原題:Warmth Of Earth(1985年)
Eduard Artemiev(エドゥアルド・アルテミエフ)
「Warmth Of Earth」(邦題は「ウォームス・オヴ・アース/地球のぬくもり」)は、旧ソビエト連邦屈指のロック・アーティストにして、映画音楽家でもあるEduard Artemiev(エドゥアルド・アルテミエフ)の1985年の作品。
映画音楽としてはスタニスワフ・レムの「ソラリスの陽のもとに」を映画化した「惑星ソラリス」や、アンドレイ・タルコフスキーの「ストーカー」などの作品を担当、さらに1980年のモスクワ・オリンピックのテーマ音楽を手がけるなど活動は多岐に渡る。
ソビエト文化大学教授、ソビエト電子音楽作曲家協会会長を歴任した、まさに旧ソビエトを代表する音楽家である。
本作はEduard Artemievが作曲を担当し、演奏はYu.Bagdanov(ユーリ・バグダノフ)率いるThe "Boomerang" Ensemble(ザ・ブーメラン・アンサンブル)というバンドが行い、Rozhdestvenskaya(ロジェトヴェンスカヤ)という女性が全体を通 してボーカルを取るという、作曲者と演奏者を分けたクラシック音楽的な作り方をされた作品。Eduard自身は演奏には関わっていない。
作詞はロシア極東の少数民族チュクチの代表的作家で、「クジラの消えた日」などの作品で有名なYuri Rytkheu(ユーリー・ルィトヘウ)。副題として「Vocal and Instrumental Suite to the lyrics by Yuri Rytkheu(Yuri Rytkheuの歌詞のための声楽と器楽による組曲)」とある。
当時の才能ある人たちを結集して、まさに国を代表する作曲家として欧米のプログレッシヴ・ロックに挑んだかのような、シンセサイザー・ヘヴィー・ロック組曲である。
Eduard Artemiev:作曲
Yuri Rytkheu:作詞
Jeanne Rozhdestvenskaya:ボーカル
<The "Boomerang" Ensemble>
Yu. Bogdanov:Synthy100、エレクトリック・ギター
アコースティック・ギター
A. Zakirov:ベース
S. Bogdanov:ドラムス
I. Len:キーボード
S. Saveliev:キーボード
ジャケットには「Synthy100」と記載されているが、これを「ソ連製シンセサイザー」と紹介されているCD評などがある。しかしソ連製シンセサイザーの中には見当たらない。
旧ソ連初のシンセサイザーと言われるANSシンセサイザーを用いていた時期はあるようだが、Synthy100がそうした旧ソ連製シンセサイザーに当たるかは不明だ。EMS Synthi 100と呼ばれるデジタル・シーケンサー付きの巨大なシンセサイザーの可能性もあるかと思う。実際ArtemievとBogdanovはEMS Synthi 100を使ったクラシックコンピレーションに曲を提供しているし。
このSynthi 100はElectric Music Studio社が開発し、アナログ・シンセサイザーの代表的メーカーであるムーグ(Moog)社製とは異なった音が得られると言われる。Pink Floydがアルバム「The Dark Side of the Moon(狂気)」で使用していることでも有名。
アルバムはこの爆発音のような導入部から一気にこの シンセサイザーを主体とする強烈なインストゥルメンタル・アンサンブルが炸裂する。何かに取り憑かれたかのような強烈なテンションで、ドラムが疾走し、シ ンセサイザーを中心にキーボードが動き回り、ギターが切り込んでくる。まさに度肝を抜かれる一曲だ。
演奏のThe "Boomerang" Ensembleは、個性的な演奏をするミュージシャン達というよりは、どちらかと言うと超一流のスタジオミュージシャンという感じで、各人の個性ではなく、そのアンサンブルの超絶さで曲を引っ張っていく。
そして続く曲からRozhdestvenskayaのボーカルが入る。このRozhdestvenskayaという女性が素晴らしい。とにかく歌が上手い。 そして声量、声域も十分にある。「美声女性ボーカル」というにはパワーがある。基本はクラシックなのだろうが、声楽臭さはなく、どんな歌を歌わせても聴く 者を引き込むだろう歌唱力を持っている。
2曲目「What Am I?」の可憐な歌声、「Bakkns」における迫力あるダミ声、ちょっとディスコティックな曲におけるポップスシンガー風な歌声。そのどれもが大きな包容 力に満ちている。そして時折聞こえるロシア風なメロディーの新鮮さ。もちろんロシア語のボーカルにもピッタリハマっている。
シンセサイ ザーが大活躍するスペイシーでヘヴィーな超絶インストゥルメンタルをバックに、ボーカルは一歩も引くことなく、変拍子を含む様々なタイプの曲が、ダイナ ミックに、そして繊細に雄大な世界を作り上げていく。その雄大さはどことなくブラジルのSagrado Coracao Da Terra(ザグラド・コラソン・ダ・テッラ)を思い起こさせる。ラスト曲は文字通り映画のラストシーンのように盛上がる。まさに大団円という感じだ。
ボーカルの表現力もあって、曲はどれも表情豊かで聴きやすいのも魅力。ボーカル曲とインストゥルメンタル曲との対比も見事だ。
