2009年7月24日金曜日

「ライヴストック」

Livestock(1977年)

Brand X(ブランド・エックス)


Livestock」(邦題は「ライヴストック」)はイギリスのジャズ・ロックバンドBrand X(ブランド・エックス)の1977年発表の第3作。驚異のライブアルバムである。

1stアルバムから1曲、2ndアルバムから1曲、そして新曲3曲という構成は、既出アルバム時代の総括としてのライブというよりは、新作的な位置づけ。

Phil Collins:ドラムス
John Goodsall:ギター
Percy Jones:ベース
Robin Lumley:キーボード
Morris Pert:パーカッション
Kenwood Dennard:ドラムス

ドラムスが2人いるが、これは3カ所のライブ演奏から作られたアルバムであり、演奏場所によってKenwood Dennard(ケンウッド・デナード)が叩いている。具体的には5曲中1曲目と4曲目がKenwoodのプレイだ。

Brand XはPhil Collins(フィル・コリンズ)がGenesis(ジェネシス)と平行して活動していた別プロジェクトであったが、この時期GenesisはボーカルのPeter Gabriel(ピーター・ガブリエル)の脱退を受けて、Phil Collinsがボーカルとドラムスを兼任することになったこともあり、次第に多忙を極め本作で脱退する。

しかし後任のKenwoodも含めて、全員が超絶技巧プレーヤー。全曲インストゥルメンタルなジャズロックだが、キメの嵐とか超絶ソロ回しとか、早弾き大会とかにならないのが現在のテ クニカルバンドと違うところ。「この複雑な高速フレーズをユニゾンで弾いてるんだぁ!」って感じじゃなくて、「あれ、ここキーボードソロだと思ってたとこ ろ、ギターがユニゾンで被さってるじゃん!」みたいな。

そしてなにより暗い。音楽が暗いところでうごめいている。そこがまたプログレッシヴ・ロック心をくすぐるところでもある。そして音数が少ない。華麗さとは無縁。ところが音の隙間にもの凄い緊張感が宿る。

テクニック的にも一流であるが、それにも増して超個性的なクセのあるプレイも大きな特徴だ。特にフレットレス・ベースを操るPercy Jones(パーシー・ジョーンズ)のやわらかめなウネウネした音が妖しい。リズムをキープするというよりはリズムに絡み付くような感じ。もちろん高度なリズム感があればこそ可能なプレイだ。

そのウネウネ感にも通じるのが、ピッチベンドを屈指したムーグや軽やかなエレピで曲を引っ張る Robin Lumley(ロビン・ラムリー)のキーボード。乱暴に括ると、この二人が「硬軟」の「軟」だとすれば、強烈に弾きまくるギターのJohn Goodsall(ジョン・グッドソール)と、ロールを多用し音数が多くタイトでスリリングなプレイのPhil Collinsのドラミング、そしてよりストレートなKenwood Dennardのドラミングが「硬」と言えようか。

静かにフェイ ド・インしてくる最初の曲からして、すでに妖しい緊張感たっぷり。何だこれはと思えるほどに奇妙なフレージンクを聴かせてくれるベース。Morris Pert(モーリス・パート)のパーカッションが、グルーヴを作り出すというよりKing CrimsonのJamie Muir(ジェイミー・ミューア)っぽくノリと妖しさを増幅する。

2曲目が1stアルバム、5曲目が2ndアルバムからの曲だが、どちらもスタジオアルバムを越 える迫力。2曲目「-ish」のPhil Collinsのドラミングはいいなぁ。そして最後の「Malage Virgin」Kenwood Dennard」の全員一丸となったプレイも凄い。

形式的にジャズロックに入るであろうけれど、どこか別の世界に連れて行かれるような感覚は極めてプログレッシヴ・ロック的である。カンタベリー系の、どこか田園風景を思い起こさせるような音とも違う。独特な暗さと妖しさをはらんだノリの上を、超絶技巧プレイが疾走していく。

これもまたイギリスならではの音が詰まった名盤。傑作である。

ちなみにバンド名は、アルバム発売前のリハーサルでまだバンド名が決まっておらず、スタジオの記録簿にbrand x(某社の製品)と書いたことに由来するという。ちなみにbrand xには俗語としてマリファナという意味もある。

またアルバムタイトル「livestock」であるが、もともとはlive(生きている)+stock(在庫)から「家畜」を意味する。これに対して「deadstock」がdead(生きていない)+stock(在庫)で「農具」を示す。

ただ「deadstock」が「活かされていない在庫」という感じで「売れ残り・不良在庫」の意味も持つことから、そこからの発想で「優良な在庫」、つまり「貴重な/活き活きとした手持ちの品」、そして文字通り「ライヴの記録」という意味を持たせたものと考えられる。


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