2009年8月29日土曜日

「幻惑のスーパーライヴ」ジェネシス

原題:Seconds Out(1977年)

Genesis(ジェネシス)


Seconds Out」(邦題「幻惑のスーパーライヴ」)は1977年にGenesis(ジェネシス)が発表したライブアルバム。すでにリード・ボーカルであったPeter Gabriel(ピーター・ガブリエル)は脱退した1976年、1977年のパリ公演を収めたCD2枚組だ。

Peter在籍時は彼の奇抜な衣装やステージでの演技がGenesisのライヴでの大きな特徴だったが、この時期はコンピュータ制御の“ヴァリ・ライト”と呼ばれる照明システムにより、光の洪水による壮大な演出が話題を呼んでいた。

Tony Banks:エレクトリック・ピアノ、ハモンド・オルガン、
メロトロン、アープ・シンセサイザー、12弦ギター、
バッキング・ボーカル
Mike Rutherford:12弦ギター、ベース、8弦ベース、ムーグ・ベース、
バッキング・ボーカル
Steve Hackett:ギター、12弦ギター
Phil Collins:ボーカル、ドラムス
<サポート>
Chester Thompson:ドラムス
Bill Bruford:ドラムス

全12曲、Peter Gabriel期の曲がそのうち7曲を占め、名曲「サパース・レディ(Supper's Ready)も全収録。今作をもってギターのSteveが脱退し、Genesisは次第にポップ色を増して行くことを考えると、プログレッシヴ・ロック期 のGenesisの集大成とも言える。

内容的にも素晴らしいの一言。基本的にはドラムスは、元Weather Report(ウェザー・リポート)、Frank Zappa(フランク・ザッパ)バンドなどで活躍していたChester Thompsonが叩き、Phil Collins(フィル・コリンズ)はボーカルに専念。

しかし長めのインストゥルメンタル・パートになると後ろに飛んで行ってツイン・ドラムになるところも聴き所。一曲「Cinema Show(シネマ・ショー)」だけBill Brufordとのツイン・ドラムも聴ける。極上の瞬間だ。

全体的にPeterのクセのある妖し気でケレン味を含んだボーカルスタイルと、Philの甘く表情豊かなボーカルスタイルは異なる。声質や歌い方が似てい るからGenesisはPeterが脱退しても大きなイメージ的変化がなかったように思えるが、「Foxtrot(フォックストロット)」などと聴き比べ ると大きな違いがわかる。

Philの耳ざわりの良い声、そしてのちにソロデビューするほどの歌の上手さによって、Peter在籍時にあった毒気のようなものがなくなっている。その代わりボーカル曲として“聴かせる”のだ。曲全体の印象はソフトになった。

さらに「月影の騎士(Selling England by the Pound)」以来積極的にシンセサイザーを使うようになりによる厚みのあるキーボードサウンドを作り出すTony Banks、独特のノビのある魅惑的なギターワークを見せるSteve Hackett、そしてベースにギターにと大活躍するMike Rutherford(マイク・ラザフォード)という鉄壁の布陣が、雄大で心地よいインストゥルメンタル・アンサンブルを紡ぎ出す。

Phil以外の3人とも12弦ギターを弾くくらいだから、ギターのアルペジオがいたるところで聴けるのもGenesis的である。

そしてこの不思議で不気味だったGenesisから、雄大で美しいシンフォニックなサウンドに変化したGenesisを、さらに大きなグルーヴで盛り上げるのがChester Thompsonのドラミングだ。

彼のテクニカルながらタメの効いたドラミングが、曲をよりドラマティックにする。時折見せるPhilとのツイン・ドラムもスリリングだが、Philの Brand X的な攻撃的なドラミングとの違いが面白い。一曲だけ叩いているBill Brufordのドラミングが、今ひとつこの時期の雄大な曲調に溶け込んでないのと対照的だ。

しかしBillもインスト・パートに入ると同時に待ってましたとばかりにパワー全開、「Cinema Show」の7/8拍子のキーボードソロパートでは、Philとのツイン・ドラムとなり、両者テクニカルな演奏をぶつけ合うようなバトルが聴けるのも、このアルバムならでは。

全編まったくスキなし。Peter在籍時の“怪奇音楽骨董箱”的音楽からは遠ざかったが、後に多数現れる凡百の“Genesisタイプのバンド”が、どうあがいても太刀打ちできない、英国シンフォニック・ロックの頂点の一つ。大傑作。


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