2009年6月7日日曜日

「内視鏡世界」

内視鏡世界(2005年)

五人一首


内視鏡世界」 は日本のバンド五人一首(ごにんいっしゅ)の2005年のセカンド・アルバムである。「CD」のコピーに『デスサウンドとプログレッシヴロックの融合』と ある。実際、このバンドの音は凄い。こんなに様々な要素が入り混じりながら、強い個性を作り上げ、自信に満ちた音を聴かせてくれるバンドは珍しいのではな いかと思うほど。

 松岡あの字:ボーカル、喉、ギター
 有賀高野山:ベース
 百田真史 :ピアノ、シンセサイザー
 高橋史男 :ギター


まずボーカルが女性である。もともと松岡は女性スラッシュ・メタル・バンドのギター担当だった。従って彼女のギターも重要な役割を果たしている。彼女自身のデスメタル志向が、このバンドにクリーン・ボイスとデス・ボイスを使い分けるという独特な特徴を持ち込む。

女 性のデス・ボイス。走り屋のレディースが啖呵をきっているような低音でのうなり声には、さすがに最初はちょっと違和感があった。しかし次第に五人一首の世 界に魅き込まれていくと、これが妖しくどろどろとした世界に合っているのだ。異形の世界へ引きずり込まれる感じ。怨念じみたモノが伝わってくる。

クリーン・ボイスはあくまで美しく、さらに多重録音でのハーモニーまで聴かせる。そこからいきなりデス・ボイスとくると、もう地獄と天国を行き来しているような酩酊感、陶酔感が生まれる。

歌 詞は全て日本語、それも難解な言葉を使っているところは「人間椅子」を思わせるかもしれないが、「人間椅子」が基本的にハードロックにこだわっているのに 対し、五人一首はインストゥルメンタルも強力なプログレメタル、テクニカルプログレといったプレイだ。Dream Theaterのような構築生の高い楽曲を超絶アンサンブルで演奏していく。アルバムで出しからいきなり高度なインストパートのイントロを聴かせる。

キーボードの百田はもともとDream Theaterタイプの音を目指したバンドを組んでいた。だからバンド・アンサンブルに対しても百田は次のように述べている。

「基本的にはソロはその人、そのパートのショウ・タイムじゃなくて、曲の中の一部のパートっていう位置づけで全部やりたかったんですよね。」(「Euro-Rock Press vol.26」マーキー・インコーポレイティド、2005年)

さらに特徴的なのが、そのギター2本、キーボードというリード楽器の中で、ピアノの占める割合が高いことが上げられる。このアコースティック音が、松岡の変幻自在なボーカルと不気味な歌詞と相まって、日本的闇の世界を作り上げる。

し かし基本的にアンサンブルはテクニカルで、疾走感あふれるプレイが多いため、どろどろな世界にはまり込みすぎない。そこがイメージ先行のバンドと違う、確 かな実力を感じさせるところなのだ。実際に、曲の作り込みはハンパではない。ラスト曲「赫い記憶」は19分を越える大作。構築生の完成度も高い。リズム隊 の安定感も抜群だ。

しかしそこにボーカルと生ピアノが入ることで、構築され過ぎることで無意味な超絶アンサンブル大会に陥りがちな世界を壊し、押し広げ、生々しい値肉を曲に与えていると言える。

アンサンブルを聴いてもらいたいかな。ギター2本とピアノとベースとドラム。一個一個がそのパートだけ引っこ抜いたら、その曲には聴こえないようなほど複雑なアレンジをやってるんで、そこを聴いて欲しいですね。(百田)」(同上)

デス声が好き嫌いを分けるとは思うが、ここには男性では表現できない世界を感じる。アンサンブルは世界レベル、そして超カッコイイ。唯一無二。傑作。早くサード・アルバムが聴きたい。


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