2009年6月12日金曜日

「アイランズ」

Islands (1971年)

King Crimson(キング・クリムゾン)


Islands」(邦題は「アイランズ」)は、射手座三裂星雲の写真をジャケットにたKing Crimson4枚目の作品。発売は1971年。

前作「Lizard(リザード)」が、ギターのRobert Frippと作詞のPeter Sinfieldのオリジナルメンバー2人を中心としたプロジェクト的な色合いが強かったのに対し、このアルバムは、依然として多数のゲスミュージシャンの参加を得ながらも、バンドとしてのまとまりある作品となっている。

しかしながら、ジャケットが物語るかのように、1st2ndアルバムで見られたような雄大でシンフォニックな曲も、前作で見られたジャズとクラシックが混在するような大曲も含まれておらず、かと言ってその後の、インプロヴィゼーションを大胆に取込んだ音楽にも至っていない、独特なサウンドを持つアルバムである。Crimsonのアルバムの中で一番Crimson的でないようでありながら、Crimsonでなければ作り得なかったアルバムとも言える。

目につくのは、フリーミュージックからの影響から、 Robert Frippが再びギターを積極的に魅き始めたこと、そしてこれを最後にバンドを去ることになるPeter Sinfield色が詞、曲ともに濃厚であること。両者の向いている方向は相容れない。しかしその両方の魅力が奇跡的に一つにまとまったのがこのアルバムである。

 Robert Fripp:ギター、メロトロン
 Mel Collins:フルート、サックス、ボーカル
 Boz:ベース、ボーカル
 Ian Wallace:ドラムス、パーカッション、ボーカル
<ゲスト>
 Keith Tippet:ピアノ
 Robin Miller:オーボエ
 Mark Charing:コルネット
 Harry Miller:ストリング・ベース
 Paulina Lucas:ソプラノボイス

冒頭の曲「Formentera Lady」は、フルートやピアノが自由に動き回るフリーな演奏からストリングベースの刻むリズムに乗ってBoz(ボズ・バレル)の甘いボーカルが始まる。美しく物悲しいメロディーと東洋的な不思議な旋律が耳に残る。

ボー カルは1stの「I Talk To The Wind」や、2ndの「Cadence And Cascade」を彷彿とさせるが、ボーカルが止むと同時に始まる「Sailor's Tale」では、サックス、多様なパーカション、本物のストリングスとソプラノ・ボイスなどが繰り広げるフリーな演奏部分が、それらの曲と大きく異なる 「Lizard」的な世界を作り上げる。生々しく妖しい。

そして曲は切れ目なしでシンバルのリズム変化を合図に「Sailor's Tale」後半は、演奏が一転し、硬質なバンド演奏が繰り広げられる。最初は金属的なFrippのギターとMelのサックスがリードを取るが、曲の中心は ギターとメロトロンに移行し、タイトなリズムの上を叩き付けるような荒々しいギターがフリーな演奏を繰り広げる。

疾走するリズムの上で次 第に厚みをまし冷たい響きを持って迫ってくるメロトロンは、かつてのシンフォニックなものとは異なり、むしろこの後の「Larks' Tongues In Aspic(太陽と戦慄)」以後を予感させる。Frippのギターと共にさらに新しいCrimsonへの萌芽を見て取れる曲だ。

次の曲「Letters」から、Peter Sinfield色が次第に濃くなっていく。「Letters」は静かなボーカル部分とフリーキーなインストゥルメンタルパートが混在する静と動の落差極 端さが魅力的な曲。歌詞も凄い。ねじれるようなFrippのギターが聴ける。

旧LPのB面は、とにかく最後の2曲に尽きる。 「Prelude: Songs Of The Gulls」のオーボエとストリングスによるオリジナル室内楽。まさにスコア化されたクラシックのような気品ある曲。美しい調べと安らかな雰囲気はそのまま最後の曲「Islands」への序曲のようだ。

その「Island」は、Peter Sinfieldの詩的世界が究極の美的世界を作り出した名曲。ボーカルはささやくように歌い、フルート、オーボエ、コルネット、そして教会用のハーモニウムが、曲の持つ悲しさ、優しさ、美しさを表現していく。

そして歌詞。曲調と相まって、何とも言えない切なさが迫ってくる。孤独な「私」は、「愛」を信じて、流れに身を任せ運命に従うように自分を解き放とうとしながら、一方で不安や希望が入り乱れた感情も顔をのぞかせる。ある種、レクイエムのような荘厳さがある。

低音でなり続けるハーモニウム、自由に動き回るピアノ、甘いボーカル、先生なオーボエ、そして最後をフリーに彩るコルネット、そして次第に全てを包み込んでいくメロトロン。とにかく美しい。無闇に甘くなりすぎない抑制された上品な美しさが、悲しみを一層盛り上げる。

ジャ ズ・インプロヴィゼーション志向が強くなった「Lizard」から、ジャズ色を残しながら、再び叙情性を取り戻し、力強さと美しさ、フリーなアドリブと構 築的な構成の両端を絶妙なバランスでブレンドし、個人のプレーよりも楽曲の良さ、敢えて言うならPeter Sinfieldの思いにすべてを託した名曲「Islands」で全てを締めくくった傑作。

Frippのギターが再び自己主張をし始め、 Crimsonの次の展開への布石にもなった一枚。Crimsonのアルバムの中ではちょっと異色な位置にあって評価の分かれる作品なのだが、わたしに とっては愛聴盤の一つ。ある面、現在のCrimsonよりも雑多な魅力にあふれている。


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