2009年6月14日日曜日

「アナベラス」ブブ

Anabelas(1978年)

BUBU(ブブ)


Anabelas」(邦題は「アナベラス」)は南米アルゼンチンのバンドであるBubu(ブブ)の唯一のアルバムである。1978年の作品だ。このバンドの特徴は、総勢8名という大所帯であるが、そこに「作曲&アレンジ」とだけクレジットされているメンバーが入っている点だ。

つまり初期のKing CrimsonがPeter Shinfield(ピート・シンフィールド)という、演奏自体には直接関わらない作詞&照明担当者をメンバーとしていたのと同じように、曲作り専任のメンバーがいるのだ。

あるいはmandalaband(マンダラバンド)のように、作曲者による曲がまず先にあって、それを演奏するためのメンバーが、プロジェクト的に集められたのかもしれない。

スタジオミュージシャン、あるいは他のバンドに所属していたミュージシャンを、この作品作りのために集めたと考えてもおかしくないほどに、非常に素晴らしい演奏が繰り広げられている。一聴してわかるように、メンバーのテクニックは申し分ない。

 Sergio Polizzi:ヴァイオリン
 Cecilia Tenconi:フルート
 Win Fortsman:サックス
 Petty Guelache:ボーカル、コーラス
 Eduardo Rogatti:ギター
 Edgardo "Fleke" Folino:ベース
 Eduardo "Polo" Corbella:ドラムス
 Daniel Andreoli:作曲、編曲

中 南米というとブラジルのSagrado Coração Da Terra(ザグラド・コラソン・ダ・テッラ)のような、ラテン的な、大らかでメロディアスなイメージを想像しがちかもしれないが、このBubuは違う。 イタリアで言えばOsanna(オザンナ)、イギリスで言えば初期King Crimsonの「クリムゾンキングの宮殿」〜「アイランド」期。「リザード」あたりに近いかも。

クラシックとジャズの要素を巧みに取り入れ、テクニカルな演奏と緻密なアンサンブルで作り上げた、暗くヘヴィーな作品である。19分、11分、9分の有無を言わせぬ自信に満ちた全3曲。

どれも大作であるが、スコア化されているかのように次々に楽器が絡み付いてくる曲展開は、全く緊張の緩む余地がない完成されたもの。かと言ってスコアに縛られているわけではなく、プレーヤーの気合いの入った演奏が、曲のダイナミックさと力強さを引き出す。

「El Cortejo De Un Dia Mamrillo」は、最初から重くシャープなリズムの上を、Robert Frippに似た音色のギターがうねる。サックスが、フルートが、フリージャズ風に暴れ回る。かと思うとヴァイオリンとフルートがクラシカルなハーモニー を奏でる。タイトなドラムと低音をうごめくベースが重さと暗さをさらに引き出す。

ロック、ジャズ的なパートをギターとサックス、クラシカ ルなパートをフルートとヴァイオリンという風に役割分担しているわけではない。ギターやサックスもジャズオーケストラのようなバックに回った堅実なプレイ も的確にこなすし、フルートやヴァイオリンもフリージャズ的な動きを見せる。

役割を交替させながら、終始全ての楽器が鳴っている、全員総攻撃状態で息つく間もなく最後まで突っ走る。時折見せる叙情的なアンサンブルも曲の大きな魅力だ。

「El Viaje De Anabelas」はボーカルが入る曲。インストゥルメンタル部分の比重が高いがブラスロック風。しかし後半に美しいヴァイオリンソロが入る。このクラ シック的な美しさか、ジャズ・ロック風な激しさか、次の瞬間にどちら側に曲調が触れるのか予測不能な緊張感が常に持続するのがこのバンドの特徴と言える。

ラスト「Suenos De Maniqui」は、1st、2nd期のKing Crimsonのハードな曲に、哀愁漂うボーカル(男性)パートを組み合わせたような曲。各プレーヤーに強烈な個性はないが、一丸となって突き進むダイナミズムが魅力だ。

Osanna に似ているとは言うものの、闇の情念を感じさせられるものとは異なり、個々の場面ではフリーキーなバートやフリーフォームなパートなど、アバンギャルドな展開がみられるが、全体を通して聴くと非常に端正な、聴き易い音である。

むしろ各楽器を複雑に絡め、ジャズ、クラシックをロックのフィールドで一体化させ た作曲の素晴らしさを感じる。パワフルな演奏だが統制の取れた絶妙なアンサンブルが光る一枚。ちょっと「渋さ知らズ」を思い出してしまった。傑作。


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