2009/07/14

「自由の灯」

Farol Da Liberdade(1991年)

Sagrado Coracao Da Terra
(ザグラド・コラソン・ダ・テッラ)


Farol Da Liberdade」(邦題は「自由の灯」)はブラジルのシンフォニック・バンドSagrado Coracao Da Terra(ザグラド・コラソン・ダ・テッラ)が1991年に発表した3枚目のアルバムである。Marcus Viana(マルクス・ヴィアナ)のバイオリンを柱に、壮大な、そして明るく美しいシンフォニックロックを奏でるバンドである。作品ごとにメンバーが入れ替わるのでMarcus Vianaのプロジェクトグループと考えてもよいかもしれない。

手元のCDにはメンバークレジットがないので、詳しい参加メンバーや担当楽器は不明。しかし演奏テクニックはみな一級。男女ボーカルが入る曲もあるが、基本的に主役はVianaのバイオリンである。

まず最初の曲「Danca Das Fadas」の冒頭、バイオリン・ソロが温かみのある世界を描き出す。バイオリンの音が明るい。そして深みがある。この、エレクトリック・バイオリンでありながら、豊かな音、温かく包み込むような音がVianaのバイオリンの特徴であり、Sagrado Coracao Da Terraの作品の大きな魅力だと言ってよい。夢見るように美しいバイオリンである。

その後一転して始まるPFMのセレブレーション張りの、テクニカルなインス
トゥルメンタルパートが熱い!中盤から入るボーカル。男女とも、やわらかな声質で聴き易い。しかしここでも後ろでバイオリンが動き回る。この一曲でSagrado Coracao Da Terraの魅力炸裂である。

インストゥルメンタルパートも、バイオリン、フルート、アコースティックギター、エレキギターが軽やかに美しいアンサンブルを繰り広げていく。ボーカル曲でも、時に情感たっぷりに、時に雄大に、バイオリンが曲を盛り上げていく。表現力とテクニックに富むバイオリンを、他の楽器もしっかりサポートし、どの曲も 完成度が高い。

テクニカルな演奏のせめぎ合いや、ジャズロック的なアドリブなどはなく、丁寧に作られた楽曲が、高度なテクニックで明るくドラマチックに演奏される。

南米らしい情感豊かなメロディーと、イギリスやヨーロッパの一流バンドと比べても遜色のないテクニカルな演奏の心地よさに包まれて、幸せな気持ちになれる一枚。Vianaの華麗なバイオリンの音色だけでもぜひ体験して欲しい。傑作。