2009/06/25

「ミラージュ(蜃気楼)」

Mirage(1974年)

Camel
(キャメル)


Mirage」(邦題は「ミラージュ(蜃気楼)」) は、イギリスのロックバンドCamel(キャメル)が1974年に発表したセカンド・アルバムである。後の「Snow Goose(スノー・グース)」や「Moonmadness(月夜の幻想曲)」とともにバンドを代表するアルバムである。

ではこの「
Mirage」の魅力はどこにあるかというと、ファンタジックな面もあるが後のアルバムに比べ一番ロック色が強く、魅力的なメロディーを武器に力強いアンサンブルが聴けるところだろう。

 Andrew Latimer:ギター、フルート、ボーカル
 Peter Bardens:オルガン、ピアノ、チェレスタ、ムーグ、メロトロン、
        ボーカル
 Andy Ward:ドラムス、ビブラフォン、パーカッション
 Doug Ferguson:ベース

アルバム最初の曲「Freefall」は、イントロでベースとムーグがユニゾンで低音部のリズムを刻む。ムーグの音色が変化するので同じ単調なリズムでも何かが起きそうな緊張感がある。このあたりのキーボードの使い方がやっぱり上手いなぁと思う。

そして裏打ちで切り込んでくるギターがイントロ部分の緊張感を高める。メロディーに移るとギターとキーボードがユニゾンになったり3度でハモったりと抜群のコンビネーションを見せる。シンバルワークを含め、すでにドラムのプレイには多彩さが見られる。

ボーカルはまだまだ弱い。しかしアドリブに頼らず、きちんと魅力あるメロディーをギターとキーボードが互いにサポートし合いながらプレイしていく気持ちの良さがある。心地よい音楽である。

「Supertwister」ではAndyのフルートが軽やかにメインメロディを奏でていく。しかしここでもオルガンが柔らかい音でサポートしているのが印象的だ。

「Nimrodel」 は叙情的なメロディーが美しい9分を越える組曲。最初に出てくるフルートも効果的。このあたりの曲調がCamelのその後の大きな特徴となっていく。しか しこの曲では、一転してスリリングな展開。細かいハイハットを刻む激しいドラミングに合わせて、キーボードソロからギターソロへ。リズムも緩急が激しい。 後半部分では一定のベースのリズムに上で自由奔放なギターソロが展開される。でも低音部分に比べてギターはエコーがかかってスチールギターっぽい音。ギ ターソロでも全体のドリーミーなバランスを崩さない。

「Earthrise」でもギター、キーボードのアンサンブルは鉄壁。ここでのメロ ディーはムーグシンセサイザーが主役。しかしバックのリズムカッティングが曲をサポート、逆に中間部のスリリングなギターソロではオルガンが上手くリズム を刻んでギターをサポート。曲が冒頭部分のリプライズになる直前のユニゾンがカッコイイ。

最後は、その後定番曲になっていく13分近い大 曲「Lady Fantasy」。甘いギター、甘いボーカル、軽やかなエレピ。それを甘過ぎないように抑制しているのは、ハイハットやスネアを細かく鋭く入れていくドラムとファズっぽい音のオルガン。インストゥルメンタルパートの多彩なメロディー、リズムチェンジ、リード楽器の的確な交替と互いのサポート。

つくづくCamelは曲の良さと、アンサンブルの良さが信条なんだなとあらためて思う。ソロがテクニカルは方向へ決していかない。これCamelのキモかもしれない。

このアンサンブルの作り方が、ジャズ的なソロ対バック、ソロ対ソロの応酬というのとも違うし、ギターかキーボードのどちらかが終始主役でアドリブでソロを弾 きまくるというわけでもない。このまるでペアダンスを見ているような、見事な両者のバランスがCamelらしいところなのだ。その魅力がインストゥルメン タルパートに一番出ているのは、実はこのアルバムかもしれない。

プレイや音色にハードな面を残しているという点には、彼らの若々しさや意気込みもうかがわれる。ファンタジックな方向に向かっていく依然の、洗練されていない魅力が残っている一枚と言える。これも傑作。

なおProgLyrics何曲か訳詞と解説を行っているのでご参照下さい。