Close To The Edge (1972年)
Yes(イエス)
1972 年に完成した「Close To The Edge」(邦題は「危機」)は、イギリスのプログレッシヴ・ロック・バンドYes(イエス)の代表作にして、プログレッシヴ・ロックのみならず、ロック アルバム全体を見ても、そのオリジナリティ、完成度の点で希有な傑作である。もう凄過ぎである。
最初に買った洋楽LPのPinkFloyd(ピンク・フロイド)の「The Dark Side Of The Moon」(邦題は「狂気」)だったが、次に買ったのがこの作品だった。「狂気」の次が「危機」である。タイトルだけ見ると地獄巡りみたいだ。
そして「The Dark Side Of The Moon」が、形式上は9曲に分かれているのに対し、「Close To The Edge」は何と全3曲。それぞれ約19分、10分、9分。どんな曲なんだいったい?と興味津々だった。ということは曲を知らないで買ったのだ。ジャケ買 いならぬ話題買いである。Yesはスゲー、テクニックも最高、LP3枚組のライブ・アルバムも超売れてて演奏も完璧らしい、などなど。
何より、タイトル曲「Close To The Edge」、聴いて納得した。衝撃。聴いたことのない音楽。異次元へトリップ。汗握る緊張感と不思議で広大な浮遊感とであっと言う間の19分。今聴いてもやっぱり神がかってる。
まず最初の、キラキラしたキーボードに鳥の鳴き声が被さっている導入部がいつ聴いても美しい。ここでもう気持ちはすでに別世界。神々の庭か。
John Anderson:ボーカル
Steve Howe:ギター、ボーカル
Chris Squire:ベース、ボーカル
Bill Bruford:パーカッション
Rick Wakeman:キーボード
演奏が始まると、プレーヤー全員の一体感と集中力、音に込めたエネルギーみたいなものが渦巻く。5人の超個性的なメンバーが個性を全開にしつつ、一点を目指して一緒に突っ走っている感じ。音数的にはそれほど詰め込まれていないのに、一部のスキもなし。
「Close To The Edge」という曲を演奏して、聴かせようとしているのではないのだ。未知の、雄大で神秘的な世界を、5人が必死になって音楽で伝えようとしている感じだ。もちろんテクニック的に無茶をしているということではない。テクニック的にも最高度だ。
ただ最近のプログレメタルで見られるような、超高速ギターとか、キメの嵐とか、難解フレーズのユニゾンだとかいうものとは、全く次元が違う。フロントに誰かが立って残りのメンバーがバックから援護するのではない。
全員がフロントに立っている。そしてそれぞれが自分の表現方法を最大限に駆使して、同じ未知なる世界に突進している。だから全ての音、すべてのプレイに重みがある。どのプレイヤーに焦点を当てて聴いてみても恐ろしい集中力だ。
残りの2曲も凄い。「You and I」のアコースティックギターのイントロ部分の真空状態のような空気感。中間部のメロトロンの嵐によるゆったりとドラマティックに広がる景色。そして「Siberian Khatru」のロック的なダイナミズムと疾走感。雄大なメロトロン。
アルバムとしての完成度も飛び抜けている。Yes以外には作れない作品。いや、Yesであっても、この時期のこのメンバーでなければ作れなかった傑作。
ちなみに「Close To The Edge」についてボーカルで曲作りでも中心的な存在だったJohn Andersonはこう言っている。
「『危機』は自己理解の瀬戸際、というのがテーマなんだ。僕が読んでいたヘルマン・ヘッセの『シッダールタ』という本に基づいている。」
「『危機』をやっていた頃は、あのときだけしか存在しない統一感があった。それはもう絶対に起きない、当時と同じようには絶対に起きないことなんだ。」
Yes(イエス)
1972 年に完成した「Close To The Edge」(邦題は「危機」)は、イギリスのプログレッシヴ・ロック・バンドYes(イエス)の代表作にして、プログレッシヴ・ロックのみならず、ロック アルバム全体を見ても、そのオリジナリティ、完成度の点で希有な傑作である。もう凄過ぎである。
最初に買った洋楽LPのPinkFloyd(ピンク・フロイド)の「The Dark Side Of The Moon」(邦題は「狂気」)だったが、次に買ったのがこの作品だった。「狂気」の次が「危機」である。タイトルだけ見ると地獄巡りみたいだ。
そして「The Dark Side Of The Moon」が、形式上は9曲に分かれているのに対し、「Close To The Edge」は何と全3曲。それぞれ約19分、10分、9分。どんな曲なんだいったい?と興味津々だった。ということは曲を知らないで買ったのだ。ジャケ買 いならぬ話題買いである。Yesはスゲー、テクニックも最高、LP3枚組のライブ・アルバムも超売れてて演奏も完璧らしい、などなど。
何より、タイトル曲「Close To The Edge」、聴いて納得した。衝撃。聴いたことのない音楽。異次元へトリップ。汗握る緊張感と不思議で広大な浮遊感とであっと言う間の19分。今聴いてもやっぱり神がかってる。
まず最初の、キラキラしたキーボードに鳥の鳴き声が被さっている導入部がいつ聴いても美しい。ここでもう気持ちはすでに別世界。神々の庭か。
John Anderson:ボーカル
Steve Howe:ギター、ボーカル
Chris Squire:ベース、ボーカル
Bill Bruford:パーカッション
Rick Wakeman:キーボード
演奏が始まると、プレーヤー全員の一体感と集中力、音に込めたエネルギーみたいなものが渦巻く。5人の超個性的なメンバーが個性を全開にしつつ、一点を目指して一緒に突っ走っている感じ。音数的にはそれほど詰め込まれていないのに、一部のスキもなし。
「Close To The Edge」という曲を演奏して、聴かせようとしているのではないのだ。未知の、雄大で神秘的な世界を、5人が必死になって音楽で伝えようとしている感じだ。もちろんテクニック的に無茶をしているということではない。テクニック的にも最高度だ。
ただ最近のプログレメタルで見られるような、超高速ギターとか、キメの嵐とか、難解フレーズのユニゾンだとかいうものとは、全く次元が違う。フロントに誰かが立って残りのメンバーがバックから援護するのではない。
全員がフロントに立っている。そしてそれぞれが自分の表現方法を最大限に駆使して、同じ未知なる世界に突進している。だから全ての音、すべてのプレイに重みがある。どのプレイヤーに焦点を当てて聴いてみても恐ろしい集中力だ。
残りの2曲も凄い。「You and I」のアコースティックギターのイントロ部分の真空状態のような空気感。中間部のメロトロンの嵐によるゆったりとドラマティックに広がる景色。そして「Siberian Khatru」のロック的なダイナミズムと疾走感。雄大なメロトロン。
アルバムとしての完成度も飛び抜けている。Yes以外には作れない作品。いや、Yesであっても、この時期のこのメンバーでなければ作れなかった傑作。
ちなみに「Close To The Edge」についてボーカルで曲作りでも中心的な存在だったJohn Andersonはこう言っている。
「『危機』は自己理解の瀬戸際、というのがテーマなんだ。僕が読んでいたヘルマン・ヘッセの『シッダールタ』という本に基づいている。」
「『危機』をやっていた頃は、あのときだけしか存在しない統一感があった。それはもう絶対に起きない、当時と同じようには絶対に起きないことなんだ。」
(「イエス・ストーリー」ティム・モーズ著、
シンコーミュージック、1998年)
シンコーミュージック、1998年)