Pampered Menial (1975年)
Pavlov's Dog(パブロフズ・ドッグ)
「Pampered Menial」(邦題は「禁じられた掟」)は、アメリカのバンドPavlov's Dog(パブロフズ・ドッグ)が1975年に発売したファースト・アルバムである。実に不思議な魅力を持ったバンドであり、アルバムである。
メ ロディの明るさ、熱くシャウトするボーカル、クリアーなハーモニー、あるいはカントリーやブルース、ロックン・ロール色といった、アメリカのバンド的な特 徴はあまり感じられない。プログレッシヴ・ロックバンドとして扱われることが多いが、意外と基本はメロディアスな歌もので、メロディック・ハードロックに プログレ風味が効いているような感じ。
David Surkamp:ボーカル、ギター
David Hamilton:キーボード
Doug Rayburn:メロトロン、フルート
Mike Safron:パーカッション
Rick Stockton:ベース
Siegfried Caver:ヴァイオリン、ヴァイター、ヴィオラ
Steve Scorfina:ギター
ちなみにヴァイター(vitar)とは、「ボストン交響楽団のリー・ラリソンが作ったというギターのような固い金属的なトーンが特徴的なエレクトリックヴァイオリンのこと(「ヴァイオリンホームページ」より)」。violin + guitarでvitarっていうことかなと思い、“ヴィター”ではなく“ヴァイター”と読んでみた。
このヴァイオリンが、あのKansasですら消し切れなかったカントリー臭さを持たない、クラシカルな響きを持っており、さらに加えて、随所で大胆に使用されるメロトロンが、全体のアメリカらしからぬ深みのある音世界に貢献していると言える。
しかしこのバンドの最大の特徴は、何と言ってもボーカルDavid Surkamp(デイヴィッド・サーカンプ)の超ハイトーンボイスであろう。
高音域まで声が出ますという声域の広さから出るハイトーンではなく、声域自体が高音域にある人の声だ。それも性別も年齢もわからなくなるほどに、かなり特異なレベルの高音域である。
その彼がさらに高音域で細かなビブラートをつけて声を出していると、もう何かの発信器かと思うくらいである。ダメな人には全くダメ。はっきり好き嫌いを分けるだろう。しかし、だがしかし、ハマるとこの声が大きな魅力なのだ。異形の声質。その声に叙情性が宿る。
そ して、どうしても声そのものに話題が集まり見過ごされがちなのが、歌の上手さだ。声に慣れてくると表現力がわかるようになる。独特な声だけで勝負しようと しているのではなく、たまたま声が独特だった名ボーカリストだと思う。わたしはハマってしまいましたから。彼のボーカルに。
そしてさら に、耳が慣れてくるとメロディーや曲の出来の良さ、演奏の良さがわかってくる。様々な楽器を配して多彩でいてまとまりのあるサウンド、タイトなリズム、ド ラマティックな展開、効果的に活躍するフルート、ヴァイオリン、メロトロン。ブリティッシュ・プログレッシヴ・ロック・バンドに一歩も退けを取らない完成 度。
しかしアメリカンな明るさでもないかわりに、ブリティッシュな暗さともちょっと違う世界。それがDavid Surkampの世界なんだろう。全9曲というアルバム構成で、最長でも5分台。ボーカルが中心で、インストゥルメンタル曲はラストの曲の前奏曲風な2分 に満たない8曲目「Preludin」のみ。
しかしプログレッシヴ・ロックとしては短めな曲の中に、ドラマが詰まっている。プログレッシヴ・ロックの枠を越えて、アメリカン・ロックを代表する一枚。傑作。
ちなみに2ndの「At the Sound of the Bell(条件反射)」も、ヴァイオリンが抜けメロトロン含有率も減ったが、美しいメロディーを前面に出した、これまた傑作。ドラムスがBill Brufordということでも有名。
Pavlov's Dog(パブロフズ・ドッグ)
「Pampered Menial」(邦題は「禁じられた掟」)は、アメリカのバンドPavlov's Dog(パブロフズ・ドッグ)が1975年に発売したファースト・アルバムである。実に不思議な魅力を持ったバンドであり、アルバムである。
メ ロディの明るさ、熱くシャウトするボーカル、クリアーなハーモニー、あるいはカントリーやブルース、ロックン・ロール色といった、アメリカのバンド的な特 徴はあまり感じられない。プログレッシヴ・ロックバンドとして扱われることが多いが、意外と基本はメロディアスな歌もので、メロディック・ハードロックに プログレ風味が効いているような感じ。
David Surkamp:ボーカル、ギター
David Hamilton:キーボード
Doug Rayburn:メロトロン、フルート
Mike Safron:パーカッション
Rick Stockton:ベース
Siegfried Caver:ヴァイオリン、ヴァイター、ヴィオラ
Steve Scorfina:ギター
ちなみにヴァイター(vitar)とは、「ボストン交響楽団のリー・ラリソンが作ったというギターのような固い金属的なトーンが特徴的なエレクトリックヴァイオリンのこと(「ヴァイオリンホームページ」より)」。violin + guitarでvitarっていうことかなと思い、“ヴィター”ではなく“ヴァイター”と読んでみた。
このヴァイオリンが、あのKansasですら消し切れなかったカントリー臭さを持たない、クラシカルな響きを持っており、さらに加えて、随所で大胆に使用されるメロトロンが、全体のアメリカらしからぬ深みのある音世界に貢献していると言える。
しかしこのバンドの最大の特徴は、何と言ってもボーカルDavid Surkamp(デイヴィッド・サーカンプ)の超ハイトーンボイスであろう。
高音域まで声が出ますという声域の広さから出るハイトーンではなく、声域自体が高音域にある人の声だ。それも性別も年齢もわからなくなるほどに、かなり特異なレベルの高音域である。
その彼がさらに高音域で細かなビブラートをつけて声を出していると、もう何かの発信器かと思うくらいである。ダメな人には全くダメ。はっきり好き嫌いを分けるだろう。しかし、だがしかし、ハマるとこの声が大きな魅力なのだ。異形の声質。その声に叙情性が宿る。
そ して、どうしても声そのものに話題が集まり見過ごされがちなのが、歌の上手さだ。声に慣れてくると表現力がわかるようになる。独特な声だけで勝負しようと しているのではなく、たまたま声が独特だった名ボーカリストだと思う。わたしはハマってしまいましたから。彼のボーカルに。
そしてさら に、耳が慣れてくるとメロディーや曲の出来の良さ、演奏の良さがわかってくる。様々な楽器を配して多彩でいてまとまりのあるサウンド、タイトなリズム、ド ラマティックな展開、効果的に活躍するフルート、ヴァイオリン、メロトロン。ブリティッシュ・プログレッシヴ・ロック・バンドに一歩も退けを取らない完成 度。
しかしアメリカンな明るさでもないかわりに、ブリティッシュな暗さともちょっと違う世界。それがDavid Surkampの世界なんだろう。全9曲というアルバム構成で、最長でも5分台。ボーカルが中心で、インストゥルメンタル曲はラストの曲の前奏曲風な2分 に満たない8曲目「Preludin」のみ。
しかしプログレッシヴ・ロックとしては短めな曲の中に、ドラマが詰まっている。プログレッシヴ・ロックの枠を越えて、アメリカン・ロックを代表する一枚。傑作。
ちなみに2ndの「At the Sound of the Bell(条件反射)」も、ヴァイオリンが抜けメロトロン含有率も減ったが、美しいメロディーを前面に出した、これまた傑作。ドラムスがBill Brufordということでも有名。