1980年代のプログレッシヴ・ロックを代表する、旧ソ連からの衝撃の1枚。傑作。
なお、原盤LPではトラック9とトラック10は収録されておらず、1999年のMUSEA盤から追加収録された。
映画音楽としてはスタニスワフ・レムの「ソラリスの陽のもとに」を映画化した「惑星ソラリス」や、アンドレイ・タルコフスキーの「ストーカー」などの作品を担当、さらに1980年のモスクワ・オリンピックのテーマ音楽を手がけるなど活動は多岐に渡る。
ソビエト文化大学教授、ソビエト電子音楽作曲家協会会長を歴任した、まさに旧ソビエトを代表する音楽家である。
本作はEduard Artemievが作曲を担当し、演奏はYu.Bagdanov(ユーリ・バグダノフ)率いるThe "Boomerang" Ensemble(ザ・ブーメラン・アンサンブル)というバンドが行い、Rozhdestvenskaya(ロジェトヴェンスカヤ)という女性が全体を通 してボーカルを取るという、作曲者と演奏者を分けたクラシック音楽的な作り方をされた作品。Eduard自身は演奏には関わっていない。
作詞はロシア極東の少数民族チュクチの代表的作家で、「クジラの消えた日」などの作品で有名なYuri Rytkheu(ユーリー・ルィトヘウ)。副題として「Vocal and Instrumental Suite to the lyrics by Yuri Rytkheu(Yuri Rytkheuの歌詞のための声楽と器楽による組曲)」とある。
当時の才能ある人たちを結集して、まさに国を代表する作曲家として欧米のプログレッシヴ・ロックに挑んだかのような、シンセサイザー・ヘヴィー・ロック組曲である。
Eduard Artemiev:作曲
Yuri Rytkheu:作詞
Jeanne Rozhdestvenskaya:ボーカル
<The "Boomerang" Ensemble>
Yu. Bogdanov:Synthy100、エレクトリック・ギター
アコースティック・ギター
A. Zakirov:ベース
S. Bogdanov:ドラムス
I. Len:キーボード
S. Saveliev:キーボード
ジャケットには「Synthy100」と記載されているが、これを「ソ連製シンセサイザー」と紹介されているCD評などがある。しかしソ連製シンセサイザーの中には見当たらない。
旧ソ連初のシンセサイザーと言われるANSシンセサイザーを用いていた時期はあるようだが、Synthy100がそうした旧ソ連製シンセサイザーに当たるかは不明だ。EMS Synthi 100と呼ばれるデジタル・シーケンサー付きの巨大なシンセサイザーの可能性もあるかと思う。実際ArtemievとBogdanovはEMS Synthi 100を使ったクラシックコンピレーションに曲を提供しているし。
このSynthi 100はElectric Music Studio社が開発し、アナログ・シンセサイザーの代表的メーカーであるムーグ(Moog)社製とは異なった音が得られると言われる。Pink Floydがアルバム「The Dark Side of the Moon(狂気)」で使用していることでも有名。
アルバムはこの爆発音のような導入部から一気にこの シンセサイザーを主体とする強烈なインストゥルメンタル・アンサンブルが炸裂する。何かに取り憑かれたかのような強烈なテンションで、ドラムが疾走し、シ ンセサイザーを中心にキーボードが動き回り、ギターが切り込んでくる。まさに度肝を抜かれる一曲だ。
演奏のThe "Boomerang" Ensembleは、個性的な演奏をするミュージシャン達というよりは、どちらかと言うと超一流のスタジオミュージシャンという感じで、各人の個性ではなく、そのアンサンブルの超絶さで曲を引っ張っていく。
そして続く曲からRozhdestvenskayaのボーカルが入る。このRozhdestvenskayaという女性が素晴らしい。とにかく歌が上手い。 そして声量、声域も十分にある。「美声女性ボーカル」というにはパワーがある。基本はクラシックなのだろうが、声楽臭さはなく、どんな歌を歌わせても聴く 者を引き込むだろう歌唱力を持っている。
2曲目「What Am I?」の可憐な歌声、「Bakkns」における迫力あるダミ声、ちょっとディスコティックな曲におけるポップスシンガー風な歌声。そのどれもが大きな包容 力に満ちている。そして時折聞こえるロシア風なメロディーの新鮮さ。もちろんロシア語のボーカルにもピッタリハマっている。
シンセサイ ザーが大活躍するスペイシーでヘヴィーな超絶インストゥルメンタルをバックに、ボーカルは一歩も引くことなく、変拍子を含む様々なタイプの曲が、ダイナ ミックに、そして繊細に雄大な世界を作り上げていく。その雄大さはどことなくブラジルのSagrado Coracao Da Terra(ザグラド・コラソン・ダ・テッラ)を思い起こさせる。ラスト曲は文字通り映画のラストシーンのように盛上がる。まさに大団円という感じだ。
ボーカルの表現力もあって、曲はどれも表情豊かで聴きやすいのも魅力。ボーカル曲とインストゥルメンタル曲との対比も見事だ。
1980年代のプログレッシヴ・ロックを代表する、旧ソ連からの衝撃の1枚。傑作。
なお、原盤LPではトラック9とトラック10は収録されておらず、1999年のMUSEA盤から追加収録された。