Free Hand (1975年)
Gentle Giant(ジェントル・ジャイアント)
「FREE HAND」(邦題は「フリー・ハンド)は、イギリスの誇る超絶技巧派集団Gentle Giant(ジェントル・ジャイアント)が1975年に発表した、通算7枚目のアルバムである。
技巧派というとYesが浮かぶが、Gentle Giantは全盛期のYesのようにドラマティックで雄大な音世界を作り出す方向へは行かなかった。Yesほど各プレーヤーが超個性的で自己顕示欲が強く はなかったこともあるが、目的とするところがあくまでアンサンブルの妙であったことが大きい。
初期の段階から、その独特の複雑でくるくると変わる楽器アンサンブル、転調、変拍子、体位法的な旋律、アカペラコーラス、多種に渡る楽器、ジャズやクラシックに中世音楽など広範な楽曲を特徴としてきた。
高度なテクニックをメンバー全てが持っていた上に、それを最大限に発揮するような計算されつくした曲を、ロックのダイナミズムを無くすことなく演奏する。さらに各メンバーが楽器を持ち替える。するとリコーダーアンサンブルやアコースティックギター・アンサンブルまで飛び出す。もうめくるめく迷宮の世界だ。
Derek Shulman:ボーカル、サックス
Ray Shulman:ベース、ヴァイオリン、ボーカル
Kerry Minnear:キーボード、チェロ、ボーカル
Gary Green:ギター
John Weathers:ドラムス、パーカッション、ボーカル
アンサンブル主体のため、逆に個人の個性が見えにくくなる。そのため他のプログレッシヴ・ロックバンドのように、楽器とメンバーが密接に結びつき、個性的な奏法、音色などのインパクトでメンバー個人が印象に残るというものとは違う。
そのためスタープレーヤーとか、フロントマン的な存在感が薄く、どうしてもマイナーなイメージがしてしまう。しかしその高度な音楽構築性と、それを難なく演奏してしまうハイレベルな力量は、決して他のバンドに退けを取らない。
それどころか、その演奏力を例えばテクニカルなジャズ・ロックとして活かすのではなく、様々な音楽ジャンルを積極的に取り込みアンサンブルの実験場のような音楽を次々と作り出した。それが彼らだからなし得た、一度踏み込むと抜け出ることができない魅力となっているのだ。
ボーカル面ではKerryの線の細い、優しく優雅な雰囲気が活かされる曲、ロック的な迫力のあるDerekの二人が中心となる。しかしボーカルも一つの楽器のように、バックがボーカルメロディーと全く違ったことをやっていたりする。それもこのバンドの大きな魅力。
「FREE HAND」はそんなGentle Giantがアメリカでのツアーの成功を受けて、リズム面を強調して一聴してノリの良いロック色が強く、メロディーが印象深い曲が並ぶ。しかしポップになったというと語弊がある。
冒頭の「Just The Same」もノリが良く聴こえるが、ボーカルメロディーは7/8拍子、8/8拍子と変わる。でもバックは6/8拍子。迷宮の始まりだ。続く「On Reflection」はクラシカルなメロディーのアカペラが次第に重なり、4声アカペラに発展する。さらにアカペラアンサンブルに楽器が絡む。続く Kerryのコブシを活かした中世音楽風のボーカルソロをはさんで、後半はロックアンサンブルによるカノン(同じようなメロディーが他楽器で次々と追いか けられながら演奏される)で終わる。聴いている人の頭のいろいろな部分を次々に刺激してくる快感。
アルバムタイトル曲の「Free Hand」はふられた男の歌。跳ねるようなリズムに惑わされてはいけない。せわしくキャッチーとは言いがたいメロディー、次々とチェンジするリズム、かと 思うと細かく紡がれていく音のアンサンブル、一瞬現れる叙情的メロディー。一つの世界に浸っているヒマを与えないめまぐるしい展開。
このようにGentle Giantの曲は、そのリズムや展開において非常に高度で、ある意味リスナーに対して挑戦的でありながら、どこかユーモラスだったり、ハッとするような美 しさが盛り込まれていたりと、単なるテクニカル集団ではない魅力がある。一聴すると表立ってテンションが高くは感じられない。しかし少しズレるとバラバラ になってしまいそうな静かに熱い緊張感に貫かれているのだ。
さらりと流される部分に複雑さや高度さが潜んでいる快感。音自体に情念がこ もったりしていないため、一つのプレイが大きな感動を呼ぶというわけではないけれど、端正な音のつづれ織りが作り出す深い世界にじわじわと浸る喜びがたま らない。ヨーロッパ、特にイタリアで非常に高く評価されたと言う。傑作。
ちなみにWikipediaによると、本作は
とのことで、ある意味コンセプト・アルバムとも呼べるものとなっている。
Gentle Giant(ジェントル・ジャイアント)
「FREE HAND」(邦題は「フリー・ハンド)は、イギリスの誇る超絶技巧派集団Gentle Giant(ジェントル・ジャイアント)が1975年に発表した、通算7枚目のアルバムである。
