原題:Windows
タイ・フォン(Thai Phong)
「ウィンドウズ(Windows)」はフランスのタイ・フォン(Tai Phong)が1976年に発表した2ndアルバム。約3週間で作り上げたと言われる傑作1stアルバム「恐るべき静寂(TAI PHONG)」の成功、特に「Sister Jane」のシングルヒットを受け、時間をかけて丁寧に作り込んだ見事な作品である。
KHANH:ボーカル、ギター
TAI:ボーカル、ベース、アコースティック・ギター、ムーグ
J.J.GOLDMAN:ボーカル、ギター
Jean-Alain GARDET:キーボード
Stephan CAUSSARIEU:ドラムス、パーカッション
まず気づかされるのがタイトになったリズム。特にドラムスが全体に引き締まった演奏を聴かせる。そして重ねられた音が厚くなったこと。このあたりは1stに比べ、じっくり腰を据えてアルバム制作に取り組んだ成果ではないかと思う。
しかし本質的な魅力は微塵も変わらない。エレクトリック楽器とアコースティック楽器のバランスの良さ、甘く切ないメロディー、ハイトーンなボーカルを軸にした美しいハーモニー、泣きまくるギター。それらが一体となって夢見るような世界を描き出す。
メロディーが魅力的なのだが、安易にシングルヒットを狙ったような軽い曲は一曲も無い。切々と歌うボーカル、ドラマティックに胸に迫る音の波、そしてまたインス トゥルメンタル・パートの表現力の高さと、ボーカルとシームレスに繋がる曲の展開の妙。
ちょっと聴くと素朴な印象すら受けるけれど、聴き込むほどに見事にバラン スが取れた各楽器のコンビネーション。それも無理なく自然な流れ。
リズムがタイトになっても、音の厚みが増しても、決してテクニックに走ることもなく、「Sister Jane」のシングル・ヒットを受けても、決してポップスに日和ることも無い。そこにこのバンドの実力を見る思いがする。世界観とそこに向う思いが強固なのだ。
ドリーミーだがひ弱な音ではない。スタープレーヤーがいるタイプのバンドではない。華麗なソロで聴く者を圧倒させようという作風でもない。丁寧に丁寧に必要な音を重ねて、メンバー全員が作り上げた珠玉の作品。
CamelやPink FloydやGenesisなどが引き合いに出されやすいかもしれないけれど、実はそのどのバンドとも印象は異なる。それはメランコリック度が格段に高いことによるからと言えるかもしれない。
最終曲ではアルペジオをバックにアコースティック・ギターやドラムスがフリーフォームな演奏を繰り広げる。曲が終わると鳥の泣き声が響き渡る。おそらくメン バーが鳥の声を奏でる笛を全員で吹いているのだろう。一人が咳き込んで笑い声が響く。温かく幸せに満ちた雰囲気。まさに桃源郷に達した瞬間である。
1993年のCD付属のライナーノートによれば、Khanhは「Rock & Folk」誌のインタビューで次のように答えたという。
英語で歌いフランス的サウンドにこだわること無く、インターナショナルでプログレッシヴな音楽を求めていたことがわかるコメントだ。
そして出来上がったのは、一聴してのシンプルな印象とは異なり、他のどのバンドも到達できなかった緻密で甘美な究極の音。1stに劣らぬ傑作である。
「我々はフランス人のグループではない。フランス出身のグループであり、イギリスのYes、イタリアのP.F.M.、ギリシャにおけるAphrodite's Child等と同じジャンルの音楽を演奏している。」
英語で歌いフランス的サウンドにこだわること無く、インターナショナルでプログレッシヴな音楽を求めていたことがわかるコメントだ。
そして出来上がったのは、一聴してのシンプルな印象とは異なり、他のどのバンドも到達できなかった緻密で甘美な究極の音。1stに劣らぬ傑作である。
タイ・フォンはその後3rdアルバムを出して解散。しかし2000年に突如アルバム「Sun」を発表。そして2010年現在も、ギター&ボーカルのKhanh Maiを中心に活動を行なっている模様である。