■Starless and Bible Black (1974年)
King Crimson(キング・クリムゾン)
プログレッシヴ・ロックそのものと言えるイギリスのバンドKing Crimson(キング・クリムゾン)の音を最初に聞いたのは、確かFMラジオだった。今では「The Night Watch」(邦題は「ザ・ナイトウォッチ」)として公式に発売されている1973年のアムステルダムでのライヴだ。
1974年にBBCによってその一部が放送され、日本でもそのまま放送されたのを聴いたのだと思う。アナウンサーのような声が、曲名の紹介、メンバーの紹介を入れているのが、いかにもラジオ放送的だった。
そ の放送をエアチェック(カセットテープ録音)して、何回か聴くうちに、最初は良くわからなかったCrimsonの凄さがわかってきたのだ。Yesのように 明るくスリリングな世界もPink Floydのようにけだるい心地よさもない。なによりもその激しさ、臨界点を突破してしまうようなエネルギーにシビレタ。後日そのブート(海賊版)も例の 新宿の魔窟界隈で手に入れた。
だからCrimsonとの出会いはライブ音源なのである。そしてそのライブのうねるエネルギーとスタジオでのコントロールされた迫力が一枚に詰め込まれたのが本作「Starless and Bible Black」(邦題は「暗黒の世界」)なのである。
Robert Fripp:ギター、メロトロン
William Bruford:パーカッシヴズ
John Wetton:ベース、ボイス
David Cross:ヴァイオリン、ヴィオラ、キーボード
収録曲は8曲。このうち純粋なスタジオ録音は、最初の2曲のみ。冒頭の「Great Deciever(偉大なる詐欺師)」の爆発的な突進力には、スタジオならではの音の厚みとボーカル処理が効果を上げている。2曲目の「Lament(ラ メント)」もスタジオ録音だからこそヴァイオリンの音の良さが活かされている。そしてイントロ部分にのみライブを使っているという変則的な曲「The Night Watch(夜を支配する人々)」。でもこの組み合わせがなぜかとても美しい。現実から夢の世界へすぅっと入っていくような感じ。
残りの5曲は上記のアムステルダムライブの音源が使われている。LPでB面にあたる後半に、当時の強烈なインプロヴィゼーション「Starless and Bible Black(暗黒の世界)」と、究極のインストゥルメンタルナンバー「Fracture(突破口)」が入っている。音楽を聴いてこの領域にまで連れて行かれたのはKing CrimsonとMagmaぐらいだろうか。
今聴くとソロで弾きまくるRobert Frippの、独特な何か巨大なエネルギーを全力でコントロールしているような殺気すら感じられるギター、Billのこれでもかっていうほど個性的で自己主張の強いドラミング、David Crossのクラシカルでないところが返って魅力になっている叙情的なヴァイオリンと、各プレーヤーの個性と存在感の強さを改めて感じる。そしてあらためて John Wettonのベースがただ者ではないことに気づく。インプロヴィゼーションでもBillのドラムに対抗して曲をグイグイ引っ張っていくし。
ちなみに一般的にはこの前の作品「Lark's Tongues in Aspic」(邦題は「太陽と戦慄」)、あるいはこの後の作品「Red」(邦題は「レッド」)の方が評価が高いが、ライヴのエネルギーを取り込みながら、 様々な曲を聴かせてくれるこのアルバムこそが一番のお気に入り。いくら元ネタのライヴ「The Night Watch」が出ても、それとこのアルバムは違うのだ。
恐らく複雑な状況の中でメンバーそれぞれがいろいろな考えや思いを持っていたのだろうし、制作当時の切迫した状況下での評価と、完成したものへの冷静な評価はまた違ってくるだろうから、どちらが正しいとかいうことではない。でもいろいろな意味でギリギリの状況から生まれた奇跡的作品なのだと思う。
わたしにとっては永久に不滅な傑作です。生きる力の素です。
