2009年7月15日水曜日

「タイムロス」

Timeloss(2002年)

Paatos(パートス


Timeloss」(邦題は「タイムロス」)」はスウェーデンのバンドPaatos(パートス)が2002年に発表したデビューアルバム。全5曲、トータル40分にも満たないが、中味は充実の一枚。

いわゆるプログレッシヴ・ロック的な音を目指しているのとも違う。歌を大切にしているが、歌が曲の大部分を占めているわけではない。シンフォニックなインストパートやギターソロがあるわけでもない。しかし底知れない魅力がある。

 Petronella Nettermalm : ボーカル、チェロ
 Huxflux Nettermalm : ドラムス、コンガ
 John wallen : ピアノ、ハモンドオルガン、メロトロン、ハーモニウム、
       トライアングル、プログラミング
 Reine Fiske : ギター  
 Stefan Dimle : ベース、コントラバズ
<ゲスト>
 David Wilczewski:フルート、クラリネット
 Jonas Wall:サックス
 Per Kristensson:トロンボーン

アルバム最初の曲「Sensor」は、エレクトリックピアノの音が美しい、ラウンジ・ミュージックのような軽くノリのよい音から始まる。非常に心地良いそのサウンドに浸りそうになったとたん、突然ざらついたエレクトリックギターによるロックフォーマットに音が変化し、うねるベースと叩き付けるようなドラムスの上で女性ボーカルが歌い出す。すでに曲は疾走感あふれるロック。この自然な急展開が、聴く者の度肝を抜き、感覚を狂わせる。「これはいったいどんな音楽なんだ?」

Petronella嬢のボーカルはどこかしら哀愁を含んでいるが、この曲では叩き付けるような迫力がある。そしてボーカルとバックバンドという関係ではないことは、中間部からのメロトロンの雄大な響き、そして悲しみをたたえたギターの音から伝わってくる。このメロトロンとギターが、ゾクゾクするほど良い。

その後もジャズ的ハモンドソロが入り、曲はやや唐突に終わる。この破天荒な構成。聴くものの感情に与える起伏の落差が凄い。

ボーカル自体も魅力、そしてバンドの演奏もそれ自体が曲の大切な一部として非常に魅力。対等な関係なのだ。そのボーカルの陰鬱な悲しみをたたえた美しさが堪能できるのが次の 「Hypnotique」。バックで流れる哀愁のメロトロン、ダルな感じのエレクトリックギター、エコーのかかったフルートとピアノ。崩れそうに繊細な美しさ。胸が締め付けられるような盛り上がりを見せて曲は終わる。

3曲目「Tea」は唯一スウェーデン語の歌。神秘さに満ちた曲。ボーカルパートが曲の静の部分を、よく歌うベースと手数が多いが正確無比なドラムスが動のインストパート部分を担う。メロトロンも効果的に被さり神秘さにドラマチックさが加わっていく。4曲目「They are Beautiful」でも幽玄さは変わらない。消え入るようなボーカルがいいなぁ。うっすらとバックで流れるメロトロン。後半でのメロトロンフルート、クラリネットが印象的。


そして、「そうか、このバンドはこの哀愁漂うちょっとコケティッシュなボーカルと、幽玄さをたたえたインストゥルメンタルが綾なすサウンドが特徴なんだな」と思いかけたところで、再び別の面を叩き付けられる。

最後の曲「Quits」。のっけからタイトなドラミング。「どうやってわたしにこんなことができるっていうの?」「どうしてこんなことを私にしたの?」「一 人にしてちょうだい」という悲壮感漂う内容のボーカルパートが終わると、ドラミング(プログラミング?)のキレがさらに増し、ほとんどブレイクビーツ状態でリズムが走り始める。

そこにエレビ、唸るベース、様々なパーカッション、そしてクライマックスは突っ走る人力ドラムの上で、管楽器による混沌としたフリーな演奏が続き、突然終わる。何だこれは?約12分のうち後半8分はスリリングなインストパートが占める。

例えると「キング・クリムゾンの宮殿」のような、一聴するとバラバラの曲が集まっているようでいて、全体で統一感のある作品。まだまだある引き出しの、ごく一部を少しずつ見せられたような感じ。ファーストにして傑作。


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