U.K. (1977年)
U.K.(ユー・ケー)
1970 年代King Crimsonは、アルバムでは1975年発表の「USA」がラストアルバムとなるが、実質的には1974年発表のスタジオアルバム(一部ライブ音源)「Red」の発表を以て解散している。しかしその解散はリーダーのRobert Frippが一方的に決めたことによる。
これによってジョンとビルのリズム隊は活動する場がなくなり、自ら新たなグループの立ち上げの構想を練る。当初YesのRick Wakemanを加えたトリオ編成のバンド案が浮上し、実際にリハーサルも行われたようだが、結局実現にはいたらなかった。
1977 年当時、イギリスロンドンを中心にパンク・ロック(punk rock)と呼ばれる、ストレートで過激なロックが爆発的に盛り上がりを見せていた。ロック音楽がどんどん難解になり、そもそも持っていた社会への反抗や怒りの爆発としての単純だが感情を叩き付けるようなロックに魅力が集中した。
そうした大きなムーヴメンとは、その矛先を難解でテクニックを重視するプログレッシヴ・ロックにも向けられた。プログレッシヴ・ロック自体も1974年 頃にはそれぞれの最高作と言われるアルバムが出そろい、バンドとしての限界が見え始め、その後の方向性の模索の時期に入りつつ合った。パンク・ロックの隆 盛は、そうした動きを加速させることになる。結果的に従来のプログレッシブ・ロックバンドは解散、もしくはポップ化を取り入れた方向修正を余儀なくされて いった。
そんな中で、重鎮King Crimsonの脅威的リズム隊を核とするバンドがU.K.が登場した。アルバム「U.K.」は、パンク・ロックの中心的なバンド中心的バンドSex Pistolsが「Never Mind the Bollocs」(邦題は「勝手にしやがれ」)を発表した翌年の1977年のことである。イギリスの国名U.K.(United Kingdom of Great Britain and Northern Island)自体をバンド名にするという、まさにパンク・ロックに対応すべく立ち上がったバンドというイメージがあった。
Eddie Jobson:エレクトリック・ヴァイオリン、キーボード
John Wetton:ボイス、ベース
Allan Holdsworth:ギター
Bill Bruford:ドラムス、パーカッション
集まったメンバーがまた凄かった。ジャズロック系のバンドでそのレガート奏法によるつややかなはや弾きでカリスマ的存在だったAllan Holdsworth(アラン・ホールズワース)、Frank ZappaのバンドやRoxy Musicでキーボード&ヴァイオリンを担当し、一流にして華麗なプレイを見せていた貴公子Eddie Jobson(エディ・ジョブソン)。AllanはBillのソロ作への参加、EddieはJohnとRoxy Musicで共にプレイしていたことから抜擢された。
発売されたアルバムは、King Crimsonの音楽をさらに進化させるものかと思われていたが、実際には、テクニカルで壮絶な内容にもかかわらず、ボーカル主体のポップな面が印象づけられるものとなった。ソロを取れるのがAllanの個性的ギター、Eddieの華麗なキーボード&ヴァイオリンと、フロントに立てるメンバーが多いことがアダとなり、バンドの核が作れていない。ただしそこがこのアルバムの凄いところなのだ。
まず最初に聴いた時には、くぐもった従来のメロトロンに代わるEddieの力強くメリハリのあるポリフォニックシンセサイザーの音に衝撃を受けた。カチッとまとまった楽曲、歌をはさんでソロが展開するという、わかりやすい構成。明らかに旧来の、プログレッシヴ・ロックの混沌渦巻く世界とは違う、新しくカッコイイサンウンドだった。特に「In The Dead Of Night」〜「Presto Vivace and Reprise」の組曲、そして旧LPB面最初にあたる「Alaska」のスリリングな演奏に圧倒された。
さらに一聴するとポップな印象の裏に、もっともっと深い世界が広がっていた。まずBill Brufordのドラミングが尋常ではない。スネアやバスドラの音がどの拍で打たれるか予測不能。だから曲に緊張感が増す。Allanの個性的なギーターソロもここぞとばかりに切り込んでくるし、「Thirty Years」では珍しくアコースティックギターも聴ける。Eddieのキーボードも、音の明るさ、明快さにもかかわらず、非常に難解なリズムをシーケンサーのように引き倒す。「Time to Kill」で聴けるヴァイオリンソロもテクニカル。
つまり歌が終わると変拍子ジャズロック的な各プレーヤーの個性がむき出しになるのだ。ただしフリーインプロヴィゼーションにならないのが、Crimson的ではなくジャズロック的と言える所以。
とっつきやすいロック的メロディーと明るめのキーボードサウンド、そのオブラートに包まれた壮絶な変拍子とジャズロック的インタープレイ。ただしそれがメインにならずあくまで間奏的な扱いになっているところがU.K.らしさだったと思う。この個性的で自己主張の強そうなメンバーが明確なフロントマンを立てず、ギリギリのバランスで作り上げることができた傑作。
しかしバンドは当然のようにこの1枚を残して分裂する。
