたことから、レコード会社から修正するようクレームがついたという(同Wikipediaより)。そう言われて良く見れば、“なごり”らしきモノが見えないでもない(右上ジャケット)。奇怪なジャケットではあるが、アルバムタイトルのスラング的意味合いを反映させていたと言うことか。
ということで「恐怖の頭脳改革」という邦題は、残念ながらオリジナルタイトルの意味からはほど遠いことがわかった。しかしだからと言ってオリジナルタイトル の持つスラング的意味合いを出すことは実際にはできないわけで、そうした点から言えばむしろ「brain」と「surgery」だけで見事にインパクトあ る邦題を作り上げたと言えよう。これもまた名訳である。
いやぁ、今回はちょっとHな話題を真剣に考えてしまった。
まぁよろしよろし。