2009年7月9日木曜日

「シンフォニック・ホロコースト」

Symphonic Holocaust1988年

Symphonic Holocaust(モルト・マカブレ)


Symphonic Holocaust」(邦題は「シンフォニック・ホロコースト」)は1988年に発表されたMorte Macabre(モルト・マカブレ)唯一のアルバムである。1960年代〜1970年代のホラー映画のサントラへをカバーしたもので、8曲中2曲のみオリジナル曲となっている。スキャットを除いて全曲インストゥルメンタルだ。

メンバーはスウェーデンのAnekdotenとLandbergから、それぞれ2名ずつが参加した混成バンド。バンドというよりはプロジェクト・グループか。しかし両グループの特徴を活かしながら、1つのバンドとしてのまとまりを持った演奏を行っている。また様々なホラー映画の曲を集めながら、オリジナル曲も含めて、バンド演奏というスタンスで編曲、作曲されているので、アルバム全体に統一感を持たせることに成功している。

そしてクレジットでのこだわりからもわかるように、何と言ってもこのアルバムの最大の特徴は、大活躍するメロトロンだ。

 Nicklas Berg (Anekdoten):メロトロン、ピアノ、テルミン、
             サンプラー、ギター、ベース
 Peter Nordings (Anekdoten):メロトロン、ドラムス、パーカッション
 Reine Fiske (Landberk):メロトロン、ギター、バイオリン、ピアノ
 Stefan Dimle (Landberk):メロトロン、ベース、ムーグシンセサイザー

メロトロンはサンプリングされたテープ音源を再生する仕組みの鍵盤楽器である。テープには「ストリングス」だけでなく「ブラス」、「フルート」、「バイオリン」、「コーラス」、果ては「ドアのきしみ」といった自然音など、多種多様な音色テープがある。

最初の曲である「Apoteosi del mistero」(映画「City of the Living Dead」より)から、もうメロトロン全開だ。ドラムのスネアのリズムの乗せて男性と女性の声がメロトロンで流れて来る。続いて深みのあるメロトロンストリングスが激しいリズムの上でメロディーを奏でる。つまりリズム隊以外はメロトロンの音で作られていると言ってもいい。

それでは単調にならないのか?いやいや、音色を うまく使い分け、音に厚みを加え、動と静の切り替えを巧みに行っているため、メロトロンならではの幽玄さ不安定さが、曲の妖しい美しさを見事に引き出している。とともに、ロック的なダイナミズムをしっかり残していて心地よい。


「Sequenza ritmica etema」(映画「The Beyond」より)では、荒々しいリズムに乗って中低音での迫力あるメロトロンがテーマを奏でる。「Lullaby」(映画「Rosemary's Baby」より)では、女性スキャットとメロトロンがユニゾンで悲しいメロディーを奏でていく。

メンバーそれぞれがテクニシャンであるため、メロトロンを使わないパートも十分に妖しい世界を聞かせてくれる。そうしたテクニックとアイデアがある中で、メロトロンを最大限に活かそうとしているのだ。メロトロンに頼っていない。メンバーは皆メロトロンが好きなんだろうなと思う。まさにツボを得た使い方なのだ。


そして最後のオリジナル曲 「Symphonic Holocaust」。18分近いこの曲は、それまでのダークな雰囲気を壊すことなく静かなメロトロンのリズムで始まり、次第に演奏に熱がこもり始め、最後はメロトロンが鳴り響く中、全員一丸となってラストに向かって突進する大作。

このオリジナルの長尺曲が、それまでの映画音楽を凌駕する迫力を持ってラス トを飾ることで、アルバムを映画音楽トリビュートというより、Morte Macabre自身のモノにしてしまっている。ちなみにMorte Macabreとはフランス語で「背筋が凍るほどの大災害」の意。「Symphonic Halocaust(交響楽的大惨事)」と相通ずるバンド名である。


これほどメロトロンの響きにこだわり、メロトロンを全面に出し、その魅力をアルバム全体に渡って引き出したアルバムは他にはないだろう。それでもメロトロンという特異な楽器の魔力の一部であって全てではないことも承知の上で、超ド級メロトロン傑作アルバムと言いたい。

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