U.K.(ユー・ケー)
1970 年代King Crimsonは、アルバムでは1975年発表の「USA」がラストアルバムとなるが、実質的には1974年発表のスタジオアルバム(一部ライブ音源)「Red」の発表を以て解散している。しかしその解散はリーダーのRobert Frippが一方的に決めたことによる。
これによってジョンとビルのリズム隊は活動する場がなくなり、自ら新たなグループの立ち上げの構想を練る。当初YesのRick Wakemanを加えたトリオ編成のバンド案が浮上し、実際にリハーサルも行われたようだが、結局実現にはいたらなかった。
1977 年当時、イギリスロンドンを中心にパンク・ロック(punk rock)と呼ばれる、ストレートで過激なロックが爆発的に盛り上がりを見せていた。ロック音楽がどんどん難解になり、そもそも持っていた社会への反抗や怒りの爆発としての単純だが感情を叩き付けるようなロックに魅力が集中した。
そうした大きなムーヴメンとは、その矛先を難解でテクニックを重視するプログレッシヴ・ロックにも向けられた。プログレッシヴ・ロック自体も1974年 頃にはそれぞれの最高作と言われるアルバムが出そろい、バンドとしての限界が見え始め、その後の方向性の模索の時期に入りつつ合った。パンク・ロックの隆 盛は、そうした動きを加速させることになる。結果的に従来のプログレッシブ・ロックバンドは解散、もしくはポップ化を取り入れた方向修正を余儀なくされて いった。
そんな中で、重鎮King Crimsonの脅威的リズム隊を核とするバンドがU.K.が登場した。アルバム「U.K.」は、パンク・ロックの中心的なバンド中心的バンドSex Pistolsが「Never Mind the Bollocs」(邦題は「勝手にしやがれ」)を発表した翌年の1977年のことである。イギリスの国名U.K.(United Kingdom of Great Britain and Northern Island)自体をバンド名にするという、まさにパンク・ロックに対応すべく立ち上がったバンドというイメージがあった。
Eddie Jobson:エレクトリック・ヴァイオリン、キーボード
John Wetton:ボイス、ベース
Allan Holdsworth:ギター
Bill Bruford:ドラムス、パーカッション
集まったメンバーがまた凄かった。ジャズロック系のバンドでそのレガート奏法によるつややかなはや弾きでカリスマ的存在だったAllan Holdsworth(アラン・ホールズワース)、Frank ZappaのバンドやRoxy Musicでキーボード&ヴァイオリンを担当し、一流にして華麗なプレイを見せていた貴公子Eddie Jobson(エディ・ジョブソン)。AllanはBillのソロ作への参加、EddieはJohnとRoxy Musicで共にプレイしていたことから抜擢された。
発売されたアルバムは、King Crimsonの音楽をさらに進化させるものかと思われていたが、実際には、テクニカルで壮絶な内容にもかかわらず、ボーカル主体のポップな面が印象づけられるものとなった。ソロを取れるのがAllanの個性的ギター、Eddieの華麗なキーボード&ヴァイオリンと、フロントに立てるメンバーが多いことがアダとなり、バンドの核が作れていない。ただしそこがこのアルバムの凄いところなのだ。
まず最初に聴いた時には、くぐもった従来のメロトロンに代わるEddieの力強くメリハリのあるポリフォニックシンセサイザーの音に衝撃を受けた。カチッとまとまった楽曲、歌をはさんでソロが展開するという、わかりやすい構成。明らかに旧来の、プログレッシヴ・ロックの混沌渦巻く世界とは違う、新しくカッコイイサンウンドだった。特に「In The Dead Of Night」〜「Presto Vivace and Reprise」の組曲、そして旧LPB面最初にあたる「Alaska」のスリリングな演奏に圧倒された。
さらに一聴するとポップな印象の裏に、もっともっと深い世界が広がっていた。まずBill Brufordのドラミングが尋常ではない。スネアやバスドラの音がどの拍で打たれるか予測不能。だから曲に緊張感が増す。Allanの個性的なギーターソロもここぞとばかりに切り込んでくるし、「Thirty Years」では珍しくアコースティックギターも聴ける。Eddieのキーボードも、音の明るさ、明快さにもかかわらず、非常に難解なリズムをシーケンサーのように引き倒す。「Time to Kill」で聴けるヴァイオリンソロもテクニカル。
つまり歌が終わると変拍子ジャズロック的な各プレーヤーの個性がむき出しになるのだ。ただしフリーインプロヴィゼーションにならないのが、Crimson的ではなくジャズロック的と言える所以。
とっつきやすいロック的メロディーと明るめのキーボードサウンド、そのオブラートに包まれた壮絶な変拍子とジャズロック的インタープレイ。ただしそれがメインにならずあくまで間奏的な扱いになっているところがU.K.らしさだったと思う。この個性的で自己主張の強そうなメンバーが明確なフロントマンを立てず、ギリギリのバランスで作り上げることができた傑作。
しかしバンドは当然のようにこの1枚を残して分裂する。