2009/07/16

「終着の浜辺」


The Strands of the Future(1976年)

Pulsar(パルサー/ピュルサー)


The Strands of the Future」(邦題は「終着の浜辺」)はフランスのバンドPulsarが1976年に発表したサード・アルバムである。当時日本では“パルサー”と表記 されていたが、今は“ピュルサー”と呼ぶようになっている。メンバー的にはフルート、ソリーナ奏者がいることが特徴。

ちなみにソリーナとは正式には「Solina String Ensemble」と呼ばれ、それまでの磁気テープ再生方式のメロトロンに替わって、電子的に弦楽器の音を合成できるキーボードの元祖的存在。1974年に開発されたものなので、1976年発表の本作だからこそ
使用できた機材だと言える。

 Jacques ROMAN:オルガン、ムーグ、シンセサイザー、メロトロン、
          ベース

 Victor BOSCH:ドラムス、パーカッション
 Gilbert GANDIL:ギター、ボーカル
 Roland RICHARD:フルート、ソリーナ

アルバム収録曲は全4曲。LPレコード時代はA面に22分に渡るアルバムタイトル曲、B面に3つの小曲という構成。大曲指向のアルバムであることがわかる。

そしてなんと言ってもメインとなる大作「The Strands of the Future」が良い。イントロの雄大な風景を思わせるキーボードの波からPulsarの世界が押し寄せてくる。この遠くから響いてくるような独特の音。 そこから醸し出される、異空間に取り残されたような孤独な風景。フランスのバンド独特のくぐもった薄暗さを強烈に発散つつ、この不思議な奥行きと広がりを 持つ美しい音世界を描き出しているところが、Pulsarの最大の個性であり魅力である。

曲はその後、様々な表情を見せながら22分をドラマティックに聴かせる。くぐもったギター、うずまくようなシンセサイザー、タイトだがテクニカルではなく軽めな音のドラム、つぶやくようなフランス語のボーカル。世界の果てから届けられた音のようだ。曲の緩急も上手く、アコースティックギターやフルートも効果的に使われている。曲はフルートによる、最後にたどり着いた楽園のようなイメージで終わる。

小曲3曲はインストゥルメンタルと英語による歌もの。どれもコンパクトにまとまっていて、メランコリックなメロディーが印象的な、大曲とは別の魅力を持った佳曲。

Pulsarの作品としては次作「Halloween」の評価が高いが、「The Strands of the Future」は、次作以上にフランスらしさがにじみ出て、他に類を見ない独特なスペイシー・シンフォニックな響きを持つ傑作。


ちなみに国内版LP発売時には、解説裏に「銀河鉄道999」などで有名な松本零士氏の巨大なイメージイラスト(上図)が描かれていた。印象的ではあったけど、やはりアルバムジャケットの、ちょっとグロテスクな、描き込まれたイメージの方が強烈だったなぁ。