2009年7月6日月曜日

「クック」

Cook(1975年)

PFM(Premiata Forneria Marconi)
(ピー・エフ・エム:
 プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)


Cook」(邦題は「クック」)イタリアのPFM(Premiata Forneria Marconi)の1974年のアメリカ公演を収録したライブ・アルバムである。本国での2ndアルバムを元に、1973年に英語版「Photos Of Ghosts(幻の映像)」を発表し、まさに日の出の勢いでアメリカ、カナダツアーが行われた時の熱い記録だ。

本国イタリアでは 「Live In USA」、イギリスとアメリカでは「Cook」のタイトルで、別ジャケットで1975年に発売された。日本で発売されたものは英米版ジャケットに準じてい る。

 Franz Di Cioccio:ドラムス、パーカッション、ボーカル
 Jan Patrick Djivas :ベース
 Franco Mussida:ギター
 Mauro Pagani:ヴァイオリン、フルート
 Flavio Premoli:キーボード、リードボーカル

このPFMの音楽を始めて聴いた時感じたのは、それまでのプログレッシブ・ロックとは違うタイプだということだった。ジャケットのイメージ戦略もあったろう けど、Yesは異次元の別世界に、Pink Floydは狂気をはらんだ幻想的な世界に、King Crimsonは暗黒のエネルギー渦巻く世界に、聴き手を引きずり込んでくれた。時にはバンド自体は背後に隠れ、その作り上げられた別世界に浸ることが喜びであった。

しかしPFMの第一印象は、そうした別世界へのいざないではなく、音楽性の圧倒的な豊かさ、美しさだった。最初の曲『Four Holes in the Ground』の5拍子の躍動感。非常にテクニカルな曲なのにノリのある演奏、明るいメロディー。Premoliの弾くシンセの音はRick Wakemanのようにポルタメントの効いた厚みのあるものとは違って、ハモンドオルガン以上に軽やかでクリアーな音なのも新鮮だった。

そして途中からの静かな パートに劇的に入ってくるメロトロン、そこに重なるPaganiのフルート。西洋音楽の歴史が持つ音楽の豊かさみたいなものを強く強く感じたのだ。

もちろんイタリア語の美しさ、Mussidaの弾く地中海を連想させるようなアコースティックギターソロ、『Celebration』で盛り上げた後、 『The World Became The World』のテーマに突入するカタルシス、最後の『Alta Loma Five Till Nine』におけるジャムセッション的展開から、ラストに『ウイリアムテル序曲』へなだれ込む曲構成の巧みさ、楽しさ。このアルバムの魅力は様々なところ に散りばめられている。

PFMの静的な部分、素朴な美しさに魅力を感じる人には、物足りないかもしれない。あるいは意外に感じるかもしれない。しかしこれは紛れもなくイタリアの明るさ、熱さであり、もちろんPFMの大きな魅力でもある。

「Cook」をPFMを代表するアルバムに挙げる人は多くないかもしれない。でもわたし自身、最初の出会いがFMラジオで流れていた「Cook」を耳にして、仰天して即手に入れたということもあって、PFMと言えばこのアルバムがまず頭に浮かぶ。

間違いなく傑作である。

ちなみにアルバムタイトルに関しては、ドラムスのFranz Di Cioccioが次のように語っている。

「それまでイタリアではライヴ・アルバムを発表したアーティストなんてひとりもいなかったんです。ましてはアメリカのライヴですからね。私達は当時のイタリアのマーケットではかなり目立つだろうと、また私達の国外での成功の紅しとして、アルバムのタイトルをシンプルに『ライヴ・イン・USA』としたんです。『クック』というタイトルを付けたのはマンティコア・U.S.A.の社長であったマリオ・メディ明日の提案でした。『クック』はスラングで『仕事をうまくやってのける』という意味で、彼は、P.F.M.は才能にあふれるミュージシャンで、音楽という料理を『クッキング・アップ(上手に作る)』してくれるだろうと思った、と語っていました。私達はそのアイディアをアルバム・タイトルにしたのです。」
「ArchAngel 5号」(DIW音楽出版、1996年)

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