2009年7月11日土曜日

「ワン・サイズ・フィッツ・オール」

One Size Fits All (1875年)

Frank Zappa(フランク・ザッパ)


One Size Fits All」(邦題は「ワン・サイズ・フィッツ・オール」) は、アメリカ・ロック界の巨人Frank Zappa(フランク・ザッパ)の1975年の作品である。いやロックだけではない。ポップス、ジャズ、クラシック、現代音楽まで、あらゆるジャンルの音 楽を貪欲に取り込み、ジャンル分け不能な独自の音楽を作り続けたミュージシャンだ。

歌詞の内容や風貌、パフォーマンスから、どうも「お下劣」、「難解」、「変態」、「アヴァンギャルド」と敬遠されてしまいがちなのだが、そういった曲を、超一流ミュージシャンによる超絶アンサンブルで聴かせ るというところが、実に面白いのだ。好き嫌い、受け入れられるられないはあるにしても。

発表したアルバムの数も60種近いと言われ、中々 全体像がつかみきれないほどだが、その中でも、人気、完成度ともに常に上位に挙げられるのがこのアルバム。タイトルの意味は、日本で言う「フリー・サイ ズ」のこと。しかし日本での発売当時は「万物同サイズの法則」という邦題がつけられていた。

正確にはFrank Zappa and The Mothers of Inventionという名義での、バンド形式のアルバムである。すでにThe Mothers of Inventiontとして1966年に「Freak Out(フリーク・アウト)」でデビューし、前衛的なロック集団として注目を集め、1969年にソロ名義で出したジャズ・ロック・インスト中心の「Hot Rats」で、「クリムゾン・キングの宮殿」を抜いて全英チャート1位を獲得している。

この「One Size Fits All」では、一聴するとポップな感覚があふれているように聴こえるが、うねるグルーヴの上で、非常に高度な演奏が繰り広げられている。聴きこむほどに、その凄さがわかってくるアルバム。Zappaのギターもいい。

 Frank Zappa:ギター、リード・ボーカル
 George Duke:キーボード、シンセサイザー、リード・ボーカル
 Napoleon Murphy Brock:フルート、テナーサックス、リードボーカル
 Chester Thompson:ドラムス
 Tom Fowler:ベース
 Ruth Underwood:ヴィブラフォン、マリンバ、パーカッション
<ゲスト>
 James "Bird Legs" Youman:ベース
 Johnny "Guitar" Watson:ボーカル
 Bloodshot Rollin'red:ハーモニカ

ちなみに自身がドラマーであるPhil Collins(フィル・コリンズ)が、彼らのライヴアルバム「Roxy & Elsewhere」(1974)におけるChester Thompson(チェスター・トンプソン)のプレイを聴いて、その凄さに圧倒され、Genesisのツアー・メンバーに招くことを決めたと言われている。ここではGenesisのドラマティックなプレイとは違って、タイトながらグルーヴ感あふれるキレのいいドラミングを聴かせてくれる。

最初の「Inca Roads」からもうZappaワールド全開である。イントロからスキのないリズム。ポップでソフトなボーカルとノリのいいリズムに安心していると突然のブレイク、突然のリズムチェンジ。それでも曲のテンションは下がらず、ユニゾンも揺るがない。

特に大活躍するRuth Underwood(ラス・アンダーウッド)のヴィブラフォン、マリンバがゾクゾクするほどカッコいいのだ。この女性の正確無比な高速プレイが、 Zappaの超絶インスト集団の核をなしている。もちろんインストパートでのGeorge Duke(ジョージ・デューク)キーボードソロも鳥肌もの。

この曲は実はベーシック・トラックがロスのTVライヴで、ギター・ソロだけはフィンランド、ヘルシンキのライヴだという、King Crimsonの「Starless and Bible Black(暗黒の世界)」もビックリな、驚異的なライヴ音源の編集によって作られているのだ。言われないと絶対わからない。

しかしそん なことは知らなくてもいいのだ。俗っぽい歌い方、かと思うと力強いハーモニー、ラフなメロディーが流れたと思ったら高速ユニゾン、それでいて途切れないグ ルーヴ。雑なようでいて実は非常に計算された恐ろしく高度なことを、次々と繰り出してくるスリル。聞き所満載。「Andy」の複雑な構成も凄まじい密度。

イギリス、ヨーロッパを中心に、クラシック、ジャズ、民族音楽、電子音楽、実験音楽、フォーク&トラッドなど、実に様々なジャンルをどん欲に吸収し、多様なサウンドを作り出したのが今で言う“プログレッシヴ・ロック”であった。

その基本をブラック・ミュージックから発展したリズム&ブルースやロックンロールに対抗した、ヨーロッパ的な新しい音楽を目指していたとするなら、Zappaミュージックは、その垣根さえも作らず、独自の音楽を追求していった究極のミクスチャー音楽だと言えるだろう。

ミクスチャー度が高いという点では、完成度や評価は高くても、アルバムによって内容的にはかなり違うことをやっている。前述の「Hot Rats」はジャズ・ロックだし、歌ものが多いポップな作品もあれば、Zappaのギターを全面に出したアルバム、オーケストラによる作品、それにシンクラヴィア(音楽制作用のコンピュータシステム)だけで作った作品なんていうのもある。

Zappa本人は“プログレッシヴ・ロック”への意識や関心はこれっぽっちも持っていないだろう。しかしChester Thompsonだけでなく、Teryy Bozzio、Adrian Brew、Eddie Jobson、Jean-Luc Pontyなど、人脈的にはプログレッシヴ・ロック・フィールドにつながる人達も多い。

恐らく色々なアルバムが、聴く人の趣向に応じて“プロ グレッシヴ・ロック”になりうるのではないかと思う。そんな中で本アルバムは、シンフォニックでもファンタジックでもインプロヴァイズドな作品でもないけ れど、ポップさと高度な演奏のバランスが絶妙な、間違いなく“プログレッシヴ”な傑作アルバムである。


0 件のコメント:

コメントを投稿