2009年7月23日木曜日

「秘なる海」

Enigmatic Ocean(1977年)

Jean-Luc Ponty(ジャン・リュック・ポンティ)


Enigmatic Ocean」(邦題は「秘なる海」)はフランス人のヴァイオリニストJean-Luc Ponty(ジャン・リュック・ポンティ)による1977年の作品である。

Jeanはクラシックの素養を持ちながらジャズ・ヴァイオリスととしてデビューし、1960年代はジャズ・ヴァイオリニストとして活躍。

1970年代、Frank Zappa(フランク・ザッパ)のバンドやJohn McLaughlin(ジョン・マクラフリン)のマハビシュヌ・オーケストラへの参加を経てソロ活動を開始し、エレクトリック・ヴァイオリンをメインに置いた独自のジャズ、ジャズロック、フュージョン関連のアルバムを出していく。その中でも充実した共演者もあって、最高のジャズ・ロックアルバムとなったのが本作。

 Jean-Luc Ponty:エレクトリック・ヴァイオリン、ヴァイオリン
         ヴィオレクトラ、ベル、ピアノ
<参加ミュージシャン>
 Allan Holdsworth:リード・エレクトリック・ギター  
 Daryl Stuermer:リード&リズム・エレクトリック・ギター  
 Ralphe Armstron:エレクトリック・ベース  
 Allan Zavod:オルガン、シンセサイザー、エレクトリック・ピアノ、
       グランド・ピアノ、クラヴィネット
 Steve Smith:ドラムス、パーカッション


ヴァイオリンはエレクトリック主体で、いわゆる生ヴァイオリンのキュッキュッというようなアコースティックさはない。むしろ逆に一聴するとキーボードに似ている音色。ただやはりヴァイリン的な柔らかさは残っており、ソロでの艶やかさもさることながら、硬派のDariyl Stuemer(ダリル・ステューマー)のテクニカルなギターや、Allan Holdsworth(アラン・ホールズワース)のタメの効いた独特なギターと対等に張り合うテクニカルなプレイは圧巻。

構築された曲と して、決められた基本メロディーとリズムの上で、ソロ回しをしたり、その延長でインタープレイがあったりという構成なので、曲としても分かり易く取っ付き易い。その分、インタープレイでの壮絶なテクニカル合戦が実にスリリング。リズム隊もタイトなが重く、ロック色が濃い。

組曲は2つあり旧LP時代A面最後の「Enigmatic Ocean」、そしてB面最後の「The Struggle Of The Turtle To The Sea」。それぞれ10分を越える曲だ。まず「Enigmatic Ocean」は、PART I の雄大なイントロに導かれてスタート、PART IIは非常にスピーディーな曲。リズム隊の安定した気持ちいいノリの上をヴァイオリン、ギター、キーボードが次々とソロを展開する。そしてここでAllan Holdsworthの粘っこいギターが初登場し、強烈な個性を披露する。

PART IIIはテンポを抑えて、各プレーヤーのソロプレイをじっくり聴かせる。まずAllanが弾きまくる。そしてJanのヴァイオリンが後を受け伸びやかなソロを展開。PART IVで曲は再びPART IIをリプライズ。

「Nostalgic Lady」はJanのメロディックなプレイを堪能できるゆっくりめの曲。ここでもAllanのスローなテンポに乗せた、滑らかな早弾きソロが聴ける。

1977年という、時期的にはプログレッシヴ・ロックは曲がり角に来ていて、パンク・ロック、ニューウェーヴへとロック界の興味が移り変わるところ。本作はそのプログレッシ ヴ・ロックの流れから出てきたものではなく、ジャズが70年代に入ってエレクトリック・ジャズへと広がりを見せ、やがてフュージョンへと変化していく過程で生み出されたものと言える。

したがって組曲形式などをとっていても、基本的に難解なところはなく、美しいメロディー、タイトなリズム、 テクニカルなソロ回しが基本である。アルバム最後の組曲「The Struggle Of The Turtle To The Sea」でも、わかりやすいメインテーマを軸に、Zavodのシンセソロ、Janのテクニカルなヴァイオリンソロ、Ralpheのファズの掛かったベースソロ、Darylのロック的なギターソロ、そしてAllanの硬質でなめらかなギターソロが次々と展開していく。ところどころで聴かれるユニゾンも光る。

全員十分なテクニックと歌心を持っているから、曲の出来のよさと相まってとても魅力的な内容になった。リードを取れるメンバーが多いが、バランス良くプレーヤーの良さが引き出されている。ただフロントでソロが始まると、他のメンバーはバックにまわってしまうので、複雑なインタープレイやヒネリやクセのある楽曲ではないところはプログレッシヴ・ロック的に見ると少し物足りないか。

でもやはりJanの正確で卓越したプレイと、Allanの独特なギターが持ち込んだ緊張感が、アルバム全体を引き締めている。ジャズロックの傑作。


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