2009/06/26

「宇宙の血と砂」

Fandangos in Space(1973年)

Carmen(カルメン)


「Fandangos in Space」はCarmen(カルメン)のファーストアルバムである。邦題は「宇宙の血と砂」。バンド名、ジャケット、タイトル (fandangoはフラメンコのリズムの一つ)から、コテコテのスペインバンドかと思ってしまうが、メンバーはアメリカ人のDavid Allen、Angela Allenの兄弟を中心に結成されたアメリカ産バンドと言ってよい。しかしデビューがイギリスだったのでイギリスのグループと見られることも多い。

 David Allen:ボーカル、エレキギター、フラメンコギター
 Roberto Amaral:ボーカル、ビブラフォン、サパテアード、
         カスタネット

 Angela Allen:ボーカル、メロトロン、シンセサイザー、
         サパテアード
 John Glascock:ボーカル、ベース、ベースペダル
 Paul Fenton:ドラムス、パーカッション

ス ペインのバンドではない分、本家スペインのバンドよりスペインのイメージを意図的に全面に出している点、キワものに終わりそうだが、さにあらず。逆に非常 に情熱的な、力のこもった、他に類を見ない魅力的な作品になっているのだ。その理由はあくまでロックを基本に置いている点。非常にダイナミックな曲調、演 奏、歌い方で、ロックの熱い部分を持っているからこそ、スペインらしさ融合した時、とても印象的な音として響いてくる。

ま ず最初の 「Bulerias」がすばらしい!ロック全開なリズムで始まったかと思うと、リズム隊だけ残してフラメンコに!ドラムとベースが刻むリズムの上で、パル マ(手拍子)、サパテアード(靴音のリズム)、ハレオ(かけ声)が飛び交う。これぞフラメンコ・ロック!熱くなる!一気に彼らの世界に引き込まれる。

歌詞はほぼすべて英語で、David Allenの歌い方はフラメンコ唱法ではなく、粘り着くような、ちょっとクセのあるロック的なもの。しかしその情熱的な歌い方が、曲の中のフラメンコリズムや、フラメンコギターに違和感なく溶け込む。フラメンコギターソロ曲もあり、ロック的なテクニックのみならず、フラメンコのテクニックもきちんと持っている。ロックとフラメンコ、動と静のバランスが絶妙なのだ。

そ してボーカルハーモニーも魅力だ。特にラスト、「Fandangos in Space」終盤で、前の曲の「Reirando」の歌がパルマとサパテアードだけをバックにリプライズされる瞬間は、神聖さを感じさせるほどの美しさ! そしてそのまま激しいパルマとサパテアードにメロトロンが入り疾走する「Reprise」へなだれ込む!

テクニックとセンスと、フラメンコをロックに取り込んでしまえ〜という発想の大胆さが生んだ傑作!