2009年7月19日日曜日

「スター・キャッスル」

STARCASTLE(1976年)

Starcastle(スター・キャッスル)


STARCASTLE」はアメリカのバンドStarcastle(スター・キャッスル)のバンド名を冠したデビューアルバムである。発表は1976年。イギリスのプログレッシヴ・ロックバンドが大作を出し、ロックの可能性を広げる大きな役割を果たし終え、次の展開を模索し始めた時期にあたる。

同時にアメリカに限らず、イギリスの大物バンドの影響を大なり小なり受けたバンドが、ヨーロッパなどから出現した。アメリカではKansasが「永遠の序曲(Leftoverture)」を発表した年である。

そしてこのStarcastleも、Yesの影響が非情に顕著に見受けられる。時に“イエス・クローン”とまで言われたりして、そのサウンドに“物まね”的 な冷たい評価がされることがある。確かに、唸るベース、バランス良く入ってくるギターやキーボード、そして何よりYesのJon Andersonを彷彿とさせる高音のボーカルとボーカルハーモニー。似ている。

しかし、その“似ている”からダメというのは間違いだ。似せようとか真似しようとかいうズルい作風ではない。好きだから似てしまう部分が出てしまった、そんな感じなのだ。第一、Yesほど強烈な個性とテクニックのあるバンドを真似ることなどできるはずがない。

Starcastleのこのアルバムは、美しい高音でのハーモニーとハードで複雑な曲構成をうまくミックスした点で、Yesを手本にしているとは言えるかもしれない。しかしこのアルバムならではの個性や魅力がしっかりと詰まっているのだ。

 Terry Luttrell:リード・ボーカル
 Gary Strater:ベースギター、ベースペダル、ボーカル
 Stephen Tassler:ドラムス、パーカッション、ボーカル
 Herb Schildt:オルガン、シンセサイザー、ピアノ
 Matthew Stewart:ギター、ボーカル
 Stephen Hagler:ギター、ボーカル

アルバムはスペーシーなギターとキーボードのイントロから始まる。すでにベースがYesのChris Squireしているが、リズムをしっかりキープしながら実に良く動く。そしてボーカルハーモニー。Yesのボーカルハーモニーって実は結構個性的なハー モニーだ。声質が違う3人がハモるとすぐわかる。Starcastleの場合は、もっと柔らかく甘い、きちんとブレンドされた感じのハーモニーだ。

ギターも比較的クリーンな音色を使っていて、サウンドを重くしない。しかしテクニカルで魅力的なソロを所々にさりげなく入れてくる。表立って弾きまくりはしないけれど、このバンドの魅力の一つである。

キー ボードはどちらかというとサポートに徹している。ソロを取ることもあるが無難な感じ。むしろ曲全体の浮遊感や、宇宙的な広がりのイメージ作りに使われてい ると言ったところか。ツインギターなので、キーボードが鳴らなくてもリズムギターが後ろで厚みを作っており、それだけで十分な安定感がある。

もちろんテクニック的には標準以上。しかしテクニックで聴かせるというよりは、やはりアンサンブルで聴かせるバンドだ。良く聴くと、曲の展開、楽器の組み合わせ、ボーカルの活かし方など、非情に細かな工夫を盛り込んだサウンド作りがされている。そして全体のイメージがアルバムジャケットのように明るく、どこか爽やかな感じが特徴なのだ。

そしてそのアンサンブルのカギを握っているのがドラムである。2ndアルバムではロック的になって魅力を失ってしまったが、このファーストではジャズ的な細かなロールを入れながら、タイトで魅力的なドラミングを聴かせる。このドラムが全体を引き締め、サウンドが甘すぎないように常に良い意味での緊張感を与えてい る。

Yesは誰もが強烈なフロントマンになれる集団だったが、Starcastleは逆に強烈なフロントマンが不在のバンドだった。そこがKansasのようなビッグヒットにつながらなかった理由かもしれない。

しかし、アメリカ的な曲調の明るさ、軽快さ、ノリの良さ、美しいハーモニー、そしてイギリスのバンドに学んだような多彩なリズムチェンジ、複雑で展開の多い曲構成、そしてハードロックの要素。単なる“Yesフォロワー”で終わらせるにはとてももったいない、聴きどころの詰まった作品である。傑作と言っておこう。


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