2009年7月14日火曜日

「Libera」

Libera(2000年)

Libera(リベラ)


Libera」(邦題は「リベラ」)はLibera(リベラ)が2000年に発売した衝撃のファーストアルバム。作曲家ロバート・ブライズマンと彼が指揮する聖歌隊出身の少年たちによるイギリスのプロジェクト・グループ。

サウス・ロンドン教会の聖歌隊からからの選抜メンバーで構成されたセント・フィリップス少年合唱団が発展し、「Angel Voices」シリーズとしてCDを3枚出した後に、ボーイズ・クワイア・グループLiberaとして、同名のアルバムでデビューする。

様々な映画やドラマで取り上げられていることもあって、知名度は結構あるんじゃないかと思う。日本公演もしてるしね。知らなくてもこの声を聴いてしまうと思 わず聴き入ってしまう。そしてどんな音楽をやっている人たちなんだろうと思ってしまう。そうした特定のジャンルに収まらない魅力が一番詰まっていたのが、 このファーストだろうと思うのだ。

聖歌隊とも少年合唱団とも異なるこのプロジェクト・グループは、かなりの冒険だったのではないか。誤解を恐れずに言うなら、エニグマがグレゴリアン・チャン トをハウス・サウンドに載せて不思議な世界の扉を開いたように、ボーイズクワイアをハウス風なアレンジに乗せてみるという、ある意味企画物としてスタート したのかもしれない。少年たちも、当初はいわゆる聖歌隊風なイメージとは一線を画していた。

しかしアイデア先行でもなく、エニグマやディープ・フォーレスなどの二番煎じでもないのは、まず少年たちの声が既存の音や別ジャンルの音のサンプリングではなく、無類の美しさとやわらかさ、そして高度なボイスコントロールの技術が素晴らしい、実際のボーカルであったこと。そしてその魅力をうまく引き出すオリ ジナル曲、クラシック曲のオリジナルアレンジが秀逸だったこと。そして最後にハウス・サウンドとのブレンド具体が絶妙だったこと。この3つが揃ったからこそ誕生した新しいサウンドだった。

しかし世間的にはやはり彼らの声の美しさに一番大きく反応したのだろう。したがってハウス風デジタルサウンドは次第に控えめになっていき、親しみ易い少年合唱団へシフトしていく。

恐らくクラシカルな方面からの反響が大きかったのだろう。そしてまた、普段少年合唱団の「クラシック曲」に抵抗を感じていた人が、美しいボーイソプラノによる聴き易い曲、メロディーに飛びついたんだと思う。

それはそれで、彼らの大きな魅力であるし、柔らかなのにきちっと高音でも揺れることのないソプラノボイスが持つ力は素晴らしいと思う。だからその世界をターゲットにシフトしても作品の完成度は変わらないし、彼らのユニークさも十分残っていると思うのだ。

しかし、個人的には、最初に持っていた雑多な可能性が、ある意味狭められてしまった気がするのだ。美しさだけでなく、デジタルなリズムの上で繰り広げられる エンジェル・ヴォイスという、異質なものがぶつかる面白さ。もちろんデジタルにこだわっているわけではなく、声だけで勝負する曲もある。大切なのは完成した 音楽のオリジナリティである。それこそ本来の意味で“プログレッシヴ”であった。

非常に美しい高音が印象的なコーラス。どこか別の世界から聴こえてくるような不思議な感覚の歌声。それを演出するドラマティックなアレンジと各種デジタル機材。ところどころに入るゆったりしたデジタルなリズムの心地良さ。

できることなら、もっとこの世界を掘り下げて欲しかったと思う。たぶん現在のような一般受けは望めなかっただろうけど。そういう意味ではその後のアルバムとは異質な魅力を持った一枚。他にはない音楽。極私的プログレ・アルバムの傑作。

ちなみに写真左上は2001年のセカンド「ルミノーサ~聖なる光」のジャケット内写真。写真右下は2008年発売の最新アルバム「新しい夜明け」のジャケット写真。Libraに求められるイメージの変化がうかがえる。


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