2009年6月26日金曜日

「フォール・オブ・ハイペリオン」

Fall Of Hyperion(1974年)

Robert John Godfrey(ロバート・ジョン・ゴッドフリィ)


Fall Of Hyperion」(邦題は「フォール・オブ・ハイペリオン) は、のちに英国 屈指のクラシカル・ロックバンドThe Enidを立ち上げるキーボード奏者Robert John Godfrey(ロバート・ジョン・ゴッドフリィ)が、1974年に発表したソロアルバムである。様々なプログレッシヴ・ロックが生まれた本家イギリスに おいても、極めてオリジナリティあふれるアルバムだ。その特異さはメンバー構成からもわかる。

 Robert John Godfrey:キーボード、作曲
 Christopher Lews:ボーカル、作詞
 Neil Tetlow:ベース
 Jim Scott:ギター

こ の4人のメンバーを核に、Nigel Mortonがハモンドオルガンで、Tristan FryとRonnie McCreaがパーカッションでサポートをしている。お気づきであろうか。そうなのだ、ドラマーがいないのである。つまりロックやジャズの基本となるビー トが刻まれないのだ。パーカッションは大活躍する。ただしそれはオーケストラ的な使われ方においてである。シンバル、スネアドラム、ティンパニーなどが、 シンフォニーを奏でるように、アルバムの随所で、曲をドラマティックに盛り上げる。リズムをキープするというより、装飾的な使われ方なのだ。

ではこの編成で曲はどのようなものになるのか。誤解を恐れずに言えば、クラシック歌曲に近い。そこにロック的なダイナミズムとクラシック的なキーボードインストゥルメンタルを詰め込み、シリアスな雰囲気も加えて、ジャンル分け不可能な音楽が作られたのだ。

Lews の少し陰のあるボーカルが表情豊かに歌い、ベースとティンパニーが低音部を固め、ギターがメロウなメロディーを入れてくる。しかし、主役はキーボードだ。 オーケストラの弦楽器パートをすべて置き換えたかのような、圧倒的なメロトロンの嵐。叙情的なメロディーが重層的に鳴らされる時の美しさ。 Anekdotenなどのヒリヒリするような音色とは異なり、雄大で包み込まれるような厚みと深みのある音だ。

後半ではGodfreyの 独断場で、美しいピアノソロやパイプオルガンソロも飛び出す。しかしどのプレイもテクニックを誇示するのではなく、あくまで優雅に繊細に、ロマンティック な世界を表現していく。このGodfreyの持っている非常にクラシカルなキーボードテクニックと作曲能力が、オーケストラ的なパーカッションの助けを借 りながらも、結果的にクラシックではない音楽、ロック的なパワーを持ち合わせた音楽になっているところが、本作の最大の魅力であろう。

それにはボーカルのお貢献度も高い。Lewsの安定感のある歌と個性的な声質はとても魅力的で、Godfeyと競作扱いか、2名バンド名義にしてもいいくらいの存在感を持っている。

こ の後結成されるThe Enidでは、弱いながらもドラムが入り、アルバムを出すごとに次第にリズムが強化されてロック色が濃くなっていくが、そういう意味でもまさに Godfreyの目指す音楽の原点であり、もっとも先鋭的にそのアイデアが実現された作品だと言える。メロトロンの含有量も含めて、他に類を見ない傑作。


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