King Crimson(キング・クリムゾン)
「The Power To Believe」(邦題は「ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ」) は、King Crimsonが2003年に発表した、現時点での最新アルバムである。1969年の「The Court Of The Crimson King(「クリムゾン・キングの宮殿」)」以来、解散(休止)と復活を繰り返し、常に時代の最先端に敏感に反応しつつも、時代におもねること無く、他の 追随を許さない独自の世界を突き進んできたバンドである。
当初の叙情性や構築され たシンフォニックさは、70年代のインプロヴィゼーション・ラインナップが打ち砕いた。Jamie Muir(ジェイミー・ミューア)の非ロック的なパーカッションの嵐が、ロマンティックな幻想性の入り込む余地を無くし、驚異的なインプロヴィゼーション や超絶インストゥルメンタルによって、より原始的な情動の発散がもたらされた。
1980年代にアメリカ人2人を入れた英米混合バンドとして復活したとき、タイトルからして「Discipline」(訓練、鍛錬、修行という意)というくらい、テクニカルなギターアンサンブルを表現の中心に持ってくることで、さらに 70年代的叙情性は削ぎ落とされた。70年代の強力な武器であったメロトロンも使われなくなった。
2本のギターによるポリリズムや反復フレーズのミニマル ミュージック的なサウンドは、70年代に顕著だったプレーヤーの個性を意図的に薄めつつ、70年代解散間際の強力なリズム隊からギターが主役の座を取り戻すかたちになった。
1995年の「Thrak」に至っては、タイトルからして擬音であり、そこに70年代的叙情性や物語性を徹底的に排除するかのような意気込みが感じられた。
ダブル トリオ編成により、さらにアンサンブル志向が強まり、個々のプレイは全体の一部と化し、どの音を誰が弾いているのかが分かりにくくなっている。個性が強過ぎて消し用の無いBill Brufordが脱退するのは必然だったかもしれない。しかしまだ「One Time」などの美しいポップスが安らぎを与えていた。
2000年発表の「The ConstruKtion Of Light」では、再び4人編成に戻るが、アンサンブル主体の音楽性は変わらない。「Thrak」にも「Red」などの70年代Crimsonの構築型インストゥルメンタルの影が見え隠れしていたが、「The ConstruKtion Of Light」ではその構築的インストゥルメンタルを究極まで押し進めた。
フルピッキング・アルペジオの極北「Fractured」、「Larks' Tongues in Aspic, Part IV」を核に、コマーシャリズムを排したヘヴィな作風を貫いた。ただ逆に言えば70年代構築型インストゥルメンタルを80年代ギターアンサンブルで焼き直したと考えることもでき、その驚異的なテクニックに反して、そこにプレイのためのプレイという限界が見えたことも事実。
そ して登場したのが2002年の「The Power To Believe」である。
大きな特徴は、これまで同様ギターアンサンブル主体ながら、超絶アンサンブル重視から離れ、70年代的奔放さが感じられるところか。
メタリックなドラミングと時折入り込んで来るドラム・シーケンサーとの絡みも面白く、デジタルとアナログ、動と静のメリハリが明確になった。曲調とし てはやはり70年代構築的インストゥルメンタルの延長上にあると言えるが、タイトルを“信じる力”としたように、70年代とは違ったかたちでの、現代的な力強い物語性への回帰を感じる。
アルバムのトータル性が復活し、70年的な、“その先にある巨大な世界に触れようとするための音楽”が戻ってきた感じ。
Adrian Belew:ギター、ボーカル
Robert Fripp:ギター
Trey Gunn:ウォーギター、フレットレスウォーギター
Pat Mastelotto:打楽器、(シーケンサーなどの)操作ボタン
King Crimsonが再び、未知なる世界へ向って動き出すことを予感させる作品。傑作。
当初の叙情性や構築され たシンフォニックさは、70年代のインプロヴィゼーション・ラインナップが打ち砕いた。Jamie Muir(ジェイミー・ミューア)の非ロック的なパーカッションの嵐が、ロマンティックな幻想性の入り込む余地を無くし、驚異的なインプロヴィゼーション や超絶インストゥルメンタルによって、より原始的な情動の発散がもたらされた。
1980年代にアメリカ人2人を入れた英米混合バンドとして復活したとき、タイトルからして「Discipline」(訓練、鍛錬、修行という意)というくらい、テクニカルなギターアンサンブルを表現の中心に持ってくることで、さらに 70年代的叙情性は削ぎ落とされた。70年代の強力な武器であったメロトロンも使われなくなった。
2本のギターによるポリリズムや反復フレーズのミニマル ミュージック的なサウンドは、70年代に顕著だったプレーヤーの個性を意図的に薄めつつ、70年代解散間際の強力なリズム隊からギターが主役の座を取り戻すかたちになった。
1995年の「Thrak」に至っては、タイトルからして擬音であり、そこに70年代的叙情性や物語性を徹底的に排除するかのような意気込みが感じられた。
ダブル トリオ編成により、さらにアンサンブル志向が強まり、個々のプレイは全体の一部と化し、どの音を誰が弾いているのかが分かりにくくなっている。個性が強過ぎて消し用の無いBill Brufordが脱退するのは必然だったかもしれない。しかしまだ「One Time」などの美しいポップスが安らぎを与えていた。
2000年発表の「The ConstruKtion Of Light」では、再び4人編成に戻るが、アンサンブル主体の音楽性は変わらない。「Thrak」にも「Red」などの70年代Crimsonの構築型インストゥルメンタルの影が見え隠れしていたが、「The ConstruKtion Of Light」ではその構築的インストゥルメンタルを究極まで押し進めた。
フルピッキング・アルペジオの極北「Fractured」、「Larks' Tongues in Aspic, Part IV」を核に、コマーシャリズムを排したヘヴィな作風を貫いた。ただ逆に言えば70年代構築型インストゥルメンタルを80年代ギターアンサンブルで焼き直したと考えることもでき、その驚異的なテクニックに反して、そこにプレイのためのプレイという限界が見えたことも事実。
そ して登場したのが2002年の「The Power To Believe」である。
大きな特徴は、これまで同様ギターアンサンブル主体ながら、超絶アンサンブル重視から離れ、70年代的奔放さが感じられるところか。
メタリックなドラミングと時折入り込んで来るドラム・シーケンサーとの絡みも面白く、デジタルとアナログ、動と静のメリハリが明確になった。曲調とし てはやはり70年代構築的インストゥルメンタルの延長上にあると言えるが、タイトルを“信じる力”としたように、70年代とは違ったかたちでの、現代的な力強い物語性への回帰を感じる。
アルバムのトータル性が復活し、70年的な、“その先にある巨大な世界に触れようとするための音楽”が戻ってきた感じ。
Adrian Belew:ギター、ボーカル
Robert Fripp:ギター
Trey Gunn:ウォーギター、フレットレスウォーギター
Pat Mastelotto:打楽器、(シーケンサーなどの)操作ボタン
King Crimsonが再び、未知なる世界へ向って動き出すことを予感させる作品。傑作。