2009年6月11日木曜日

「リザード」

Lizard(1970年)

King Crimson(キング・クリムゾン)


Lizard」(邦題は「リザード」)は、King Crimson1970年に発表した第3作目のアルバムである。ファーストアルバムが1969年衝撃的に登場して間もなく、バンドは解散の危機に陥る。

それでも翌
1970年には英国フリー・ジャズ界のKeith Tippett(キース・ティペット)やMel Collins(メル・コリンズ)らの協力を得て「In The Wake Of Poseidon(ポセイドンのめざめ)」を発表、さらに同年、ギターのRobert Fripp(ロバート・フリップ)と作詞のPeter Sinfield(ピート・シンフィールド)以外のオリジナルメンバーが全てバンドを去るが、ジャズ界からの力をより多く得ることで作り上げた作品がこの「Lizard」だ。

 
Robert Fripp:ギター、キーボード
 
Mel Colins:フルート、サックス
 
Andy McCulloch:ドラムス
 
Gorden Haskell:ベース、ボーカル
 
Peter Sinfield:歌詞、イラスト
<ゲスト>

 
Robin Miller:オーボエ、イングリッシュホルン
 
Mark Charing:コルネット
 
Nick Evans:トロンボーン
 
Keith Tippett:ピアノ、エレクトリックピアノ
 
Jon Anderson:ボーカル

Robert Frippは構想としてKeith Tippettをメンバーに引き入れて新しいバンドによる新しいサウンドを目指そうとしていた。Keithのフリー・ジャズ、フリー・インプロヴィゼー ションの可能性に強く惹かれていたからだ。しかしセカンドアルバム「In The Wake Of Poseidon」は、内容的にファースト・アルバムを踏襲する構成であり、アルバムとしての完成度は依然高水準を維持していたものの、新しい試みを十分 に発揮できたとは言いがたかった。

しかしプレイヤーとしては、オリジナルメンバーとして一人残されたかたちとなったRobert Frippは、逆に過去のしがらみがない分、このアルバムで大 胆にフリージャズ的要素を取り込んだ新しいCrimsonミュージックを作り上げた。1曲目の「Cirkus including Entry of the Chameleons」から、激しいアコースティックギター(珍しい!)、サックスソロ、メロトロン、管楽器、そして手数の多いAndy McCullochのドラムスが、これまでと異なったジャズ的な迫力を生んでいる。


そしてなによりも旧LPのB面全てを費やした組曲「Lizard」が圧巻。いきなりYesのJon Andersonの歌から始まる。やっぱりこの人は歌が上手いなぁ。メロディーもいい。これでもうグッと魅き込まれてしまう。

そ して前半の大きな特徴はAndyの叩くボレロのリズム。ドラムスというよりクラシックオーケストラのパーカッションのように、このボレロのリズムが通奏低 音のように鳴り続ける。この緊張感を引き出すリズムの上で、コルネット、オーボエ、ピアノ、メロトロンが、ジャズかと思うとクラシック、かと思うとバック でKeith Tippettがジャズ・インプロヴィゼーション風にピアノを弾きまくっている。即興と作曲された音楽との融合、前半最後にオーボエが引き戻すクラシカル な瞬間の美しさは特筆ものだ。

Gorden Haskell静 かなボーカルをはさんで、後半はロック色が強くなる。Andyのスネアロールを多用するジャージーながら力強いドラミングに、木管、金管楽器、メロトロン が絡み、異様なインストゥルメンタル世界が展開されていく。厚いブラスのユニゾンが1、2枚目の荒々しいCrimisonを思わせる場面もある。そしてラ スト、ゆったりとしたリズムの上でFrippのギターソロが歌い、それが消えると遊園地のようなSE風サウンドで曲は終わる。

ジャ ズロックでもシンフォニックロックでもない。70年代のKing Crimsonのメタリックなロックでも破壊的なインプロヴィゼーションとも違う。1969年から1974年までのKing Crimsonの作品で、なぜか唯一中々手を出せなかったアルバムだった。一聴した印象もそれほど強くなかった。しかし聴き続けてみ次第に凄さがわかって きた。特にタイトル曲「Lizard」。こんな音楽は聴いたことがない。Crimsonの音楽の中でも異色だろうけれど、Crimsonだからこそ作り得 た音だろう。

ここにしかない音楽。傑作。



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