2009年6月24日水曜日

「月夜の幻想曲(ファンタジア)」

Moonmadness (1976年)

Camel(キャメル)


Moonmadness(月夜の幻想曲)」は、イギリスの叙情派プログレッシヴ・ロックバンドの雄であるCamel(キャメル)が、1976年に発表した第4作目のアルバムである。

4人のオリジナルメンバーが、前作「Snow Goose」の成功に自信を得て、気負わずに独自のファンタジックな世界を作り上げた、Camelのオリジナリティーが頂点に達する作品である。

 
Doug Ferguson:ベース、ボーカル
 
Andy Ward:ドラム、パーカッション、ボイス
 
Peter Berdens:キーボード、ボーカル
 
Andy Latimer:ギター、フルート、リコーダー、ボーカル

Camel
の評価を決定づけたのは前作「Snow Goose」(1975)の成功によるもので、英国「メロディーメーカー」誌の1975年度の国内、国際両部門で、ブライテスト・ホープ(最も期待される新人)に選ばれている。

オリジナルメンバーによるCamelの魅力は、一つには「Snow Goose」に見られる非情に豊かなインストゥルメンタル面での表現力がある。その大きな特徴は、テクニカルに走らないという点だ。

現在も存続しているCamelがAndy LatimerのギターがあるためにCamelであり続けることができるように、ま
ずギターの感情表現がずば抜けている。ブルースを基調にはしているが、その音色、メロディー、情感の込め方すべてにおいて秀でていて、ハードな曲にもソフトな曲にも対応できる柔軟さもある。加えて彼のフルートも大きなCamelの魅力だ。

さらに
Peter Berdensのキーボードが、ギターと互角にCamelサウンドを支えている。Peterの 特徴はエレクトリックピアノ、オルガン、ムーグ、ストリング・アンサンブルなど多彩なキーボードの音色をとても活かして曲に広がりを持たせるところと、ギ ターとハモったり、ユニゾンになったり、体位旋律を奏でたりと、ギターと絡んでアンサンブルの美しさを作り出す部分。したがってオルガンやシンセサイザー は、ソロでテクニカルに聴き手を惹きつけるよりは、的確なバッキングや美しいメロディーを奏でることを主とする。

反面、リードボーカルがいないという弱みもある。しかしそこは
4人がそれぞれの持ち味を出して、ボーカル(一部スキャット)を分け合いカバーしている。そして逆にボーカルに強烈な個性を持たないところが、Camelの多彩なインストゥルメンタルによる幻想的な魅力の印象を強めることにつながっている。

さてこの「
Moonmadness」であろう。全7曲中ボーカル曲は4曲。透明感あふれるキーボードが印象的なインスト「Arisuttilus(アリストティラスへの誘い)」から Camelの幻想世界に魅き込まれていく。「Song Within A Song」もエレピやオルガンのキーボード類が全体のイメージを作り、フルートが美しい彩りを加え、イコライジングされたDoug Fergusonのボーカルが、神秘的な歌詞を歌う前半。そして一転して夢の世界を飛び続けるようなジャズロック風な後半。多彩なシンバルワークも光る。ギターはバックに徹している。逆に次の「Chord Change」ではギターが前半では気持ちよく疾走し、中盤では「Snow Goose」を思わせる甘いメロディーを聴かせる。繊細な音使いがすばらしい。

このようにジャズやフュージョンにも対応できるAndyのギターを、Peterのキーボードがメロディー豊かなアンサンブル方向へ引っ張り続けたことで、曲の聴き易さやイマジネーションを刺激するサウンド、そして本作での幻想性豊かな世界を生むことができたのだと思う

全曲高水準だし、「
Luna Sea」後半で5拍子のオルガンのバッキングで弾きまくるAndyのギターなど、いかにもCamelらしい魅力にあふれているが、白眉はひたすら美しい「Air Born」か。

この作品をもってベースの
Doug Fergusonが脱退し、Caravanのボーカル&ベースであったRichard Shinclarが加入する。ボーカルとベースが安定するが、カンタベリー色やジャズ・フュージョン色が強まり、Peterのメロディーを重視したプレイより、よりテクニカルなプレイが求められるようになっていく。以後「Luna Sea」のような、凍てつくような世界を見せてくれるキーボードの音色を活かした曲などはめっきり減ってしまう。

Camelらしさ、そしてAndeyPeterの双頭バンドらしさが余すところなく盛り込まれたオリジナルCamelによる傑作。

ちなみにオリジナル英国盤LPのジャケットは宇宙服を着たらくだ(Camel)が月面に立っているところ。現在のファンタジックなイラストは、見開きジャケットの内側に描かれていたものだった。このままだったらアルバムの良さが伝わらなかっただろう。ジャケット変更は実に賢明であった。

なおProgLyrics何曲か訳詞と解説を行っているのでご参照下さい。

2 件のコメント:

  1. 僕は初期のカンサスが好きです。
    アメリカのバンドなのにツインキーボードや、ヴァイオリンという編成がプログレのようでもあり、ツインギターという編成がハードロックバンドのようでもあるところがほかのバンドにはないところで気に入りました。
    また、その音楽性もアメリカらしからぬプログレッシヴな音世界でおどろかされました。
    とくにファンタジックな4thと大航海時代のような5thがお勧めです。
    ほかには、マニアックなジェントル・ジャイアントの1stやプログレ・ポップなエイジアも好きです。

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  2. hayasuさま

    コメントありがとうございます。カンサスはいいですね!特に「永遠の序曲」は名盤です。でも今はちょっと手に入りにくいのかもしれませんが、「カンサスライヴ 偉大なる聴衆へ(原題:Two for the Show)」も傑作です。演奏が熱い!
    ジェントル・ジャイアントも迷宮に誘われるような魅力的なバンドですね。特に初期の混沌とした感じも大きな魅力です。2ndの「アクワイアリング・ザ・テイスト」とかかなりヘンです。
    彼らもライヴ「プレイング・ザ・フール」という名盤を出していますが、できればDVDでライヴ映像をご覧になって見てください。楽器の持ち替えや複雑なアンサンブルを、飛び跳ねながら楽しそうに演奏している姿は驚きです

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