2009年7月29日水曜日

「コンチェルト・グロッソ」

Concert Grosso Per I(1971年)

New Trolls
(ニュー・トロルス)


コンチェルト・グロッソ」はイタリアのNew Trolls(ニュー・トロルス)が1971年に発表したイタリアン・ロックの名作と言われる3rdアルバム。

旧 LPA面に並べられた4曲からなるアルバムタイトル曲は、基本的に「La Vittima Dementi」という映画のサウンドトラックとして作られており、作曲とオーケストラアレンジは映画音楽作家Luis Enriquesz Bacalov(ルイス・エンリケ・バカロフ)によるもの。

オーケストラとロックの融合を目指すという、当時の流行であった試みに挑戦したものであるとともに、コンセプト及び作曲をメンバー以外の者が行なった曲とメンバーの曲が一枚のアルバムに“融合”されている点でも特異な作品と言える。

 Nico Di Palo:ギター、リードボーカル
 Gianni Belleno:ドラムス、ボーカル
 Giorgio D'Adamo:ベース
 Vittorio De Scalzi:ギター

オーケストラ(15本あまりのバイオリンと2本のチェロ)による端正なバロック的な音楽に、ワイルドなロックアンサンブルが絡んでいくという、ある意味王道な 作りであり、両者が複雑かつ緻密に絡み合うという構成ではないため、今となってはそれ自体に大きな新鮮さはないと言える。

ところが、では古くささや陳腐な印象を受けるかというと、これが全くそんなことがないのだ。むしろ一つの奇跡のような究極の美しさに満ちている。特に最初の3曲の美しさは比類無きもの。この叙情美は、数あるイタリアンロックの中でも最高ランクだろう。

まずメロディーとアレンジがいい。難しいことは特にしていない。1曲目の「Allegro」。導入部のコンダクターの開始の合図がいい味を出している。そして始まる躍動感あふれるヴァイオリンに導かれた弦楽器とバンドのロックアンサンブルのよどみ無い流れ。ロック的なフルートもうまく溶け込んでいる。

2曲目「Adagio (Shadows)」では、チェンバロが鳴り、ソロヴァイオリンのメロディーをエレキギターが追いかける。そして弦楽オーケストラがドラマティックに鳴り響く中、エレキギターのソロが入る。これが違和感なくごく自然に行われる。

そしてNew Trollsのボーカルがまたいいのだ。美しいメロディーを甘い声と厚みのあるハーモニーで歌い上げる。オーケストラをバックに歌うボーカルも良いが、特にオーケストラが入らない4曲目のボーカルハーモニーが素晴らしい。

そしてオーケストラのレベルが高い。特に印象的な3曲目「Cadenza(カデンツァ)」の前半部分で演奏されるヴァイオリン・ソロの素晴らしさ。ロックサイドの重いリズムや濃いエレキギターに拮抗するような力強さと安定感、そして溢れ出る叙情。

もちろんこの前半3曲だけでもこのアルバムは歴史に残る名盤足り得たと思う。しかしオーケストラを配した4曲目をブリッジにして、旧LPB面すべてを使った 「Nella Sala Vuota(空間の中から)」という、New Trollsというバンドのみによる20分に渡る荒々しいインプロヴィゼーションが、アルバム全体の幅を広げ、作品としての深みを増すことに成功していると言える。ボーカルの素晴らしさが全体を一つにまとめ上げている。

こうして今このアルバムを聴き返して見ると、サカキマンゴー氏が「親指ピアノ道場!」で述べていた「オーケストレーション重視の澄み切った音に対する反抗」としての「サワリ音」豊かなロックサウンドが、再びオーケストラの澄み切ったサウンドを迎え、それぞれの魅力を持ち寄ることで、さらに音楽の幅を広げようとする試みだったのかという気がする。

しかし試みとして当時新鮮だったことからくる緊張感、互いの自己主張の強さが、今でも大きな魅力としてこのアルバムの価値を失わせていない。

まさに傑作中の傑作。

ちなみに「New Trolls」とは「新しいトロルたち」という意味。「troll(トロル)」とは北欧伝説に出てくる、洞穴や地下に住む巨人、あるいはいたずら好きな小人を指す。アニメや原作童話が有名なムーミンは正式にはMoomintroll(ムーミントロール)と言う。北欧はフィンランドの作品に出てくるムーミンもtrollなのだ。一般的なtrollのイメージとは違うけれど。


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