Fragile (1972年)
Yes(イエス)
「Fragile」(邦題は「こわれもの」)は、Yes(イエス)が1972年に発表したアルバム。初めてRick Wakeman(リック・ウェイクマン)が加入し、初めてRoger Dean(ロジャー・ディーン)がアルバムジャケットを担当した(ロゴはまだ未完成形だけど)最初のアルバム。
前作「The Yes Album(イエス・アルバム)」でギターのSteve Howe(スティーヴ・ハウ)が加入したことで、急速に音楽性が広がりを見せ、テクニックの面でも、より高度なアンサンブルが求められていた。そこに、 StrawbsにいたRick Wakemanが、テクニックとアイデア、そして存在感(長身、長髪、銀ラメのマント)を持ち込んだ。要塞のようなキーボードとともに。そして、その音楽面、演奏面、そしてライブでの視覚面を格段にスケールアップさせた。
ここに名作「Close To The Edge(危機)」を完成させる歴代最強メンバーが揃ったことになる。「Fragile」はその最高のラインナップのスタートを飾る、活力と独創力に満ちたアルバムだ。
John Anderson:ボーカル
Steve Howe:ギター、ボーカル
Chris Squire:ベース、ボーカル
Bill Bruford:パーカッション
Rick Wakeman:キーボード
何と言ってもYesミュージックの定番中の定番となっている一曲目「Roundabout(ラウンドアバウト)」が素晴らしい。歌詞の考察はProgLyric「ラウンドアバウト」をご参照いただくとして、サウンド面でのRickの貢献がさっそくこの曲にも現れている。
不 安をあおるように次第に大きくなるピアノの音の逆回転音を、アコースティックギターのつま弾きが断ち切るイントロの秀逸さ。そして各パートがハイテンショ ンなアンサンブルで曲を奏で始める。ピッチの高いパーカッシヴなドラム、低音から中音域までメロディアスに動き回る唸るようなベース、そこにアコース ティックギターが絡むことに何の不自然さも感じさせない絶妙なバランス。
そして曲間に挿入される印象的なRickの キーボード、曲に厚みが加わるとエレキギターとシンセサイザー、ハモンドオルガンが装飾的に鳴り始める。ギターとのユニゾンも多用される。そして後半部、 全体が一旦音を落としたところでアコースティックギターの裏でアルペジオを引き続けるオルガン、そして再びハードな演奏になるとともに始まるキーボードソ ロ、すでにそのその直後のSteve Howeのギターソロと完全に肩を並べている。
この一曲でRick Wakemanは華麗にデビューしたのだ。とともにJon Andersonが構想していた、ヘヴィーなバックと卓越したボーカル・サウンドの融合が“華麗に”完成したと言える。
全 9曲中、5人のソロナンバーが小品として収められ、「Roundabout」を含めた残り4曲が、メンバーが一丸となって繰り出すシンフォニックでハイテンションなサウンドという構成。統一感に欠けそうなアイデアだが、逆にメンバーのソロ部分が間奏曲のような感じで、全員で演奏する迫力ある曲の印象をさらに高めている。
とともにメンバーそれぞれが、非常に個性豊かな、確かな技術を持ったプレーヤーであることも実感される。最初聴いた時、特にドラムのBill Brufordの「Five Per Cent For Nothing」の裏切られ方はかなりショックだった。ロックのドラムソロのイメージとはおよそかけ離れたもの。しかしそれがYes。期待と予想を裏切り、まだ見ぬ世界へ導いてくれるのがYesということだ。
ギターの鋭く慌ただしいピッキングも、Billにしてはまだロック色の濃いドラムの音も、キーボードの装飾的でテクニカルな味付けも、低音部は任せろとばかりに動きまくるベースも、すべてが若々しく、溌剌としたエネルギーに満ちている。
フロント・ソロ対バックという関係ではなく、それぞれのパートで自由に個性的な演奏をする、スキあらば割り込む、みたいなYes独特な万華鏡のようなサウンドコンビネーション。そしてその自由奔放なプレーをまとめてしまうJonの美しく説得力のある声。
個人的には「South Side Of The Sky(南の空)」のパワフルさがたまらない。ベースとキーボードのユニゾン、流れるようなギター、中間部のクラシカルなピアノの響き。独特なボーカルハーモニーも聴ける。この動から静そしてまた動へと変わっていく振幅の広さ。超カッコイイ。
ちなみに最後の大曲「Heart Of The Sunrise(燃える朝焼け)」は、メインリフがKing Crimsonの「21世紀のスキッツォイドマン」影響されているんじゃないかとSteveが心配したという。それも杞憂。前半のインストゥルメンタルパートでの個性的なドラミングがいい。そして曲はゆったりしたボーカルを軸に様々なサウンドが割り込んでくる。
次々と変わるメロディー、リズム、そしてそのリフレイン、複雑だが交響曲のように全体として大きなまとまりを成す大作。シンセサイザーやメロトロンを屈指して壮大な空間を作り出したRickの貢献度の大きさがわかる。
次作「Close To Edge(危機)」へ向かって、急上昇するような若々しいエネルギーに満ちた傑作。
