2009/06/23

「スノーグース」

Snow Goose (1975年)

Camel(キャメル)


The Snow Goose」(邦題は「スノー・グース」)は、イギリスのバンドCamel(キャメル)が1975年に発表したサード・アルバム。ポール・ギャリコの同名の小説を音楽化したオールインストゥルメンタルのトータル・アルバム。

ポール・ギャリコと言えばパニック超大作「ポセイドン・アドベンチャー」の原作者として有名なのだが、「スノー・グース」は優しさと悲しみに溢れた短編。

 Andy Ward:ドラムス、ビブラフォン、パーカッション
 Doug Ferguson:ベース
 Peter Bardens:キーボード
 Andrew Latimer :ギター、フルート、ボーカル(スキャット)

Andy Latimarの表情豊かなギターとPeter Bardensの色彩感溢れるキーボードを中心に、叙情的なメロディーを絶妙なアンサンブルで奏でていたバンドであり、今のテクニカル偏重のバンドには決 して出せない味のあるインストゥルメンタルパートは、それ以前の作品でも光っていた。

しかし前2作ではボーカル曲も多く、全編インストゥルメンタルという構想は、彼らに取っては大きな冒険であったはず。サウンドトラックではない。物語そのものを音楽で表現するという試みなのだ。しかし見事に試みは成功している。

基 本的にメンバー4人での演奏が中心で、登場人物の生活や心情が描かれて行く。そこにオーケストラが自然に絡み、音に厚みと深みを加えて行く。アクロバ ティックなテクニックを披露するといったインストモノとは対極にあり、ギター、フルート、各種キーボード、細かなドラミング、そしてオーケストラが描き出 す情景や心情を味わうといったアルバムだ。

BGMのように聞き流すインストゥルメンタルではない。真剣に音楽に耳を傾け、音楽の作り出す世界に身を委ねることが大事なのだ。

物語は、大沼のそばの燈台小屋に住む孤独な画家ラヤダーと、傷ついた白いグースを抱いて燈台を訪れた少女フリーザの心の交流を描く。しかし時は第二次世界大戦中。二人の交流はこの戦争に巻き込まれて行く。優しく悲しい愛の物語だ。

ロックとかジャズとかクラシックとかいったジャンル分けすることが無意味に思える、音楽の力を実感させてくれる名盤。傑作。