技巧派というとYesが浮かぶが、Gentle Giantは全盛期のYesのようにドラマティックで雄大な音世界を作り出す方向へは行かなかった。Yesほど各プレーヤーが超個性的で自己顕示欲が強く はなかったこともあるが、目的とするところがあくまでアンサンブルの妙であったことが大きい。
初期の段階から、その独特の複雑でくるくると変わる楽器アンサンブル、転調、変拍子、体位法的な旋律、アカペラコーラス、多種に渡る楽器、ジャズやクラシックに中世音楽など広範な楽曲を特徴としてきた。
高度なテクニックをメンバー全てが持っていた上に、それを最大限に発揮するような計算されつくした曲を、ロックのダイナミズムを無くすことなく演奏する。さらに各メンバーが楽器を持ち替える。するとリコーダーアンサンブルやアコースティックギター・アンサンブルまで飛び出す。もうめくるめく迷宮の世界だ。
Derek Shulman:ボーカル、サックス
Ray Shulman:ベース、ヴァイオリン、ボーカル
Kerry Minnear:キーボード、チェロ、ボーカル
Gary Green:ギター
John Weathers:ドラムス、パーカッション、ボーカル
アンサンブル主体のため、逆に個人の個性が見えにくくなる。そのため他のプログレッシヴ・ロックバンドのように、楽器とメンバーが密接に結びつき、個性的な奏法、音色などのインパクトでメンバー個人が印象に残るというものとは違う。
そのためスタープレーヤーとか、フロントマン的な存在感が薄く、どうしてもマイナーなイメージがしてしまう。しかしその高度な音楽構築性と、それを難なく演奏してしまうハイレベルな力量は、決して他のバンドに退けを取らない。
それどころか、その演奏力を例えばテクニカルなジャズ・ロックとして活かすのではなく、様々な音楽ジャンルを積極的に取り込みアンサンブルの実験場のような音楽を次々と作り出した。それが彼らだからなし得た、一度踏み込むと抜け出ることができない魅力となっているのだ。
ボーカル面ではKerryの線の細い、優しく優雅な雰囲気が活かされる曲、ロック的な迫力のあるDerekの二人が中心となる。しかしボーカルも一つの楽器のように、バックがボーカルメロディーと全く違ったことをやっていたりする。それもこのバンドの大きな魅力。
「FREE HAND」はそんなGentle Giantがアメリカでのツアーの成功を受けて、リズム面を強調して一聴してノリの良いロック色が強く、メロディーが印象深い曲が並ぶ。しかしポップになったというと語弊がある。
冒頭の「Just The Same」もノリが良く聴こえるが、ボーカルメロディーは7/8拍子、8/8拍子と変わる。でもバックは6/8拍子。迷宮の始まりだ。続く「On Reflection」はクラシカルなメロディーのアカペラが次第に重なり、4声アカペラに発展する。さらにアカペラアンサンブルに楽器が絡む。続く Kerryのコブシを活かした中世音楽風のボーカルソロをはさんで、後半はロックアンサンブルによるカノン(同じようなメロディーが他楽器で次々と追いか けられながら演奏される)で終わる。聴いている人の頭のいろいろな部分を次々に刺激してくる快感。
アルバムタイトル曲の「Free Hand」はふられた男の歌。跳ねるようなリズムに惑わされてはいけない。せわしくキャッチーとは言いがたいメロディー、次々とチェンジするリズム、かと 思うと細かく紡がれていく音のアンサンブル、一瞬現れる叙情的メロディー。一つの世界に浸っているヒマを与えないめまぐるしい展開。
このようにGentle Giantの曲は、そのリズムや展開において非常に高度で、ある意味リスナーに対して挑戦的でありながら、どこかユーモラスだったり、ハッとするような美 しさが盛り込まれていたりと、単なるテクニカル集団ではない魅力がある。一聴すると表立ってテンションが高くは感じられない。しかし少しズレるとバラバラ になってしまいそうな静かに熱い緊張感に貫かれているのだ。
さらりと流される部分に複雑さや高度さが潜んでいる快感。音自体に情念がこ もったりしていないため、一つのプレイが大きな感動を呼ぶというわけではないけれど、端正な音のつづれ織りが作り出す深い世界にじわじわと浸る喜びがたま らない。ヨーロッパ、特にイタリアで非常に高く評価されたと言う。傑作。
ちなみにWikipediaによると、本作は
「Strongly influenced by the music of the Renaissance and Middle Ages, the album's songs reflected on lost love and damaged relationships (including the breakdown of the band's relationship with their former manager)」
「 ルネッサンス及び中世の音楽に強く影響されながら、アルバムの各曲は失恋とそのダメージを受けた人間関係(前のマネージャーとバンドとの関係の決裂を含む)を表している。」
とのことで、ある意味コンセプト・アルバムとも呼べるものとなっている。