Yes(イエス)
「Fragile」(邦題は「こわれもの」)は、Yes(イエス)が1972年に発表したアルバム。初めてRick Wakeman(リック・ウェイクマン)が加入し、初めてRoger Dean(ロジャー・ディーン)がアルバムジャケットを担当した(ロゴはまだ未完成形だけど)最初のアルバム。
前作「The Yes Album(イエス・アルバム)」でギターのSteve Howe(スティーヴ・ハウ)が加入したことで、急速に音楽性が広がりを見せ、テクニックの面でも、より高度なアンサンブルが求められていた。そこに、 StrawbsにいたRick Wakemanが、テクニックとアイデア、そして存在感(長身、長髪、銀ラメのマント)を持ち込んだ。要塞のようなキーボードとともに。そして、その音楽面、演奏面、そしてライブでの視覚面を格段にスケールアップさせた。
ここに名作「Close To The Edge(危機)」を完成させる歴代最強メンバーが揃ったことになる。「Fragile」はその最高のラインナップのスタートを飾る、活力と独創力に満ちたアルバムだ。
John Anderson:ボーカル
Steve Howe:ギター、ボーカル
Chris Squire:ベース、ボーカル
Bill Bruford:パーカッション
Rick Wakeman:キーボード
何と言ってもYesミュージックの定番中の定番となっている一曲目「Roundabout(ラウンドアバウト)」が素晴らしい。歌詞の考察はProgLyric「ラウンドアバウト」をご参照いただくとして、サウンド面でのRickの貢献がさっそくこの曲にも現れている。
不 安をあおるように次第に大きくなるピアノの音の逆回転音を、アコースティックギターのつま弾きが断ち切るイントロの秀逸さ。そして各パートがハイテンショ ンなアンサンブルで曲を奏で始める。ピッチの高いパーカッシヴなドラム、低音から中音域までメロディアスに動き回る唸るようなベース、そこにアコース ティックギターが絡むことに何の不自然さも感じさせない絶妙なバランス。
そして曲間に挿入される印象的なRickの キーボード、曲に厚みが加わるとエレキギターとシンセサイザー、ハモンドオルガンが装飾的に鳴り始める。ギターとのユニゾンも多用される。そして後半部、 全体が一旦音を落としたところでアコースティックギターの裏でアルペジオを引き続けるオルガン、そして再びハードな演奏になるとともに始まるキーボードソ ロ、すでにそのその直後のSteve Howeのギターソロと完全に肩を並べている。
この一曲でRick Wakemanは華麗にデビューしたのだ。とともにJon Andersonが構想していた、ヘヴィーなバックと卓越したボーカル・サウンドの融合が“華麗に”完成したと言える。
全 9曲中、5人のソロナンバーが小品として収められ、「Roundabout」を含めた残り4曲が、メンバーが一丸となって繰り出すシンフォニックでハイテンションなサウンドという構成。統一感に欠けそうなアイデアだが、逆にメンバーのソロ部分が間奏曲のような感じで、全員で演奏する迫力ある曲の印象をさらに高めている。
とともにメンバーそれぞれが、非常に個性豊かな、確かな技術を持ったプレーヤーであることも実感される。最初聴いた時、特にドラムのBill Brufordの「Five Per Cent For Nothing」の裏切られ方はかなりショックだった。ロックのドラムソロのイメージとはおよそかけ離れたもの。しかしそれがYes。期待と予想を裏切り、まだ見ぬ世界へ導いてくれるのがYesということだ。
ギターの鋭く慌ただしいピッキングも、Billにしてはまだロック色の濃いドラムの音も、キーボードの装飾的でテクニカルな味付けも、低音部は任せろとばかりに動きまくるベースも、すべてが若々しく、溌剌としたエネルギーに満ちている。
フロント・ソロ対バックという関係ではなく、それぞれのパートで自由に個性的な演奏をする、スキあらば割り込む、みたいなYes独特な万華鏡のようなサウンドコンビネーション。そしてその自由奔放なプレーをまとめてしまうJonの美しく説得力のある声。
個人的には「South Side Of The Sky(南の空)」のパワフルさがたまらない。ベースとキーボードのユニゾン、流れるようなギター、中間部のクラシカルなピアノの響き。独特なボーカルハーモニーも聴ける。この動から静そしてまた動へと変わっていく振幅の広さ。超カッコイイ。
ちなみに最後の大曲「Heart Of The Sunrise(燃える朝焼け)」は、メインリフがKing Crimsonの「21世紀のスキッツォイドマン」影響されているんじゃないかとSteveが心配したという。それも杞憂。前半のインストゥルメンタルパートでの個性的なドラミングがいい。そして曲はゆったりしたボーカルを軸に様々なサウンドが割り込んでくる。
次々と変わるメロディー、リズム、そしてそのリフレイン、複雑だが交響曲のように全体として大きなまとまりを成す大作。シンセサイザーやメロトロンを屈指して壮大な空間を作り出したRickの貢献度の大きさがわかる。
次作「Close To Edge(危機)」へ向かって、急上昇するような若々しいエネルギーに満ちた傑作。