2009/06/28

「ワン・オブ・ア・カインド」

On Of A Kind(1979年)

Bruford(ブラッフォード)


1970 年代後半、プログレッシヴ・ロックも模索の時期に入る。多くのバンドがポップ化に向かう中、潔く解散したKing Crimsonのリズム隊John Wetton(ベース、ボーカル)とBill Bruford(ドラムス)が母体となり、Eddy Jobson(バイオリン、キーボード)とAllan Holdsworth(ギター)を加えたスーパーバンドとして、UKが生まれた。

しかしアルバム「
UK」を一枚残しただけで、ジャズ&インストゥルメンタル志向の強かったBillAllanが脱退、新たに結成したのがジャズロック版 UKと言えるようなバンド、Bruford(ブラッフォード、近年は本来の音に近づけてブルフォードとする場合もある)である。 One Of A Kind」は1979年に発表されたBrufordのファースト・アルバム。オールインストゥルメンタルで、構築性の高い、ハイレベルなジャズロックを聴くことができる。

 Bill Bruford:ドラムス
 Allan Holdsworth:ギター
 Dave Stewart:キーボード
 Jeff Berlin:ベース

個性派テクニシャン揃いのバンドなので、ジャズロックと行っても独特の世界を持っている。Billのドラムは彼特有の硬いスネアがスコーンスコーンと鳴り響く。しかしYesの時のロールを少し混ぜたロック的なドラミングとも、King Crimsonの時のパーカッシブで鬼気迫るようなドラミングとも異なり、少な目の音を的確に打ち込んでいくような感じでリズムを牽引する。それでももちろん変拍子での疾走感や、狭いスペースに切り込んでくるフィルインには、やはり彼独特な力強さがある。

Allanのギターはレガート奏法主体なので、早弾きをしてもとても滑らかで、時々入るタメも含めてとても色気のある音でありフレーズだ。従ってギターソロの場面ではとてつもなく魅力的なプレイを聞かせてくれるが、曲のメロディーを引っ張っていくには少し弱い。しかしそこは職人Dave Stewartが多彩なキーボードで、メロディーからバックまで大活躍して、Allanのギターの見せ場をうまく作り出している。そしてボトムを支えるのがJeffの超絶ベースだ。縦横無尽に動き回りながら、ノリノリの曲から複雑な展開の曲まで、リズムを的確に支えている。

曲はノリの良いフュージョン的な曲から、バイオリンを導入部に使ってしっとりと始まる曲、UK的なプログレ色の濃い曲まで様々だが、Allanの驚異的なアドリブプレイを活かしながら、曲としてはかなり完成されたものばかりで、ソロの応酬やインプロヴィゼイション的な部分はない。それでもどの曲も緊張感あふれるプレイが聴ける。特に「Fainting In Coils」や「Sahara In Snow」では全員一丸となってクライマックスに向かって突進していくところなど、とてもスリリングだ。そこはかとなくCrimsonの香りが漂う。

そもそもジャズロック志向なBillAllanが、UKで出来なかったことをしようと始めたバンドであるが、サウンド的にはキーボードのDaveの貢献度が高い。そのため多彩なキーボードの、とても色彩豊かな音が詰め込まれた、個性的なジャズ・プログレシヴ・ロックになっていると言える。

ちなみにタイトルの「One Of A Kind」は「ユニークな、独自の、比類のない」という意味。
まさに唯一無二の一枚。これまた傑作