1974年にBBCによってその一部が放送され、日本でもそのまま放送されたのを聴いたのだと思う。アナウンサーのような声が、曲名の紹介、メンバーの紹介を入れているのが、いかにもラジオ放送的だった。
そ の放送をエアチェック(カセットテープ録音)して、何回か聴くうちに、最初は良くわからなかったCrimsonの凄さがわかってきたのだ。Yesのように 明るくスリリングな世界もPink Floydのようにけだるい心地よさもない。なによりもその激しさ、臨界点を突破してしまうようなエネルギーにシビレタ。後日そのブート(海賊版)も例の 新宿の魔窟界隈で手に入れた。
だからCrimsonとの出会いはライブ音源なのである。そしてそのライブのうねるエネルギーとスタジオでのコントロールされた迫力が一枚に詰め込まれたのが本作「Starless and Bible Black」(邦題は「暗黒の世界」)なのである。
Robert Fripp:ギター、メロトロン
William Bruford:パーカッシヴズ
John Wetton:ベース、ボイス
David Cross:ヴァイオリン、ヴィオラ、キーボード
収録曲は8曲。このうち純粋なスタジオ録音は、最初の2曲のみ。冒頭の「Great Deciever(偉大なる詐欺師)」の爆発的な突進力には、スタジオならではの音の厚みとボーカル処理が効果を上げている。2曲目の「Lament(ラ メント)」もスタジオ録音だからこそヴァイオリンの音の良さが活かされている。そしてイントロ部分にのみライブを使っているという変則的な曲「The Night Watch(夜を支配する人々)」。でもこの組み合わせがなぜかとても美しい。現実から夢の世界へすぅっと入っていくような感じ。
残りの5曲は上記のアムステルダムライブの音源が使われている。LPでB面にあたる後半に、当時の強烈なインプロヴィゼーション「Starless and Bible Black(暗黒の世界)」と、究極のインストゥルメンタルナンバー「Fracture(突破口)」が入っている。音楽を聴いてこの領域にまで連れて行かれたのはKing CrimsonとMagmaぐらいだろうか。
今聴くとソロで弾きまくるRobert Frippの、独特な何か巨大なエネルギーを全力でコントロールしているような殺気すら感じられるギター、Billのこれでもかっていうほど個性的で自己主張の強いドラミング、David Crossのクラシカルでないところが返って魅力になっている叙情的なヴァイオリンと、各プレーヤーの個性と存在感の強さを改めて感じる。そしてあらためて John Wettonのベースがただ者ではないことに気づく。インプロヴィゼーションでもBillのドラムに対抗して曲をグイグイ引っ張っていくし。
ちなみに一般的にはこの前の作品「Lark's Tongues in Aspic」(邦題は「太陽と戦慄」)、あるいはこの後の作品「Red」(邦題は「レッド」)の方が評価が高いが、ライヴのエネルギーを取り込みながら、 様々な曲を聴かせてくれるこのアルバムこそが一番のお気に入り。いくら元ネタのライヴ「The Night Watch」が出ても、それとこのアルバムは違うのだ。
2010年に株式会社ミュージックマガジンがレコードコレクターズ増刊として出した「プログレッシヴ・ ロック」の中で、このアルバムの解説にロバート・フリップの
「ライヴ会場をレコーディング・スタジオ として機能させたもの」
「僕らがセカンド・アルバム『暗黒の世界』に取り掛かろうとする頃、僕らは危機的なほどに素材不足状態だった。インプロヴィゼーションのライヴ演奏を採用せざるを得ず、できる限り歓声や関係のない聴衆のノイズを取り除き、スタジオトラックとして使った。‘ウイル・レット・ユー・ノー(隠し事)’、‘トリオ’、‘ザ・ミンサー(詭弁家)’はどれも絶望的な状態から生まれたものだ。レコード会社はライブ 音楽には低い印税額で支払いをするといううわさが流れていた - だからこれはごまかしだったのだ - しかし最低額にはならずに済んだわけだ。」
ということだったらしい。
わたしにとっては永久に不滅な傑作です。生きる力の素です。